大きな役割の一つが「ウォーターサーバーの安全」
編集部
まずは、JDSAという団体の概要を教えてください。
芹澤さん
もともと宅配水業界には二つの団体があったのですが、これらを両方とも解散して、一つの団体にまとめたのが7年前になります。
「正会員」という、フランチャイズの本部やブランドホルダーが30社。そこに傘下の企業がたくさんおられますので、だいたい宅配水業界の売上の7割~8割くらいは、当協会の会員になっているという感じです。
編集部
JDSAは、主にどのような活動をしている団体なのですか?
芹澤さん
大きなものとしては、まず「ウォーターサーバーの安全」という部分ですね。つまり、「乳幼児に対するやけど対策」です。
編集部
今、ほとんどのサーバーにはチャイルドロックが採用されていますね。
JDSAとして、やけど対策に取り組むようになったのは、どのような背景があったのでしょうか。
芹澤さん
乳幼児のやけど事故というのは、一人で立てるようになる8ヶ月から1歳半くらいまでが一番多いのです。
そのくらいのお子さんの事故が、重症になることが多い。大人は「熱い」と感じるととっさに手を離しますが、小さい子どもは、そのような動作ができないらしいのです。
熱さを感じると、その状態で手を握りしめてしまう傾向があるようなのですね。
ですから
「1歳の子どもが解除できないようなもの」
回す力、引く力、挟む力、押す力に関して具体的な数値を算出して、1歳児が解除できない数値を設定し、マニュアルにしました。
このマニュアルを守っていれば絶対に安全とは言えないかもしれませんが、この基準を満たしているサーバーであれば、乳幼児の重傷事故を減らすことができると思っています。
編集部
基準を満たしているサーバーはどのように見分けたらいいのでしょうか。
芹澤さん
「Child Safety」適合マークというものを作り、基準を満たしているものはこのマークを表示していいということになっています。
(出典:JDSA)
編集部
このマークを表示しているサーバーはまだ少ない印象ですが、
アクアクララなど、公式サイト上で明示しているウォーターサーバー会社もありますね。
(出典:アクアクララ)
ユーザーとしては、今後もこういった動きが拡大していくとサーバー選びの参考になるのでありがたいところです。
電気代の「JDSA基準」について
編集部
その他に、JDSAの取り組みの中でユーザーの参考になるものはありますか。
芹澤さん
電気代に関する「計測方法の統一」が挙げられると思います。
今までは、各社が独自の基準で計測をした電気代を表示していたため、中には、あり得ないような金額が表示されるケースもありました。
編集部
それはユーザーにとって困りますね。
ユーザーが知りたいのは「非現実的な限界値」ではなくて、 「普通に使ったらいくらぐらいかかるの?」ということですから…。
そこで、JDSAの取り組みによって各社の計測方法が統一されたというわけですね?
芹澤さん
はい。
アメリカのエナジースターという制度の計測方法を参考にしたり、国や各種専門家のアドバイスをいただきながら統一の計測方法を策定しました。
2018年の4月に新制度として発表し、2019年の4月から、各社ともその数値を表示するようにしています。
「そもそも電気代を表示しない」というのなら、それはそれで構わないのですが、もし表示をするならJDSAの計測方法に則ったものを表示してもらっています。
現状、まだ数社はJDSA基準のものが表示されていないところもあるのですが、近いうちに「JDSA基準を表示するか、もしくは表示しないか」という選択になるかと思います。
編集部
クルマの燃費表示に似ているかもしれませんね。
実際の使用時に近い測定方法を全メーカーで統一してくれれば、選ぶときの参考になりますから。
ウォーターサーバー会社の公式サイトを見ると、スペック表やその付近に「※ JDSA基準(1804)による測定結果」とありますね。
出典:プレミアムウォーター
文字が小さいことも多いですが、ひとまずこの表示があれば「統一基準で計測された電気代」ということですね。
芹澤さん
そうですね。ウォーターサーバー業界の7割方の会社はJDSAに加盟していますので、「電気料金算出方法を統一させる」という当面の目標は達成しつつあると思っています。
もちろん、まだ協会に加盟していないところもあるので、今後はそういう会社にも呼びかけていきたいと思っています。
編集部
ではユーザーとしては、ウォーターサーバー選びをするときに、
- 電気代であればJDSA基準
- チャイルドロックに関しては「Child Safety」適合マーク
これらをチェックすれば参考になります、という感じですね。
芹澤さん
今のところ、ウォーターサーバーの全部が表示しているわけではありません。まだ、こういった取り組みをやり始めたばかりなので…。
しかし将来的には長い時間をかけてでも、そのようなカタチにしていきたいと思っています。
電気代に関しては、表示するのであれば基準を満たしたものを表示をする。チャイルドロックに関しても、ちゃんと検査をしていただく。
編集部
そういった動きが広まっていけば、ユーザーにとってウォーターサーバー選びがよりわかりやすくなりますね。
今後もぜひ、ユーザーのための活動をよろしくお願いします。
メンテナンスについての発信
編集部
公式サイトを見ると、JDSAの活動は他にも「定期メンテナンスの推進」というものがありますね。
これはどういったものなのでしょうか。
芹澤さん
最近のウォーターサーバーの中には熱水循環やUV殺菌などの機能を持つ機種も出てきていますが、あくまでもこれは「殺菌」を目的としたものです。
「内部の汚れは取れるのか」というのはまた別の問題ですよね。
そこで
「定期的にメンテナンスをしてほしい」
3年に1度でもいいし2年に1度でもいいし、そこは各社で決めてもらって。2年に1度だったらどの程度汚れているのかを自分たちで把握してもらう。また、
- リターナブルの会社は自社スタッフがお客様のところに水を届けていますのでメンテナンスができる
- ワンウェイの会社は「宅急便で送る」というかたちなので、メンテナンスが難しい
そういった背景はあるのですが、JDSAの講習会にはワンウェイの会社も興味を持って来ていただいていますよ。
編集部
今後はもしかしたら、ワンウェイの会社でもサーバー内部のメンテナンスを行うところが出てくるかもしれませんね。
いずれにせよ、JDSAという団体がウォーターサーバー業界において大きな役割を担っていることがわかりました。
今後も、ユーザーのウォーターサーバーライフがより良いものになるように、JDSAの活躍を期待しております。
本日はありがとうございました!