プロフィール
開発途上国の経済を研究している経済学部の西浦ゼミ。
そのなかの学生で結成されたのが「チームPLASS」で、アフリカやアジアの貧困問題などについて考える過程で、SDGsなど社会問題への意識を高めたことが、環境問題への活動につながっている。
SDGs(エスディージーズ)とは
「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS」の略。持続可能な開発目標のことで、2015年の国連サミットで採択された。
「安全な水とトイレを世界中に」「海の豊かさを守ろう」など17の目標を掲げている。
詳しくは 外務省のSDGsに関するページなどでチェックしてみてください。
構内にマイボトル用ウォーターサーバーを試験導入
2020年10月16日に開催された創価大学SDGs推進センター主催のオンラインセミナーにて、チームPLASSの学生らが「脱ペットボトルに向けたマイボトル用ウォータースタンド学内テスト設置」の事例紹介を発表。
先日のオンラインセミナーに、私たちミズコム編集部からも3名参加させていただきました。
そこで発表されていたマイボトル用ウォーターサーバーの導入について詳しくお伺いしたいです。
まず、この取り組みを行った背景をお教えいただけますでしょうか?
チームPLASSのメンバーが、それぞれ留学をした経験からプラスチックゴミ問題や環境問題に強い関心を持っていたんです。
そのなかで海外と日本の現状を比べたときに、「日本の大学生から何かアクションを起こしたい」という気持ちがありました。
私たちとしても、海洋プラスチックゴミを減らすために何か身近でできることはないかと考えて、マイボトルに注目したという背景があります。
ペットボトルの購入を抑えてプラスチックゴミを削減するために、まずは「構内でウォーターサーバーを導入してレンタルボトルのサービスをする」という活動を始めました。
マイボトルを持参してもらうのではなく、ボトルを貸し出すという取り組みが新しいですよね。
持参するよりも参加しやすそうです。
私たちは「なぜマイボトルはあまり使われていないんだろう?」ということを考えました。
大学内でアンケートをとってみると、マイボトルを7〜8割の人が持っているようなのですが、使っていないという「なんちゃってボトラー」がとてつもなく多くてですね。
使わない理由をインタビューした際に、「持ち運びが面倒くさい」とか、「洗浄が面倒」という声が挙げられていました。
そこで、マイボトルを大学内で貸し出して、洗浄も大学の食堂に担保してもらったら実現できるのではないかということで、このレンタルボトルサービスは始まりました。
大学側の協力があって始められたレンタルサービスだったんですね。
数あるウォーターサーバーメーカーのなかで、なぜウォータースタンドさまと提携することになったのでしょうか?
私たちの「ペットボトルや海洋プラスチックをなくしたい」という思いと、ウォータースタンドさまの理念が一致したというのがあります。
ウォータースタンドさまは、SDGsの達成のためにプラスチックを減らす活動に取り組んでいらっしゃいます。
さらに、東京農工大学で実際にウォータースタンドさまのウォーターサーバーを使用しているお話を聞いたんです。
他の大学でも実施できるのであれば、私たちの大学でも導入できるのではと思い行動してみました。
ウォータースタンドは、「水道直結型」のウォーターサーバーで、水道水を高性能フィルターでろ過して使います。つまり「ボトルが不要」のため、ペットボトルの削減に役立つウォーターサーバーと言えます。 (出典:ウォータースタンド公式)
「ウォータースタンド導入の前後でマイボトル所持率が上がった」という調査結果を伺いました。実際に成果につながっていてすばらしいです。
ウォータースタンド導入の試みで、特に工夫したことはありますか?
工夫としては、今後「マイボトルのプレゼント企画」を考えています。
最終的には、やはりマイボトルを持ってない人に届けたいので、応募してくださってる方に「ボトルを持っていたら、ぜひボトルを持ってきてください。そして持っていない人に、さらにプレゼントしませんか?」という“プレゼントのプレゼント”という啓発を行う予定です。
もう一つは「ワークショップ」です。
「マイボトルの先に何があるのか」という環境問題についての啓発ができるよう、ウォータースタンドさまと一緒に企画しプレゼンする予定です。
日本の大学でのプラスチックフリー
これから日本の他の大学で普及していくためには、何が大事になってくると感じてらっしゃいますか?
大学全体の動きにしていくためには、大学側の協力はかなり重要だと感じています。
そのために、学生側から声を上げていくことがすごく大事なのかなと。
今の学生はZ世代で環境問題やSDGsへの認知度も高いので、そういった学生から声を上げていくことですね。
例えば、私たちの大学のように「ウォーターサーバーを導入したい」、「マイボトルを普及する運動をしていこう」と呼びかけることによって、大学側を動かす活動になっていくんじゃないかなと思っております。
学生視点で声を上げていくことで、大学全体、ひいては社会に影響を広げたいということですね。
改めて大学生として活動を起こす意味としては、これから社会を担っていく今の大学生から、消費行動を考えていくということです。
大学でアクションを起こして大学生のなかで認識を高めていくというのは、すごく意義があることだと思って活動しています。
SDGsや持続可能な社会の推進については、創価大の学生の意識がすごく高く、声をかけたらみんな少しずつアクションを起こしてくれたり、SNSでの広がりも実際にたくさんありまして。
そういうふうに、「この大学から本気で社会課題について考えて社会を変えていこう」という思いで今、活動をしてます。
SDGsの達成と「誰も置き去りにしない」地球社会の実現に向けて
創価大学では「大学・諸機関および研究者とのネットワークを形成し、SDGsの達成へ先導的役割を担う」ことを掲げており、公式Youtubeチャンネルでは中高生向けにSDGs動画を公開しています。
チームPLASSでは、SDGsの達成と「誰も置き去りにしない」というテーマを置いてらっしゃいますが、そのためにできることはどんなことなのでしょうか?
私たちは経済学部で、特に開発経済学というアフリカやアジアの貧困問題について考えるようなゼミに所属しております。
そういったところからSDGsやプラスチックゴミなどの環境問題に関しても、興味関心を持ってまいりました。
そのなかでも、とても重要だと思っていたのが「自然資本」という考え方です。
今まで経済学に関しては、GDPや成長率など数字的にしか測ってはいませんでしたが、やはりこれからは「自然資本=環境をコストとして考えていく」という視点を加味しながら、考えていくことが必要だと考えております。
そういうふうに、「この大学から本気で社会課題について考えて社会を変えていこう」という思いで今、活動をしてます。
自然資本という考え方から、プラスチック削減ということでペットボトルを減らす活動につながるわけですね。
そうですね。
私たちは、「プラスチックの消費が環境に与える影響も、最終的に私たち人類が負担しているコスト」と考えていく必要があると思っています。
「SDGsへの貢献や環境問題の達成は、経済学的に考えても重要だ」ということを話していく必要があるんじゃないかと。
そのために私たちができることは何かというと、やはり一人ひとりの行動で、「プラスチックなし」の生活をどれだけできるのかだと思います。
「プラスチックなし」生活は、実際は意識できていない人が多いと感じます。
障壁になっていることはどんなことなのでしょうか…。
私たちはSDGsの研究が専門のゼミではないのですが、私たちが経済学部として考えたのは、やはり「利益追求の資本主義社会」がSDGsの達成に大きな障壁になっているんじゃないかという話をしておりました。
の障壁を開発経済学の視点からどうやって解消していくかというと、人間開発指数(HDI※)が、途上国の開発状況を測る指標として活用されていて。
HDIを国を測る指標にしていくことが、障壁を解消する上で必要なんじゃないかと考えております。
※人間開発指数(HDI)は、保健、教育、所得という人間開発の3つの側面に関して、ある国における平均達成度を測るための簡便な指標のこと。
一国の開発のレベルを評価するに当たっては、経済成長だけでなく、人間および、人間の自由の拡大を究極の基準とするべきであるという点を強調するために、HDIは導入された。〈出典:国連開発計画(UNDP)〉
創価大学SDGs推進センター主催のオンラインセミナーでは、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の中嶋亮太研究員が登壇。「2050年までに海にたまるプラスチックの総量は10億トンになる計算で、海のすべての魚(深海魚を除く)の重さの量を超える」と述べ、「プラスチックなし」生活への転換を呼びかけました。