
霧島連山の湧水が作り出す美しい町・湧水町の魅力
鹿児島県北部にある湧水町は、霧島連山から流れる透明できれいな水が豊富に湧き出る水の町です。
日量約6万トンもの水量を誇り、環境省の「名水百選」に選ばれている「丸池湧水」や、湧水で「そうめん流し」を楽しめる「竹中池公園」、「日本棚田百選」に選定されるほどの景観が美しい「幸田(こうだ)の棚田」など、水によってさまざまな町の見どころが生み出されています。
今回は、湧水町役場の田﨑優太(たざき ゆうた)さんに町の魅力について教えていただきました。
トップの写真は、竹中池。(写真提供:湧水町役場)

湧水町の豊富な湧水とは?

- 水と暮らす編集部
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湧水町では豊富な地下水が湧き出ていると聞きましたが、どういった湧水なのでしょうか?
- 田﨑さん
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町の湧水は、霧島山系の山々に降った雨水が約35年の月日をかけて地下でろ過されて流れてくる湧き水で、とても透明度が高く澄んだきれいな水なんですよ。
町の湧水スポットとしては大きな池が2つあります。まず名水百選に選ばれている丸池湧水では日量約6万トンも湧き出ていて、上水道や灌漑(かんがい)用水、生活用水の貴重な水源となっているんです。水くみ場としても有名で、湧水をくんで持ち帰る人も多いですよ。
もうひとつは竹中池です。水源となる日量約9万トンの水は、稲作用の農業用水に使われ、米の生産が行われています。竹中池近くの、熊野神社にある湧水の場所にも、立ち寄る人がいます。
- 水と暮らす編集部
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水の味や質はどうでしょうか?
- 田﨑さん
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水質硬度48mg/Lで軟水といわれる水です。のど越しがまろやかな感じがします。ミネラルのシリカが含まれているのがポイントで、美容や健康を意識する有名人やスポーツ選手たちの間ではやっているような成分です。
水自体は『丸池湧水』という商品名で、ペットボトル販売もしています。お茶やコーヒーにするにもすごく相性が良くて、飲みやすいお水なんですよ。

良質な湧水が生み出す町の見どころ

- 水と暮らす編集部
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他にも、良質な水を生かして作っている商品はあるのでしょうか?
- 田﨑さん
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『かごしま湧水米』というお米は、ミネラルが豊富な丸池湧水や筒羽野(つつはの)疎水を利用して栽培されています。加えて、湧水町は昼夜の寒暖差が大きく、お米作りに適した盆地なので、いいお米ができるんです。
粒が白く光っていて、食感はもちもちとして甘みを感じます。おいしいですよ。
他にも、幸田の棚田で栽培された特別栽培米の『棚田米』があります。こちらも粘りや光沢があっておいしいのですが、さらにこのお米を使った日本酒『幸寿(こうじゅ)』も作っています。鹿児島は焼酎の方が有名ですが、県初の日本酒ということで、町の特産品として宣伝しているんです。

- 水と暮らす編集部
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町の湧水はおいしいお米やお酒を作り出しているんですね。特産品とは別で水にまつわるスポットはありますか?
- 田﨑さん
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日本棚田百選に選ばれた幸田の棚田には、昔ながらの日本の原風景が残っていて見応えがあるんですよ。田植えシーズンになると、緑が映えて景色がすごく良いんです。
江戸時代中期に作られた棚田の周りの石積みは、反りのある造りが特徴的なのでこちらも見てもらいたいですね。
その他、竹中池がある竹中公園には、「そうめん流し」が楽しめるお店があります。

- 水と暮らす編集部
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「そうめん流し」とは、縦半分に割った竹を使って水でそうめんを流す「流しそうめん」とは違うのですか?
- 田﨑さん
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各テーブルの真ん中に水の入ったドーナツ型の装置があるので、その中にそうめんを入れてすくって食べるというものです。
水はもちろん湧水を使っています。初めて来られる方はびっくりされるのかなと思います。僕もここに来て初めて「そうめん流し」を見たので。家族や友人同士で来られて、テーブルごとに「そうめん流し」を楽しまれていますね。
それと、初夏にかけては丸池湧水や竹中池の近くでホタルが見られます。それだけ水がきれいだからこその景色だなと思います。

アートやSLも見学できる湧水町

- 水と暮らす編集部
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田﨑さんは関東からの移住組だそうですが、湧水町はどんな町ですか?
- 田﨑さん
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まだ町に来たばかりで1年も住んでいないのですが、水に恵まれている町だなという感じがまずあるのと、町の人たちの温かさをすごく感じます。
町は南部の栗野と北部の吉松という地域に分かれているんですが、丸池湧水がある栗野という地域の一部にはお店やスーパーなんかが並んでいますが、そこを越えるとほとんど山や田んぼ、畑なので、本当に自然が多いですね。季節に応じた桜や紅葉といった景色が楽しめるのがすごくいいなと思います。
- 水と暮らす編集部
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湧水町は芸術にも力を入れているそうですね。
- 田﨑さん
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はい。湧水町ならではの施設が、『霧島アートの森』という森の中にある野外美術館です。一般的な美術館は室内で作品を楽しむイメージですが、ここは敷地がすごく広くて、屋外にも彫刻などの展示物がたくさんあるので、ピクニックのような気分で歩いて楽しめる美術館です。子どもも大人も飽きないと思いますよ。
その他、かつて鉄道の町として知られた吉松エリアには鉄道資料館があり、SLが展示されています。めずらしいかと思うのでアピールポイントのひとつです。
まだ行けていないんですが、吉松エリアの魚野峠ではパラグライダーの体験ができるところがあるのでやってみたいなと思っています。水が作り出している湧水町の魅力はたくさんありますが、芸術やSLなどいろんな面でも楽しめる町ですよ。
まとめ
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湧水町はとても水が美しい町だなと感じました。丸池湧水や竹中池は底まで見えるほど水が透明だとのことですが、写真だけ見ても水源が本当に澄み切っていることがわかり、特に水の鮮やかなブルーが印象的でした。
霧島連山の地下で35年の歳月を経てろ過されるからこそ作り出される、貴重な自然の恵みなのでしょう。いつか実際に湧水町に行って見ることができたらいいなと思いました。
