水道水を沸騰させて飲む方法
水道水を沸騰させるのは、水道水の浄水処理の過程で含まれる成分を除去する方法として知られています。
しかし、混入物を除去し安全性を高めたいなら一定時間の煮沸が必要です。
成分除去にかかる煮沸時間とは
結論からいうと、水道水に含まれている主要な不純物を除去できる煮沸時間の目安は地方自治体によって異なります。
理由は、地方自治体によって水道水に含まれている成分が変わるためです。自分が住んでいる地域の水道水の煮沸条件については自治体の水道局のホームページを参考にしてください。
水道水に含まれている消毒のために注入された成分や、それに反応して生成された物質の中でも、残留塩素と有機物は、混入している分量が多いとイヤなにおいのもとになったり味を損なう可能性がある物質とされています。
塩素の化学反応で発生するカルキ臭は、煮沸を行うことによりその成分を減らしてにおいを抑えることができます。
塩素を除去したいときも一定時間の煮沸が必要です。その後、冷蔵庫などで冷やすと飲みやすくなります。
含有成分やにより煮沸条件は異なるので、自分が住む自治体の水道局のホームページを参考にしてください。
鍋の場合
家庭でカルキを抜きたい場合に一般的に利用されるのが、鍋に水道水を入れて沸騰させる方法。
水温を十分に上げるためにフタをして沸騰させ、沸騰し始めたら蒸気を逃すためにフタを取ります。
沸騰後、一定時間加熱を続けたら火から下ろし、冷ました後に冷蔵庫で冷やしてから飲むとカルキ臭を感じにくく飲みやすくなります(煮沸条件は地方自治体によって異なります)。
ケトルで沸かす場合
ケトルで沸かす場合も、鍋と同じく一定時間の沸騰後の煮沸が必要です(煮沸時間は地方自治体によって異なります)。
気化しやすいように、沸騰が始まったらフタを取ります。
フタ部分の口が広いタイプのやかんを使用すると、気化しやすくスムーズです。
ただしこの方法は、途中でフタを取ったり、場合によっては新たに口の広いタイプのやかんを用意したりしなければならない手間があります。
赤ちゃんの湯冷ましに使用する場合は?
湯冷ましとは、沸騰させて一定時間煮沸して冷ました水のこと。昔から赤ちゃんに飲ませる水として知られています。
沸騰・煮沸させて冷ます目的は、塩素やその他の不純物を取り除くため。では、水道水に含まれている成分をできるかぎり取り除くためには、どれくらいの煮沸が必要なのでしょうか。
ここでは、赤ちゃん用の湯冷ましの作り方(煮沸時間)と、煮沸後に保存できる期間について紹介します。
最適な煮沸時間
水道水に含まれている不純物は、一定時間、煮沸すると除去できるとされています。
ただし、除去できているかどうかは、水道水に含まれている成分量によっても変わってきます。自分が住んでいる地域の水道水の煮沸条件については自治体の水道局のホームページを参考にしてください。
煮沸して不純物を除去した後の水の保存期間
煮沸後の水は長期間の保存ができず、できるだけ早く飲み切らなければなりません。
細菌を消毒する効果をもつ成分を煮沸により取り除いてしまうということは、見方を変えれば、細菌が繁殖しやすい環境になるということです。
つまり、そのままの水道水よりも煮沸した後の水の方が、雑菌が増えるリスクは高まります。
東京が災害時対策として発信している水道水の保存情報によると、そもそも消毒剤が入っている水道水であっても、飲食に使用することが可能な保管期間の目安は冷暗所で3日程度、冷蔵庫で10日程度です(参考: 東京都水道局)。
消毒剤が入っていない水は雑菌の繁殖が進みやすいため、より一層保存期間に気をつけなければなりません。
また、細菌は水温が上昇すると繁殖率が高まるので、少しの間の保管でも冷蔵庫に入れておいた方が安心です。
さらに、保管する際には、外部からの雑菌の侵入と繁殖を防ぐために、フタがしっかりと閉まる清潔な容器に入れることもポイントです。
家庭で煮沸した水を保管する場合、細菌の繁殖を防ぐ対策を正しく守って管理することは簡単ではありません。
赤ちゃんへの安全を考えるなら、煮沸した水の保存はしない方が良いでしょう。
水道水を煮沸した後の水の安全性
煮沸により、水道水に含まれている不純物の量を減らしたり、純水に近い状態にしたりすることはできますが、煮沸時間を考える際に特に気をつけておきたい成分があります。
ここでは、加熱の際に他の成分とは異なる特徴を見せるトリハロメタンに着目しながら、煮沸後の水道水の安全性について解説します。
「トリハロメタン」に関する煮沸時間
蒸発しやすい性質をもつ成分は加熱すると、沸騰する前から濃度が減少し始めることが通常です。
しかし、トリハロメタンは、他とは異なる性質をもつため気をつけなければなりません。
トリハロメタンにはブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム、クロロホルムの4つの種類があり、全ての濃度を合計したものを総トリハロメタンといいます。
4種類のいずれの物質も気化する性質があるため、沸騰により成分量を減らすことは可能です。
ただし、煮沸時間については注意しなければなりません。
なぜなら、クロロホルムには、他の物質とは異なり、加熱後から沸騰するまでの間に増量する性質があるからです。
トリハロメタンを除去するための煮沸時間は、水道水に含まれる成分によっても変わります。適切な煮沸時間については自分が住んでいる地域の水道局や県のホームページを参考にしてください。
(参考:三重県 水質管理情報センター)
その他の物質から見る水の安全性
水道水の消毒に欠かせないのが塩素です。
浄水場で水を消毒する際に注入された塩素は、家庭などへ届くまでの間に効果が消えないよう、注入量が調整されています。
つまり、蛇口に届くときには必ず水道水の中に塩素が残っているということです。
また、鉛製給水管を使用している場合には停滞した水に鉛が溶ける可能性があります。
鉛は体内に蓄積されると中毒化しやすい物質です。
ただし、水質基準の設定や水道管の敷設替などの対策が取られているため、においなどが残ることはありますが、健康への影響はありません。
水道水を沸騰させる以外で不純物を除去する方法
鍋ややかんを使って水道水の不純物を除去する方法は、水を使用するたびに沸騰しなければならず、どうしても時間と手間がかかります。
さらに、沸騰が始まったらフタを開けなければならなかったり、せっかくつくっても保存が効かなかったりなど、忙しい毎日の中では使いにくい方法ですよね。
そこで、沸騰以外に手軽にできる2つの除去方法を紹介します。
手間を省いてできるだけきれいな水を飲みたいときに便利に利用できるのが、浄水器やウォーターサーバーです。
浄水器
浄水器はフィルターを通すことで水道水の不純物をろ過してくれる機器で、用途により大きく5つのタイプに分けられます。
浄水器のタイプ別特徴 | |
---|---|
蛇口直結型 | 蛇口に直接取り付けて使用。 値段が手ごろなうえ、自分で取り外しができて管理がラク。 |
水栓一体型 | 最初から水栓にフィルターが組み込まれていて設置する手間がない。 |
ビルトイン型 | キッチンのシンク下に設置するので取り付けが大変。 専門業者による工事が必要となり費用がかかるが、ろ過量は多く除去力は高い。 |
据え置き型 | 蛇口などにホースでつないで使用。 ろ過量は多く、壁に掛けたり流し台に置いたり、用途に応じて設置可能。 しかし、蛇口直結型と比べて場所を取るのが難点。 |
ポット型 | ろ過材は内部に組み込まれていて持ち運びができ、使用場所を選ばない。 ただし、ろ過量は少ない。 |
いずれのタイプの浄水器も安全に使用するためには雑菌が繁殖しないように十分な管理が必要です。
定期的にろ過材を交換し、浄水器内に長時間水をためないように注意しなければなりません。
ろ過材の交換を定期的に行わないと水道水から取り除いてたまっていた成分が浄水器内で再び溶けて、もとの水道水よりも不純物の濃度が高くなることがあります。
ウォーターサーバー
(出典:ウォータースタンド)
ウォーターサーバーのメーカーが提供している水は、各メーカーで厳しい基準を設け、不純物除去や殺菌処理などを終えています。沸騰・煮沸して不純物を除去させる必要がなく、そのまま水とお湯が使えるので便利です。
ウォーターサーバーの中で、水道水を使う「水道直結型サーバー」のウォータースタンドを紹介します。
ウォータースタンドは、水道水を浄水精度が高いフィルターでろ過して使うウォーターサーバー。水道水なので水代が安く、毎月定額制で「飲み放題」といえます。
ウォータースタンド(水道直結型ウォーターサーバー)のおもな特徴 | |
---|---|
水 | ・特殊な自社フィルターで水道水の中の不純物(トリハロメタン)や塩素を除去 ・高性能フィルターで不純物を除去した純水に限りなく近い水 |
月額料金 | 2,200円(税込)〜※機器のレンタル代のみ |
ポイント | ・ボトルの注文・交換・保管・廃棄が不要 ・設置工事は必要だが、一度取り付けると定額制のため飲み放題かつ使い放題 |
不純物を取るには、どの方法が一番お得でラク?
水道水をきれいにして飲む方法として、「煮沸する方法」と「浄水器」や「ウォータースタンド」、どれが一番いいのでしょうか?
下記の表に、項目ごとにまとめてみました。
方法 | 安全性 | 手軽さ | 料金 | 除去力 |
---|---|---|---|---|
鍋ややかんで煮沸 | △ | × | 〇 | △ |
浄水器(蛇口直結型) | △ | 〇 | 〇 | △ |
浄水器(水栓一体型) | △ | 〇 | △ | △ |
浄水器(ビルトイン型) | △ | × | × | 〇 |
浄水器(据え置き型) | △ | 〇 | △ | 〇 |
浄水器(ポット型) | △ | 〇 | 〇 | × |
ウォータースタンド | 〇 | 〇 | △ | 〇 |
安さや手軽さなど、何を優先するのかは人それぞれかと思いますので、自分に合った方法で水道水をより安心して飲める工夫をしてみてくださいね。
(参考:神奈川県衛生研究所、一般社団法人 浄水器協会)
水道水の安全性
水道水は適切な浄水処理が行われていて、水道法第4条に基づく51項目の「水質基準」と27項目の「水質管理目標設定項目」で、不純物の含有濃度の値が定められています。
しかし、本来であれば摂取しないような成分が微量ながらも含まれていることを考えると、飲料や料理などでの使用に不安を感じる人もいることでしょう。
そこで最後に、水道水がつくられる過程や含まれている成分などから水道水の安全性について見ていきます。
水道水はどのようにつくられるか
水道水の水源は、河川や貯水池、地下水などです。
原水は、浄水場へ送られると薬品が注入されます。
薬品により細菌などが凝集され沈殿すると、上澄みをろ過し消毒を行います。
沈殿せず除去できなかった物質については、さらに別の処理方法を併用して取り除きます。
そして、消毒が無事に終了するとポンプ場へ送られ、各家庭などに水道管を通して配られるというのが大まかな流れです。
水道水をそのまま飲む場合の不安とは
水道水に含まれる成分含有量の基準値は人体に影響がない範囲で定められています。
しかし、基準値内の微量とはいえ、トリハロメタンや残留塩素といったリスクのある成分も含まれているので、摂取し続けることに不安を覚える人も少なくありません。
小さなお子さんがいる家庭であればなおさらでしょう。
水道水に含まれる成分の紹介
まずは、水道水に入っている成分の一覧を見てみましょう。
発がん性の疑いやにおいの発生の原因となる可能性があるおもな成分と濃度は、以下でまとめています。
おもな消毒薬の種類 | 濃度の基準または目標値 |
---|---|
残留塩素 | 1mg/L以下 |
総トリハロメタン | 0.1mg/L以下 |
ジオキサン | 0.05mg/L以下 |
ジクロロメタン | 0.02mg/L以下 |
テトラクロロエチレン | 0.01mg/L以下 |
クロロホルム | 0.06mg/L以下 |
ブロモジクロロメタン | 0.03mg/L以下 |
ブロモホルム | 0.09mg/L以下 |
トリクロロエチレン | 0.01mg/L以下 |
ベンゼン | 0.01mg/L以下 |
ジクロロ酢酸 | 0.03mg/L以下 |
臭素酸 | 0.01mg/L以下 |
トリクロロ酢酸 | 0.03mg/L以下 |
ホルムアルデヒド | 0.08mg/L以下 |
鉄およびその化合物 | 鉄の量に関して、0.3mg/L以下 |
(出典: 東京都水道局)
浄化処理の過程でも、量が多いとリスクのある成分が含まれることがあります。
「鉄およびその化合物」とは、水道管の一時的な鉄サビのはがれや残留性塩素の使用により、水道水に鉄サビやカルキ臭が発生することがあります。
過去には貯水池などでのプランクトンの発生などによってカビ臭を感じるケースもありました。
水道水にはどのような成分がどれくらいの量で入っているのか知っておきたい人は、参考にしてみてください。