そもそも「アクアソムリエ」とは?
編集部
まずは、アクアソムリエというものに関して詳しく教えてください。普段はどういった活動をしているのでしょうか?
山中さん
私はアクアソムリエの資格をイタリアで取得しました。
向こうのアクアソムリエは、ワインのソムリエのように料理との相性で水を選ぶことに重きを置いているのですが、日本におけるアクアソムリエは意味合いが変わってきています。
日本のアクアソムリエは、水を飲むことの大切さなどについて解説を求められることが多いです。
「地球の水はどれくらい使われていて、日本の水はどのような状態なのか」といった環境問題についての学習も必要で、水に関する基本的な知識・情報をしっかりと伝えていくという方向になっていますね。
「アクアソムリエ」という言葉から、「利き水をする人」みたいなイメージがあるかと思うのですが、それだけではなく「水そのもの」に対する勉強が必要です。
編集部
山中さん自身はどのようなキッカケでアクアソムリエになったんですか?
山中さん
私はもともと食材の輸入に興味があってイタリアに留学していたのですが、そのときの知り合いがミネラルウォーター専門店を立ち上げることになり、スタッフとして携わることになったんです。
「お客様にちゃんと説明するためには水のことをちゃんと勉強する必要があるな」と感じ、イタリアにアクアソムリエという資格があることを知り、イタリアで取得しました。
自分のように、水を飲む大切さを知らずに生活している方はたくさんいらっしゃるのではと思い、水の大切さを広めていきたいと思うようになりました。
編集部
なるほど。アクアソムリエは、単なる「利き水師」のようなものではなくて、水の大切さを伝える伝道師のようなものなのですね。
山中さん
そうですね。「水なんて味がないしどれも同じ」という人もけっこう多いと思うのですが、「けっこういろんな味や種類があるから、こういうものを試してみたら?」ということをアドバイスしていきたいですね。
「おいしい水」はどうやったらわかりやすい?
編集部
現在ウォーターサーバーを使っている人の中には、あまり水を楽しめていないというか「正直、水の味はよくわからない」という人も多いんです。
水の味って、どうやったらわかりやすいですか?
山中さん
空腹の状態だと味覚が変わってしまう場合があるので、
テイスティングをするなら食事と食事の合間がいいですね。
お腹が空いていない、かといって満腹でもない時間帯に毎日同じ条件で飲んでいると、違いがわかりやすいです。
そして本当の水の味を味わうなら、あまり冷やさずに常温で飲んだ方がいい。
冷水として出てきたものの場合は、しばらく置いて常温にしてから飲んだ方が味がわかりやすいです。
あと、飲む際の入れ物によっても違うんです。病院にあるような紙コップだと、やっぱりおいしくないんですよね。
水を味わうにはやはりグラスの方がいいのですが、グラスに臭いがついているとそれが理由でまた味が変わってしまいます。
テイスティングをするグラスはしっかり洗って、臭いがまったくない状態にすることが大切です。
編集部
なるほど。水の味がわからないのは、「そもそも条件が悪い」というケースも多そうですね…。「飲み方」の注意点は何かありますか?
山中さん
まずはにおいをかいで、自分の集中力を高めてから。水はとにかく「集中力」なので。
あと、舌というのは真ん中あたりが一番鈍感だと言われています。
水を味わう時には舌の真ん中ではなく、舌先と舌の奥の方で、飲み込むときに味を意識するといいと思います。
ワインのように「口の中で転がす」という方法もありますが、水の場合、唾液と混ざってしまってよくわからなくなることも。舌先で味わってゴクリと飲み込むだけでも、いろいろな味がわかると思いますよ。
編集部
なるほど…。やり方は理解できましたが、やはり訓練が必要なのでしょうね。
山中さん
そうですね。大切なのは訓練と「日頃の食生活」。
やはり味の濃いものばかり食べたり飲んだりしている人は、味の違いがわかりにくいです。タバコを吸っている人や、化学調味料を多く取っている人は注意が必要です。
味覚が鈍感になってしまうと、硬水と軟水の違いもわからなかったりします。日頃の食生活はかなり大事ですよ。
編集部
ウォーターサーバー会社が提供する水には、天然水とRO水といった違いがあります。「天然」という言葉のイメージから、無条件に「天然水の方がいい」と思ってしまいがちですが、そう単純なものではありませんよね?
山中さん
RO水は環境ホルモンの物質などあらゆる不純物が取り除かれていますから、
「不純物が気になる」という人はRO水を選べばいいと思います。
「何も含まれていないピュアなものを望む」という人は、日本にはけっこういらっしゃるんじゃないでしょうか。
一方、
「自然のものをそのまま体に取り入れたい」という人は天然水を選べばいいと思います。
天然水には天然水の良さがやはりありますよね。なので、価値観による違いでしょうか。
どちらがいい・悪いという話ではないと思いますよ。
あとRO水は、自分の体調変化を確認するにはいいと思います。
もし味の違いを感じたのなら、それは自分の口の雑菌のせいなので。「今日はおいしくないな」と感じたのなら、もしかしたら体調がよくないのかもしれない。
天然水は、もちろんある一定の成分が保たれてはいますが、とはいえ天然のものなので「完全にまったく同じ水」というのはありえない。それが天然水の良さでもあります。
一方、そういう意味でRO水は安定しているので、体調変化に気付くことができるという側面もあるかなと思います。
編集部
「水の成分表」のデータを公開しているウォーターサーバー会社も多いのですが、そういった成分表を見て味を想像することは可能でしょうか。
出典(プレミアムウォーター)
山中さん
カルシウムやマグネシウムの量でだいたいの味は想像できます。
水にはいろいろな成分がありますが「mg」の単位で入っていないと、普通の人は味として知覚しにくいと思います。
水にmg単位で含まれているのは、主に、カルシウム・マグネシウム・ナトリウム・カリウムくらいなので、その量によって味が違ってきます。
ミネラルの味の感じ方は人によって違いもありますが、一般的には、たとえば
- カルシウムが多ければ多いほど、牛乳っぽい味になります。決して牛乳の味がするわけではないのですが、まろやかな、とろみ、みたいな感じですね。
- マグネシウムは、ちょっと金属っぽい、苦味というか鉄っぽさ。カリウムが多いと、スポーツドリンクみたいな酸味がありますね。
- ナトリウムは、ちょっと含まれていると甘味になるんですけど、50mg以上になるとしょっぱくなってきます。
編集部
おもしろいですね!そういった成分がバランスよく含まれていれば、人は「おいしい」と感じるということでしょうか?
山中さん
おいしいかそうでないかは「人の嗜好」によるところも大きいので、難しいところです。「おいしさ」というのは生活習慣によっても変わってくるので。
たとえば日本人の多くは軟水がおいしいと感じますが、日本人の方でもアメリカにずっと住んでいたという方がアクアソムリエのコースを受講されたとき
「日本の軟水は物足りないからずっと超硬水のコントレックスを飲んでいて、コントレックスが一番おいしい」
とおっしゃっていました。
また、富士山の水に含まれているバナジウムという成分を、私は苦味やえぐみのように感じるのですが、好きな人にとっては「キレ」のようなものを感じるようです。
編集部
なるほど。「おいしさ」の世界は奥深いんですね。
でも、そういった奥深さを知っているのと知らないのでは、水の楽しみ方も全然違うはず。これから我々も訓練を積んで、自分にとっての「おいしい水」を追求していきたいと思います。
ちなみに、おいしい水はそのまま飲むのはもちろん、料理に使っても違いが出ますよね?
山中さん
はい。
「水が9割を占めるような料理だとわかりやすい」と思いますよ。
料亭の板前さんなどは豆腐を作ったりしますが、一般の方はそうもいかないでしょうから、お味噌汁とか。「水そのもの」が食材になるようなものだとわかりやすいと思います。
ご飯を炊くときも、水道水を使ったお米とは炊飯器や鍋を開けたときの匂いからして全然違うんです。
編集部
それもまた、「おいしい水」のある生活のメリットですよね。
ウォーターサーバーには「そのまま飲む・コーヒーやお茶を淹れる・料理に使う」…というさまざまな使い方があります。
今後もそれらをフル活用して、奥深い「水のおいしさ」を楽しみたいと思います。
本日はどうもありがとうございました!