ゆず風味の卵とは?電子イオン水と海洋深層水で飼育するヤマサキ農場
高知県で養鶏を営むヤマサキ農場では、卵の独特の生ぐささと雑味を取り除いた『桃太郎たまご』や、ゆずの皮を鶏に与えて飼育することで、ゆずの香りがする『ゆずたま』といった自社オリジナル卵を開発し生産しています。
こだわりのポイントは水と飼料で、水は電子イオン水と、海のミネラルを豊富に含んだ室戸海洋深層水を、飼料には厳選した素材を自社配合したものを使用しています。卵嫌いの人も「おいしい」と絶賛する卵の開発秘話に迫ります。
トップの画像は、ヤマサキ農場の卵(写真提供:ヤマサキ農場)
鶏の飲み水を変えてわかった水の大切さ
- 水と暮らす編集部
-
ヤマサキ農場の卵はどんな卵なのでしょうか?
- 山崎さん
-
卵の生ぐささがなくコクのある『桃太郎たまご』と、ゆずがほのかに香り卵くささのない『ゆずたま』がメインで、卵好きの方にはもっとおいしく卵嫌いの方にもおいしいと言って食べてもらえるような商品を生産しています。
現社長は実兄で創業者は私たちの祖父なのですが、 創業者の祖父が「健康な鶏が良い卵を産む」といっていたのをずっと聞いて育ち、私たちもそれを引き継いで、鶏に与える飼料と水にこだわって鶏の健康に気をつけて飼育しています。
- 水と暮らす編集部
-
飼料と水はどのような点にこだわっているのでしょうか?
- 山崎さん
-
まず飼料は、創業当時から自家配合をしております。一般的な養鶏場では、飼料の販売会社が配合したものをそのまま鶏に食べさせますが、弊社では飼料の素材を選んで独自に配合したものを鶏に与えています。
飼料のベースは、アメリカから輸入している遺伝子組み換えをしていないトウモロコシです。輸送中にトウモロコシが劣化しないように農薬を散布することがあるんですが、弊社では“ポストハーベストフリー”という収穫後農薬を使わないものを購入しています。
卵に粘りやコクがもっと出るようにゴマや海藻なども自社で配合していますよ。手間はかかりますが、やはり鶏はその方が元気になるんです。
水に関しては、電子イオン水と高知県の室戸海洋深層水を使用しています。電子イオン水というのは、水道水に電子チャージしたマイナスイオン濃度が高い水だと、メーカーがいっています。海洋深層水は、太陽の光が届かない深いところにある海水から作られる水で海のミネラルを豊富に含みます。
創業当時は特別な水は使っていなかったのですが、水を変えると変化がありました。
- 水と暮らす編集部
-
水はどういうきっかけで変えたのでしょうか?
- 山崎さん
-
以前は会社隣の小川の、農業用水を鶏に飲ませていました。あるとき、渇水が続きまして小川の水がなくなってしまったので、人間用の上水道の水をあげるようになりました。2年渇水が続いた後は農業用水の使用をやめまして、鶏に飲ませるために施設に水道を直結しました。
電子イオン水を使うようになったのは、取引先である地元のスーパーマーケットの社長からの提案でした。電子イオン水で育てた卵ならオリジナルブランドとして販売をしていただけるということでしたので、鶏に与えるようになりました。もともとある上水道に設備を取りつけるだけですぐに取り組むことができたのもよかったんです。
- 水と暮らす編集部
-
海洋深層水はどうして使うようになったのでしょうか?
- 山崎さん
-
高知県では室戸の海洋深層水に力を入れていますので、試験的に鶏に与えてみたんです。すると卵の白身の粘りが良くなり、これは良いということで採用することにしました。
海水はミネラルが豊富ですから日常的に体に取り込むのはやはり良いんだなぁと思いました。電子イオン水や海洋深層水を取り入れ始めたのは、兄が社長に就任した1990年なので、水のおかげで創業時よりもさらに進化しました。
卵の硫黄臭を解決した「ゆず」
- 水と暮らす編集部
-
通常の卵と比べると味もやはり違うのでしょうか?
- 山崎さん
-
違います。第三者機関で『桃太郎たまご』と『ゆずたま』の味について調べたことがあるのですが、通常の卵と比べて弊社の卵は“コクとうま味が濃厚だが、後味のキレ感があり食べやすい卵”であることがわかりました。
それでも弊社としては、もっとおいしい卵を目指して独特のにおいをなくせないかと苦労してきました。というのも、においにかなり敏感で卵が食べられない友人がいまして、「桃太郎たまごはうまいやろが?」と言ったら「これもいかん」と言われまして……。私はまったくそのにおいを感じないんですがね。
- 水と暮らす編集部
-
どんなにおいでしょうか?
- 山崎さん
-
卵にはもともと2種類のにおいがあるんです。ひとつは、白身の生ぐささです。このにおいは試行錯誤の中で取り除くことに成功したので、雑味がなくなりスッキリとした味わいになり、すごくおいしくなりました。それが『桃太郎たまご』です。
もうひとつ、ゆで卵にしたときにわかりやすく感じる硫化硫黄のにおいがあります。これはなかなか消すことができなくて難しかったんです。
また『桃太郎たまご』をメインで売り出していたのですが“もっと特徴のあるものでみなさんから本当においしいと言ってもらえるような卵を”と考えていた中で、ヒントになったのはテレビで紹介されていた 「みかんブリ」でした。
- 水と暮らす編集部
-
「みかんブリ」とは何でしょうか?
- 山崎さん
-
みかんの皮を与えて養殖した愛媛県のブリで、身の生ぐささが軽減できた上に、みかんの香りもするようになったのだそうです。そこで卵のにおいも同じようにして解決できないかなと思ったんです。
しかしみかんは高知の特産ではありません。そこで同じ柑橘系ということで、ゆずを使ってみることにしました。
ゆずの生産は高知県が日本一なんです。特にゆずで有名な馬路村(うまじむら)では、ちょうど鶏が食べやすい形状で、製菓用に作られた顆粒状のゆずの皮がありました。さっそく仕入れて鶏に与え試行錯誤すると、独特の卵ぐささがなくなったうえにゆず風味の卵になり、ずっと苦戦していた硫化硫黄のにおいもなくなったのです! この卵が『ゆずたま』です。
先ほどの卵嫌いの友人にも食べてもらったところ、「『ゆずたま』は卵臭さがなくて本当においしい」といって食べてもらうことができたんです!
『ゆずたま』オススメの3つの食べ方
- 水と暮らす編集部
-
「『ゆずたま』はどうやって食べるとよりおいしさを味わえるんでしょうか?
- 山崎さん
-
まずは卵かけご飯ですね。醤油をかける方が多いかもしれませんが、塩のみがいいですよ!というのも、醤油は刺身でも使うように生ぐささを消すのに抜群ですが、この卵は生臭さがありませんので何もかけなくてもいいくらいなんですよ!
もうひとつは卵チャーハン。火を通してもゆずの風味が味のアクセントになり、塩こしょうのみで十分おいしくなります。
溶いた生の『ゆずたま』に、しゃぶしゃぶした肉をつけて食べても抜群です。ゆずの香りが豚の脂っぽさを落としてくれるのがポイントです。
まとめ
-
水と飼料にこだわってさまざまな試行錯誤の努力で生まれた『桃太郎たまご』と『ゆずたま』。特に『ゆずたま』は、ヤマサキ農場だけのオリジナルです。おいしさを極めて開発された逸品を食べてみませんか?
ヤマサキ農園