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200年の歴史を誇る「天星酒造」が生み出す、超軟水を生かした芋焼酎

2021.07.26

国内屈指の焼酎王国であり、芋焼酎発祥の地としても知られる鹿児島。
大崎町菱田にある天星酒造は、超軟水を使ったまろやかな味わいが特徴の、芋焼酎をつくり続けています。
昔ながらの酒づくりにこだわる一方で、独自開発の「早垂れ製法」を駆使した『天星宝醇 赤』は数々の賞を受賞するほどのおいしさ。

そこで、今年で創業120周年を迎える同社の髙屋総一郎さんに、酒造りの想いや水へのこだわりについてうかがいました。

トップの写真は、天星酒造の面々。(写真提供:天星酒造)

水と暮らす編集部

火山の多い鹿児島の水は、ミネラルを多く含んでいる印象がありますが、天星酒造で使う水にはどのような特徴がありますか?

髙屋さん

菱田はいい水が出る場所として有名で、明治時代には30軒程度の酒蔵があったといわれています。今でもうなぎの産地であることが水の良さの証です。

特徴は、超軟水であること。菱田の地層は、表土の下に約80mのシラス層があり、その下に砂層が、さらにその下には砂利層があるんです。

砂層でミネラル分がろ過され、砂利層でさらに磨かれることによって、硬度25mg/L程度の超軟水になるのです。

普現堂湧水源
仕込み水の源流は平成の名水百選にも選ばれた「普現堂湧水源」。(写真提供:天星酒造株式会社)

超軟水ならではのまろやかで優しい味わい

水と暮らす編集部

超軟水と呼ばれる菱田の水ですが、味わいはどのようなものですか?

髙屋さん

まろやか、口当たりが優しい、柔らかいというのが特徴です。この仕込み水でつくる芋焼酎も同様で、蒸したてのサツマイモのようなフワッとした優しい香りやフルーティーで柔らかい飲み口がもち味です。

ですので、芋焼酎を飲み慣れていない方や、焼酎の香りが苦手な方にも好評です。

軟水を飲む様子
仕込み水に使うのはまろやかで優しい味わいが特徴の超軟水。(写真提供:天星酒造株式会社)

超軟水を用いた酒造りの難しさ

水と暮らす編集部

ミネラル分が少ない超軟水を使って焼酎造りをする上で、苦労する点はありますか?

髙屋さん

酵母や麹が活動するエネルギー源となるミネラルが少ない分、発酵に時間がかかります。そのため、温度調整やもろみの手入れ、雑菌による腐敗対策など、技術力が必要です。

温度調整や雑菌対策に配慮した仕込みに熟練の職人技が光る。(写真提供:天星酒造株式会社)
水と暮らす編集部

味わい以外にも、ミネラル分の含有量で造り方にも違いがあるんですね。

髙屋さん

焼酎の原酒はアルコール度数がだいたい38度程度で、水を足して25度程度に調整します。すなわち水が製品の1/4を占めているのですが、そのことを考えると、技術力を駆使しながら超軟水を生かした酒を造ることが当社らしさだと思っています。

水の個性を堪能できる一番人気の「呑酔楽 かめ寝かせ」

水と暮らす編集部

超軟水の味わいを一番楽しめる商品はどれですか?

髙屋さん

一番人気のベストセラーでもある「呑酔楽 かめ寝かせ」です。
新鮮なサツマイモと黒麹といった昔ながらのスタンダードな材料と超軟水で醸造し、甕壺(かめつぼ)で熟成させることで、輪をかけて焼酎がまろやかになり、口当たりの優しさがより感じられます。

「呑酔楽 かめ寝かせ」。(写真提供:天星酒造株式会社)
水と暮らす編集部

サツマイモにも特徴があるのですか?

髙屋さん

黄金千貫(こがねせんがん)という、見た目はジャガイモのような外も中も白いサツマイモです。含まれる適度な糖度とデンプンが焼酎にした時に芳醇な香りを生み出すので、焼酎造りに適しています。

水と暮らす編集部

どのような飲み方がおすすめですか?

髙屋さん

初心者でも飲みやすく、飲み方を問わない味わいですが、焼酎が好きな方は香りがより楽しめるお湯割りで楽しんでほしいですね。

受賞名酒「天星宝醇 赤」の魅力

「天星宝醇 赤」。(写真提供:天星酒造株式会社)
水と暮らす編集部

日本で唯一のウイスキー&スピリッツの品評会である「TOKYO WHISKY&SPIRITS COMPETITION 2021」にて、今年焼酎部門最高金賞を受賞した「天星宝醇 赤」の魅力を教えてください。

髙屋さん

“早垂れ”という独自の蒸留法を駆使しています。発想の源は、蒸留の際に中間だけを熟成することでアルコール度数や香りが安定する、ウイスキーのミドルカット製法です。

水と暮らす編集部

早垂れ蒸留とはどのようなものですか?

髙屋さん

蒸留のスタート直後と中間、最後とでは抽出される液体の味わいやアルコール度数に違いが出ます。そこで早垂れ蒸留では、蒸留過程で味と香りが一番良くなる早い段階だけの液体を抽出します。通常よりも半分程度しか焼酎が造れないプレミアムな製法なんです。

水と暮らす編集部

味わいの特徴はどのようなものですか?

髙屋さん

42度とアルコール度数が高めであるにもかかわらず、ストレートで飲んでも鼻につんとくる感じや、雑味の余韻が残りにくい特徴があり、角が取れた柔らかさを感じられます。

原酒は44度ですが、超軟水のまろやかさを生かし、少しだけ加水してアルコール度数を微調整しています。芋焼酎がお好きな方はぜひストレートで飲んでいただきたいです。

養豚場とタッグを組んだ水を守るための取り組み

養豚場のスタッフへサツマイモを受け渡す様子
養豚場のスタッフへサツマイモを受け渡す様子。(写真提供:天星酒造株式会社)
水と暮らす編集部

超軟水をこれからも使い続けるために、水に配慮した取り組みはされていますか?

髙屋さん

サツマイモの洗浄から出る排水を減らす努力をしています。

2年ほど前から、近くの養豚場とタッグを組んで、サツマイモの不要な部分を豚のエサにしてもらっています。

1度の仕込みでサツマイモを6トンほど使用するのですが、皮や酒づくりには使用できない部分が100kgほど出てしまいます。土がついている状態のものをエサとして活用していただけるので、排水の減量化に役立っています。

海外や若者への新しいアプローチ

水と暮らす編集部

今後さらに取り組んでいきたいことはありますか?

髙屋さん

賞をいただけた「天星宝醇 赤」は、洋酒に近い味わいと香りで、ウイスキーなどを飲み慣れている海外のお客さまから好評をいただいています。
販路の中心である空港の免税店では、お土産に買われる方が多いので、海外へのアプローチにも挑戦してみたいと思っています。

また、最近は若い世代を中心に焼酎を炭酸で割って飲む方が増えています。ウイスキーによくみられるかぐわしい香りが特徴的な樽貯蔵をした焼酎など、ハイボールのように楽しんでいただける商品開発にも注力していければと思っています。

香港での試飲販売会の様子
香港での試飲販売会の様子。今後はさらに海外展開に力を入れていく予定。(写真提供:天星酒造株式会社)

天星酒造

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