水道水をまずいと感じる原因は?
水道水を「まずい」と感じる原因には、何があるのでしょうか。
(出典:木津川市ホームページ)
まず、上の図を例にして水道水の仕組みを簡単に説明するので、そこから原因を探りましょう。
各地域の浄水場で、河川やダムの水をろ過し消毒処理をします。そしてその水が配水管を通り、各家庭に供給されます。
マンションなどの大型集合住宅では、敷地内の貯水槽に水道水を貯めて、各戸に供給する方式が一般的です。
水道水の仕組みがわかったところで、水道水をまずいと感じる主な原因を5つ挙げてみます。
残留塩素
浄水場の最終工程では、塩素で水を消毒します。
このとき水道水に残った塩素は「カルキ臭」という独特のにおいのもとになります。
衛生上、蛇口から出てくる水道水には雑菌が繁殖しないようにするために1リットルあたり0.1mg以上の塩素が入っていなければならないとされています。
さらに、水道水の塩素は時間の経過により効果が薄れるため、消毒効果を持続させるには、蛇口からの残留塩素の濃度を一定以上を保つよう適正に管理しなければなりません。
とくに雑菌の繁殖能力が高い夏は、残留塩素の管理にさらなる注意を払っています。
(出典:三重県企業庁 5.知っておくと便利な水道まめ知識(解説編))
有機物質
有機物質とは、炭素を含む化合物を指します。
有機物質が水に含まれている場合、殺菌のために過マンガン酸カリウムを使用します。
臭気度
水のおいしさは、においによっても左右されます。
ヒトの嗅覚は味覚に比べると鋭いと言われており、少しのにおいでも違和感やまずさを感じてしまう可能性があります。
特に水道水のカビ臭は、プランクトンの異常繁殖が原因といわれます。
(出典:滋賀県企業庁 様々な取り組み)
水温
飲みやすい水の温度は冷たすぎない10~15℃だと言われています。暑い季節は水道水の水温が15℃以上になるので、飲みづらいと感じる方もいるのではないでしょうか。
貯水槽の管理
マンションなどの大規模な集合住宅では、貯水槽水道が利用されています。
これは水道水を敷地内に引き込み、ポンプ等で建物屋上の貯水槽に送り、各戸に供給する方法です。
水道局の水質保証は貯水槽に入るまでなので、そこから先は施設管理者の責任になります。
水道管と違い、水槽は密閉性が高くなく常に外気にさらされているため、定期的な清掃など水槽の衛生管理がしっかりされていないと、水質に変化が現れます。
最近の水道水、本当にまずい?
水道水は実はおいしくなっている
最近の水道水は、水質改善によっておいしくなってきているという噂があります。それは本当なのでしょうか?
「水道水がまずい」というイメージを持たれがちな大都会東京の水道水を例に見てみましょう。
東京都では国が定めた基準以上の厳しい目標値を設定し、水道水の水質向上を目指しています。
例えばカルキ臭については、国が定めた残留塩素の基準値は0.1~1.0mg/Lなのに対し、東京都水道局はさらに厳しい0.1~0.4mg/Lを達成目標に設定、ほかにも水道水のにおいや味、見た目の水質でも国の基準を大きく上回る成果をあげています。
(出典:東京都水道局)
また、東京都水道局はペットボトルに詰めた水道水を「東京水」として販売するほど、水道水のおいしさに自信を持っています。
江戸切子のパッケージデザインが印象的な「東京水」は、都庁内の売店のほか、東京駅などでも販売されています。
それでも味や臭いが気になる人の理由
最近の水道水は水質改善によりおいしくなってきているとはいえ、どうしても「水道水はちょっと…」と敬遠する人が存在します。
それはなぜなのでしょうか。
水道水を敬遠する理由
- 水のきれいな地域から引っ越した
- ペットボトルやウォーターサーバーの水を常飲している
- マンションの貯水槽管理に不安を感じる
- 小さいお子さんがいる
水道水を敬遠する理由として、
「もともとおいしい水を飲んでいたから」、
「水の安全性が気になる」という2つがあります。
それには水道水の味やにおいが気になるというケースも含まれるでしょう。
そんな場合、簡単な対処を行うことで、水道水をおいしく飲めるようになります。
次の項目で方法をいくつか紹介しますので、気になっている方はぜひチェックしてみてください。
おいしい水を飲むためにできることは?
家庭でできる水道水をおいしく飲む方法
それでは、水道水をちょっとおいしくする方法を見ていきましょう。家庭で手軽にできる方法ばかりなので、ぜひ試してみてください。
水道水をおいしくする方法
- 20℃以下に冷やす
- 一度沸騰させて冷やす
- 一晩汲み置きして冷やす
- レモン汁を数滴落とす
水道水の味やにおいを抑え、おいしくする方法は主に4つあります。
1. 定番の方法です。一般的に水を最もおいしく感じるのは、体温より20~25℃低いときだといわれます。
さらに冷たいと塩素のカルキ臭も気になりにくくなるので、冷蔵庫で10~15℃に冷やして飲むといいでしょう。
冷やしすぎると胃腸に負担がかかるので、心地よく冷たさを感じる5℃程度までにおさえておくとよいでしょう。
2と3は、ひと手間かけることで、よりカルキ臭を抑える方法です。
水道水を一定時間沸騰させ冷やしたり、汲み置きして時間をかけて残留塩素を蒸発させたりします。
4. レモンに含まれるビタミンCによって塩素臭を緩和します。酸味が気になる場合は、1~3の方法をおすすめします。
ただし、このような方法を取る場合の注意点があります。
水道水の塩素は殺菌のためにどうしても必要なもので、残留塩素の分解は衛生上のリスクがあるため、残留塩素を取り除いた後は安全性を考えてなるべく早く飲み切るようにしましょう。
三大都市と富士山近くの水質調査結果を比較
最後に、水道水の品質は実際どうなっているのか、データで紹介しましょう。
サンプルとして、日本を代表する都市の東京と大阪、名古屋の水道水と、天然水系のウォーターサーバーが取水地としていることが多い富士吉田市の水道水を取り上げ、比較してみます。
項目 (単位) |
国の基準 | 富士吉田市 | 東京都 新宿区 |
大阪市 | 名古屋市 |
---|---|---|---|---|---|
残留塩素 (mg/L) |
1.0以下 0.1以上 | 0.10 | 0.40 | 0.55 | 0.47 |
有機物質 (mg/L) |
3以下 | 0.30以下 | 0.60 | 0.70 | 0.40 |
臭気 | 異常でないこと | 異常なし | 異常なし | 塩素臭 | 異常なし |
水がまずいと思われがちな大都市の水道水でも、国の水質基準よりはるかに良好な数値が出ています。
ただし、おいしい水を産出する地域と比べると大きな差があり、まだまだ改善できる余地があるともいえます。