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【2022年7月最新】日本にいるラッコは3頭だけ!?いなくなる理由とは?ラッコマップ付き

2022.07.22

つぶらな瞳で貝をカチカチと叩く仕草が愛くるしい、水族館のアイドルラッコ。そのかわいらしい姿からファンが多いラッコですが、今後日本の水族館で見られなくなるかもしれない危機が迫っていることをご存知ですか?

実は、今日本で飼育されているラッコは3頭だけ

この記事では、ラッコが見られる水族館マップとともに、水族館で会える3頭のラッコをご紹介。なぜ今後ラッコが日本の水族館で見られなくなるかもしれないのか、その理由にも迫ります。

 
向かって左がキラ、右がメイ
向かって左がキラ、右がメイ。(写真提供:鳥羽水族館)

現在、唯一2頭のラッコを同時に見られるのは、三重県にある鳥羽水族館。日本で最も飼育生物の種類数が多く、その数は約1200種類。1955年に開館した鳥羽水族館は、実は日本で初めてラッコの赤ちゃんが誕生した場所でもあるんです。

ラッコと縁の深い鳥羽水族館では、現在2頭のラッコを飼育中。それぞれのラッコの特徴について、飼育研究部の石原良浩(いしはらよしひろ)さんにおうかがいしました。

ラッコのプロフィール

メイ
(写真提供:鳥羽水族館)

名前:メイ
性別:メス
生年月日:2004年5月9生まれ
年齢:17歳
特技:イカミミジャンプ

キラ
(写真提供:鳥羽水族館)

名前:キラ
性別:メス
生年月日:2008年4月21日
年齢:13歳
特技:お客さんに手を振る

水と暮らす編集部

2頭のラッコを飼育されていますが、それぞれの特徴やチャームポイントを教えてください。

石原さん

鳥羽水族館では、「メイ」と「キラ」2頭のラッコを飼育しています。メイはここ鳥羽水族館出身で、鼻に白い傷跡があるのが特徴です。髭が短く、全体的にほっそりとしたシャープな子ですね。

ラッコという動物は年齢とともに体の一部が白くなっていく特徴があるので、キラよりも白い部分が多いのも特徴です。動きが非常に活発ですごく頭が良いのですが、神経質な一面もあります。

キラは、メイと比べると少しふっくらして見えます。物事に動じないおっとりとした性格なので、見た目も性格も正反対な2頭になります。キラは自由きままに動き回る子で、いつもメイが後ろをついて回っています。

水と暮らす編集部

性格が正反対だからこそ、相性が良いのかもしれませんね。それぞれ特技を持っていると聞いたのですが、どのようなことをするのですか?

石原さん

健康管理の一環で、さまざまな動きのバリエーションを覚えさせています。いろんなことができるのですが、メイが注目されている動きは、二足歩行や水中でクルクルと回る高速スピンです。キラはお客さんに手を振ったり拍手をしたり、プールの底に落ちているものを拾ったりするのが得意ですね。

水と暮らす編集部

そのほかお客さんに喜ばれるのは、どのような行動でしょうか?

石原さん

食事タイムは特に人気ですね。メイはエビやカニ、貝類などなんでもよく食べますが、唯一サケだけが嫌い。キラは好き嫌いが多く、イカや貝しか食べません。

食事に限らず、いつどんな時間でもいろんな表情が見られておもしろいのがラッコです。毛づくろいをする姿を楽しんだり、陸で寝るのを待つお客さんもいたりしますよ。

水と暮らす編集部

飼育するなかで、大変なことなどはありますか?

石原さん

ラッコは健康管理が難しい動物です。毛で断熱しているため、毛が汚れると凍えてしまいますし、興奮すると逆に熱を逃せなくなり、高熱を出した状態になります。血液検査のための採血も興奮させてしまうのでできません。とにかく常日ごろから観察し、すばやく異常を察知しないといけないところが、非常に難しい部分ですね。

水と暮らす編集部

飼育員さんたちの支えがあって、かわいいラッコの姿を見られるのですね。最後に、鳥羽水族館へいらっしゃる方にメッセージをいただけますか?

石原さん

日本で唯一飼育しているジュゴン、巨大なアフリカマナティーをあわせての2種を同時に飼育展示しているのは、世界でも鳥羽水族館だけになります。また、サンゴ礁や世界の川などの環境をそのまま再現した巨大な環境水槽も見どころです。

12のテーマにゾーン分けされた館内は、順路を気にすることなく好きなところから見られるので、ご家族で過ごしやすいと思います。ぜひ足を運んでみてください。

鳥羽水族館
(写真提供:鳥羽水族館)

鳥羽水族館
〒517-8517三重県鳥羽市鳥羽3-3-6
JR・近鉄「鳥羽駅」から徒歩約10分
鳥羽水族館公式サイト

大きな鼻がキュート! マジメで優しいリロに会える「マリンワールド海の中道」

福岡県に位置するマリンワールド海の中道で暮らすのが、大きな鼻がとってもキュートなラッコ「リロ」。海洋動物課の秋吉未来(あきよしみき)さんに、リロの特徴やかわいらしさについておうかがいしました。

ラッコのプロフィール

リロ
(写真提供:マリンワールド海の中道)

名前:リロ
性別:オス
生年月日:2007年3月30日
年齢:14歳
特技:カラーコーンを持って泳ぐ

水と暮らす編集部

リロの外見の特徴やチャームポイントを教えてください。

秋吉さん

リロは横に広い大きな顔と大きな鼻が特徴のラッコで、とってもまじめで優しい性格です。

ビックリしやすい性質もあり、初めての物を見た時や、掃除で長い柄の網を持って入る時など、水面で飛び上がるほど驚くことがあります。普段は大人しいのにリアクションは大きいというギャップがチャームポイントですね。

水と暮らす編集部

普段はどのような過ごし方をしていますか?

秋吉さん

暇な時間があるとアクリルガラスをバンバン叩いて遊んだり、プールの底に沈んだカラーコーンを好きな時に持って泳いだりしています。

食事では、魚が大嫌い。今まで飼育してきたラッコたちは、サケやホキなどの魚を食べていましたが、リロは魚には一切手を付けません。イカや貝類のみ、おいしそうに食べていますよ。

水と暮らす編集部

リロの飼育で気をつけている点などはありますか?

秋吉さん

やはり毛の管理が大事です。清掃時、ラッコ以外の海洋哺乳類を飼育するプールには塩素を使用し、プールの清掃を行います。しかしラッコは塩素にふれて毛が痛み、上手にグルーミングができなくなると、体温を維持することが難しくなるため、清掃の際は、別のプールにラッコを移動して行っています。

またケガには、特に気をつけています。前肢にケガをしてしまうと、グルーミングをすることができなくなることもあるので、給餌の際は必ずケガの有無とグルーミング状態を確認するようにしています。

水と暮らす編集部

繊細で気を使う部分が多いのですね。最後に、マリンワールド海の中道の楽しみ方、見どころを教えていただけますか?

秋吉さん

当水族館では「九州の海」をテーマに、350種約2万点の生き物を展示しています。屋外エリアの「かいじゅうアイランド」ではイルカ、アシカ、アザラシ、ペンギンといった海獣類を間近にご覧いただけます。博多湾をバックにしたイルカアシカショーや、2万匹のマイワシが群泳する大水槽でのダイバーショーなどが見どころです。

荒波が打ち寄せる「玄海灘」、日本最大の干潟「有明海」など九州の多様な美しい水環境を再現していますので、九州の自然や海洋生物をぜひ楽しんでください。

マリンワールド海の中道
(写真提供:マリンワールド海の中道)

マリンワールド海の中道
〒811-0321福岡市東区大字西戸崎18-28
JR香椎線「海ノ中道駅」から徒歩約8分

マリンワールド海の中道公式サイト

【専門家に聞いた!】日本の水族館からラッコがいなくなる!? その理由と解決策は?

野生のラッコ
野生のラッコ。(写真提供:北の海動物センター)

1982年から飼育が始まり、一時期は122頭が飼育されていたラッコですが、現在日本の水族館で見られるラッコは、ここまでご紹介した3頭のみ。

なぜここまでラッコが減少してしまったのか、日本の水族館でラッコが見られなくなる日が来てしまうのか……。北海道の海の哺乳類をメインに、調査・研究・啓蒙普及活動をしている NPO法人北の海動物センターの小林万里(こばやしまり)さんにお話をうかがいました。

水と暮らす編集部

現在日本で飼育されているラッコは4頭のみということですが、なぜラッコが減少しているのでしょうか?

小林さん

断熱性が高いラッコの毛皮を求めて、乱獲された過去があり、国際自然保護連合(IUCN)にて絶滅危惧種に指定されています。ワシントン条約で国際的な取引が規制され、米国が輸出禁止策を打ち出した1998年からは、新たなラッコを国内に入れられない状況にあります。

日本でもラッコの捕獲が法律によって禁止されているため、繁殖以外の方法でラッコを増やす方法がないということが、日本のラッコ減少の理由です。

水族館でも繁殖の努力をされていましたが、現在飼育されているラッコは高齢になり、繁殖も難しいようです。

ラッコの親子
調査時に発見したラッコの親子。(写真提供:北の海動物センター)
水と暮らす編集部

海外から輸入ができず、繁殖も難しい今の状況では、減っていく一方ということなのですね。野生のラッコに関しては増えているのでしょうか?

小林さん

ロシアから北海道にかけて生息するアジアラッコは個体数を増やしており、私たちの調査の最中に姿を見ることが多々あります。アメリカではサンクチュアリ(自然保護区)で保護活動していますし、ラッコの数は増えているといえそうです。

水と暮らす編集部

日本でも同じように保護活動を行うことはできないのでしょうか?

小林さん

日本は漁業大国ですので、なかなかアメリカのようなサンクチュアリ(自然保護区)を作ることは難しいですが、今増えている個体を守る必要はあります。

野生個体が群れからはぐれたり海岸に漂着したりする可能性はあり、それを保護するにも、飼育・保持するにも、水産庁の許可が必要です。そのため、水産庁の判断によって、今後どのような保護活動ができるかどうかが変わってくると思います。

ラッコは絶滅危惧種で希少な動物なので、保護して海に帰す。あるいは水族館で飼育して、どのような生き物か知ってもらうのもひとつの選択肢だと思います。

一方で、アザラシのように漁業被害を出す生物は駆除されている現実があります。希少動物は助けて、他の動物は駆除するというのは、おかしいと思う人もいるでしょう。

一個の命を助けることだけではなくて、生態系のなかでの調整や、人間との軋轢(あつれき)について啓蒙・普及していくことが重要だと思います。

保護ができるようになったとしても、意図的に捕獲したにも関わらず「弱っていた」と言えば保持できてしまうため、乱獲が始まってしまう危険性もあります。

だからこそ、保護についても慎重にならざるを得ないのだと思います。

水と暮らす編集部

簡単に解決できる問題ではなさそうですね。最後に海動物の専門家として、伝えたいことはありますか?

小林さん

海の中を私たち人間は見ることができません。しかし、温暖化で獲れる魚の種類が変わるなど、今すごく大きな変化が起こっています。広大な海が変化すると、私たちの生活にも大きな影響を与えるので、自然環境、海を大切にしてほしいと願っています。

水族館は子どもたちに夢を与える場所ですし、神秘的な海の生物を見ることで、勇気、やる気などを与えてくれることもあります。その機会を失わないように、私たちは海を大切にする活動をしていきますので、みなさんも海の大切さを意識して生活していただけるとうれしいです。

NPO法人 北の海動物センター

まとめ

かわいらしさの裏に、深刻な問題を抱えているラッコたち。
今回ご紹介したラッコが見られる水族館に訪れていただき、ラッコのかわいい姿に癒されつつも、自然環境や生態系についての理解を深めていただきたいと思います。