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名水の湧出地で、秋田の自然の恵みから「高清水」を造る醸造元の想い

2021.05.17

日本屈指の米どころで、奥羽山系の清らかな地下水に恵まれた秋田。美酒王国とうたわれるほど酒造りが盛んな土地です。

ここ秋田を代表する蔵元の一つ秋田酒類製造さんは、地元はもちろん全国各地で愛される、毎日飲んでも飽きない日本酒「高清水」をはじめとしたおいしいお酒を造り続けています。

伝統の技術と最新設備の導入など新たな試みをする秋田酒類製造の倍賞弘平さんに、酒造りの想いや水へのこだわりについておうかがいしました。

水と暮らす編集部

古来より酒造りには、天然水である湧き水や井戸水が適するので、酒造家はあちこち良い水を探し求めた といわれているそうですね。秋田酒類製造さんでもそのような経緯があれば教えてください。

倍賞さん

弊社は1944年に24の酒造業者が合同で立ち上げた会社です。その後、約半数が独立するなどして12蔵が残り、現在に至ります。
戦後の新体制のなか、お酒の需要が増え、生産が追いつかないので工場を新たに作る必要に迫られました。

改めて良い水源を探し、本社蔵がある秋田市川元に移転しました。

元々、秋田は水に恵まれた土地ですが、川元は、雄物川、旭川、太平川、3つの川が集まるところです。鉄分が少し多くて飲むのに適していない場所も多くありますが、このあたりは地盤が硬いのです。この硬い地盤にろ過されて、ちょうど良い水に恵まれているのではないかと思っています。

水と暮らす編集部

少しずれるだけでも違いが出るのですね!

藩主佐竹候が、お茶会のために水を汲んだ逸話が残る土地

水と暮らす編集部

旧秋田藩主・佐竹公の御用井戸と水脈を一つにするといわれる敷地内の井戸水をお使いとのことですね。

倍賞さん

本社蔵のすぐ近くに市立秋田総合病院がありますが、ここの車出口付近に「瓊宮(たまみや)神社 功徳(くどく)水井戸跡」という秋田市指定有形文化財があります。弊社も、この佐竹公の御用井戸と水脈を一つにする敷地内の井戸水を使っていることになりますね。

おいしい天然水がくみ上げられる蔵の井戸
おいしい天然水が組み上げられる蔵の井戸。(画像提供:秋田酒類製造)

酒造りにふさわしい天然水の恵み

水と暮らす編集部

日本酒の約8割は水で日本酒造りにはおいしい水が重要だそうですが、こちらのお水は具体的にどんな水なのか教えていただけますか?

倍賞さん

硬度49.7の軟水ですが、秋田市の水道水と比べるとやや硬度は高いです。ただし軟水ですので、口あたりはやわらかいお水です。

酵母を大量に純粋培養させる酒母(しゅぼ)
酵母を大量に純粋培養させる酒母(しゅぼ)。この後、仕込み水として井戸水を使用する。(画像提供:秋田酒類製造)
水と暮らす編集部

こちらの水は、どういった点が酒造りに合う水なのでしょうか?

倍賞さん

マグネシウムやカルシウムなどミネラルが豊富で、鉄分は少なめです。鉄分が少ない水というのは、お酒造りには欠かせない条件ですね。鉄分が多いと色づいてしまい、香味も悪くなってしまいますから。

また、ナトリウムや塩素イオンが多いです。海水がどこかの伏流に含まれているのかもしれませんね。酒造りには、原材料の米が充分に溶ける必要がありますが、塩素イオンやカルシウムを含んでいると溶けやすいのです。

また、カリウムも多めなのですが、こちらは酵母の増殖に影響します。アルコールがたくさん出て、やわらかく、うまみとふくらみのバランスがいいお酒ができます。

このおかげで、飲み飽きしない、毎日飲めるお酒をお届けできていると思いますよ。

アルコール度数を調整するための「加水」前の原酒
アルコール度数を調整するための「加水」前の原酒。(画像提供:秋田酒類製造)

基本を大事にするのが品質を保持する秘けつ

水と暮らす編集部

技術の伝統保持のために大事にしていることは何でしょうか?

倍賞さん

弊社は社員以外に、冬だけ来ていただく蔵人さんが25名ほどいらっしゃいます。農家とか大工の方など、長い方で30年以上いる方も。基本を大事に、毎日の仕込みや清掃など決められたことをしっかりこなす、当たり前のことを当たり前にやることですかね。これが品質の保持につながります。

ただ、杜氏や蔵人はそれぞれが大事にしていることも変わると思います。例えば本社蔵は最新の技術を取り入れて新しい試みもしていますが、弊社の「酒造道場 仙人蔵」や「御所野蔵」など蔵でまた異なります。お酒は酵母が造るものなので、その環境を整え、五感を大事にしているという考えもありますね。

仕込み水をいれて造る様子
酒母(しゅぼ)、麹(こうじ)、蒸米(むしまい)に仕込み水をいれて造る、発酵中の液体醪(もろみ)。(画像提供:秋田酒類製造)

水のおいしさを感じる日本酒を呑んでみよう

水と暮らす編集部

お話をおうかがいしていると、高清水さんのお酒をいろいろ呑んでみたくなりました!倍賞さんのおすすめはありますか?

倍賞さん

お酒は冬によく飲まれますが、実は春夏もおもしろい製品がたくさんあります。「春の純米」「夏の純米」など、季節限定ものもぜひ試していただきたいですね。

また、全国新酒鑑評会は毎年5月にあるので、そこで賞をとった高級なお酒も出回ります。そういうお酒との出会いで、日本酒のイメージがガラっと変わることもあると思いますよ。

最近は、自宅でもっと気軽に日本酒と料理を楽しんでいただきたいと、この3月から弊社で「涼凛」という日本酒も発売しはじめました。アルコール度数が13.5と低めで、すっきりした口当たりです。現在は家飲みの機会も増えていると思いますので、おうちでもぜひ楽しんでほしいですね。

水と暮らす編集部

デザート日本酒「デザート純吟」や木苺酒「Sour Sweet Lips」のようなお酒も出されているのですね!

倍賞さん

こちらは、弊社の女性が女性も楽しめる新たな日本酒のカテゴリを作ろうと開発に関わったものです。独特の上品な甘さがありますよ。

高清水は普通酒のイメージが強いかと思いますが、地酒屋さんと相談したり、多彩なアイデアを出し合ったりしていろいろと新しい展開もしています。

全国の酒屋さんやスーパーで手に入る商品も多いですが、オンラインショップではさまざまな商品展開をしているので、ぜひ試してみてくださいね。

飲み比べセット
飲み比べセットの販売もしている。(出典:高清水公式サイト)
水と暮らす編集部

コスメも展開を始めているのですね。こちらも良いお水が使われているのでしょうか。

倍賞さん

こちらは高清水の純米酒(コメ発酵液)を配合しています。弊社の日本酒を使用していますので、間接的ですがそうなると思います。化粧水や乳液、フェイスマスクなども展開していますよ。

日本酒の成分を生かした高清水化粧品のコスメ「酒屋のスキル」「Komell」のラインナップ
日本酒の成分を生かした高清水化粧品のコスメ「酒屋のスキル」「Komell」のラインナップ。(画像提供:秋田酒類製造)
水と暮らす編集部

これは秋田美人に近づけそうですね!ありがとうございました!

まとめ

  • 高清水の倍賞さんには、良質な酒造りには適したおいしい水との出会いが重要ということをお教えいただきました。
  • 高清水では、水や米の自然の恵みを伝統技術で大事にし、おいしいお酒を安定供給しているとのこと。
  • また、新ジャンルの酒やコスメの開発など新しい試みも魅力的な酒造でした。

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