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札幌発の天然藍染工房「藍染坐忘」できれいな水が生み出す藍色の美に迫る

2021.08.13

札幌市東区にある天然藍染工房「藍染坐忘」(あいぞめざぼ)。天然素材にこだわり、藍の他に使う地下水にも気を配って、作り出す藍色の美しさが評判です。

日本でも古くから行われている藍染めは、植物のタデアイなどからとれる「藍」の成分を用いた染色技法で、その藍色はジャパン・ブルーとも呼ばれて愛されています。藍染坐忘の藍染めは、札幌市内を流れる豊平川の恩恵を受けたきれいな地下水を使うことでも、深い青の美しさを作り出しているとか。藍染師であり、工房長でもある熊谷大輔(くまがいだいすけ)さんにお話をうかがいました。

トップの画像は、藍染の様子。(写真提供:藍染坐忘)

水と暮らす編集部

藍染坐忘さんの工房やブランドなどについて教えてください。

熊谷さん

代表の折居健二が、若いころから旗やのれん、のぼりを作る工房で職人を務めていたのですが、いつか藍染めをやりたいという長年の夢を抱き、立ち上げたのが「藍染坐忘」です。

化学薬品を使わず、すべて自然素材にこだわった材料から生成した「天然灰汁発酵建藍染(てんねんあくはっこうだてあいぞめ)」で染色をしているのが一番のポイントでしょうか。

北海道でも藍染めを知ってもらおうと藍染めの体験サービスを始め(2021年6月現在は休止中)、その後、自社藍染めオリジナルグッズも開発し、販売しています。

藍染を行う工房
藍染を行う工房。(写真提供:藍染坐忘)

札幌のきれいな水が生み出す生き生きとした藍色の美しさ

水と暮らす編集部

藍染めにおいて水はどのくらい使うものなのでしょうか。

熊谷さん

あらゆる工程で、とにかく大量に水を使います。天然染料のため、何回、何十回も染めを繰り返して手間暇かけて染め上げていきます。

ただし、綿や麻など、染めるものによっても、何を作りたいか、出したい藍色の加減によっても作業時間や方法が全然違うのですね。使う水の量も都度変わりますので、なかなか一般化しにくいところがあります。水や温度の加減で灰汁の色が抜けて秋の空のような青色になることもありますし。

水と暮らす編集部

大変な作業だと感じますが、藍の色の強さや美しさを水が引き出していく様子は本当におもしろそうですね。きれいな水を藍染めに使うことで仕上がりにどのような違いが生まれるのでしょうか。

熊谷さん

藍染めというのは生の葉で染める「生葉染め」の他に、「すくも(蒅)」を瓶発酵させて染める「藍建て染め」があります。「すくも」は、乾燥させた藍草の葉を粉末状にして、水を打って寝かせて作る藍染めの原料です。

私たちは「藍建て染め」の中でも、古くからの藍染技法である「天然灰汁発酵建藍染」で染めています。染料の「すくも」に灰を溶いた 灰汁を加え、発酵させて染液を作ります。こちらも発酵ですので、微生物の力を借りることになります。

ですので、殺菌していない水を使うことで、微生物が少しでも長生きして、藍を長持ちさせたり、発色を良くしたりすることにつながると感じています。

藍染の様子
基本的には藍の本場・最高品質の徳島産を使って藍建てを行うが、同じ北海道産の伊達の藍も使用。(写真提供:藍染坐忘)
水と暮らす編集部

札幌市内・市外近郊に湧き水スポットがいくつかあるようですが、使用する水に豊平川水系を選んだ理由がありましたら教えてください。

熊谷さん

当初はスタッフが遠くまで湧き水をくみに行っていたのですが、それでは大変なので工房の敷地内で、掘って水をくもうかという話になりました。

最初は工房で使用する分がまかなえればよいと考えていましたが、掘ってみたら思いのほか水の量が豊富だったので、じゃあ会社全体でも使おうと、社内の生活用水も全て、今はここでくみ上げている地下水を使っています。これが豊平川水系だったということですね。

50mほど掘った天然水が湧き出る様子
50mほど掘った天然水を使用。(写真提供:藍染坐忘)
水と暮らす編集部

水にはどのような特徴があるのでしょうか。

熊谷さん

私たちも、工房内で毎日飲んでいる水ですが、軟水であることもあり、いろんな人が飲んで「やわらかくておいしい水」と喜んでいただいていますね。「料理で使いたいからくれないか」と打診していただいたこともあります。

毎月、水質検査はしていますが、水量も水質も安定しています。すぐに冷たい水が手に入るのはありがたいですね。冬は、心臓が止まりそうになるほどの冷たさに感じることもありますが(笑)。

食藍から身につける藍まで

水と暮らす編集部

工房体験後に純天然水でいれたおいしいハーブティーを出しているとのことですが、こちらも藍染めに使われている水と同じなのですか?

熊谷さん

そうですね、藍のハーブティーも人気です。藍染めを体験する前に天然水をお出しするので飲んでいただいています。そして体験後の染め物を乾かしている間に、この天然水でいれたハーブティーで喜んでいただいていました。

「飲む藍」としても好評で、ハーブティーとハンカチをセットでギフトに購入する方も多くいらっしゃいます。弊社では藍を多くの効能をもつ薬草としても注目していて、口に入れられる「食藍」としての商品も食藍を開発していらっしゃる徳島の「ボン・アーム」様より委託販売しています。

ボン・アームの商品
食べられる藍、飲める藍もさまざまにそろう。(写真提供:ボン・アーム)
水と暮らす編集部

ハーブティーのほか「藍の青汁」「藍茶」などもあるのですね! 他に身につけるものでおすすめの商品をご紹介ください。

熊谷さん

麻などのストールが人気ですね。染め方も藍色も、いろいろな種類をご用意しています。夏は風よけにさっと羽織ったり、寒いときは首元に巻いたりと季節に合わせて便利に使っていただけます。

麻100%のストール
麻100%のストール。3度染めの作業を重ねて、まるで夜の空のような濃紺色「深藍」を表現している。藍亜麻100%の大判ストール【深藍】10,780円(税込)。(写真提供:藍染坐忘)

藍染めを知らない方には、ちょっと高価に感じられることもあるようですが、工程での手間暇を知っている方だと、「安すぎない? 本物なの?」と疑われることもあるほどです。

天然の藍染めの染液を作るまで、作業の工程や藍の管理にかなりの手間と労力がかかりますし、一枚一枚風合いを確かめつつ職人が手染めをするため、一度に作れる数が限られるという事情もあります。

色落ちを心配し「もったいなくて身につけられない!」と懸念される方もいますが、最初のお手入れだけ気をつけていただければ、発色も長持ちしますよ。使いはじめの2~4回はぬるま湯での手洗いをおすすめします。長い年月をかけて使い続けることで生まれる風合いも楽しんでほしいので、ぜひどんどん使ってくださいね。

水と暮らす編集部

使っていって色が薄くなれば染め直しも可能だとのこと。藍を身につけながら育ててみたくなりますね。熊谷さん、ありがとうございました!

 

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