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主要原料すべて北海道を実現させた、さくら食品の誇る唯一無二のアイス

2021.08.24

1985(昭和60)年に水道施設の百選である『近代水道百選』に選ばれたことがある水を使い、北海道・小樽で60年以上アイスを作り続けているさくら食品株式会社。地元の原料で作ったアイスを全国に送り届け、数多くの人々に北海道の良さを伝えています。

水に恵まれた土地だからこそ作れるアイスのおいしさから、自社が誇る高級アイスの誕生秘話まで、品質管理を担当する和泉征寛(いずみまさひろ)さんにお話を聞きました。

トップの画像は、さくら食品の外観。(写真提供:さくら食品株式会社)

仕込み水を使う仕込み室
仕込み水を使う仕込み室。名水と名高い水が水道から供給されている。(写真提供:さくら食品株式会社)
水と暮らす編集部

さくら食品さんでお使いの小樽のお水は、どんな特徴があるんでしょうか。

和泉さん

近くを流れる勝納川(かつないがわ)を上っていくと、奥沢という浄水場がありまして、そこの水は近代水道百選に選ばれているほどキレイな水なんです。小樽市で一番、道内で三番目に古い浄水場でした。

昔はこの近くにたくさんの酒蔵がありました。酒蔵があったということは、杜氏(とうじ)の方々が場所を選ぶ際に「この地域の水がいい」という理由が決め手だったからなんですよね。

実際、弊社も昭和30年代まで、ここから少し離れたところでさくら食品の前身となる会社を経営していたんですが、酒蔵「北の誉」の跡地に移転してきたんです。当時は、お水を使ってジュースやかき氷を作っていました。

水と暮らす編集部

小樽はお水以外に、果物や乳製品などのいい材料が手に入りやすい土地ですしね。

和泉さん

そうですね。近隣に牛乳メーカーもありますし、土地に合わせて作るものが変わっていったんでしょうね。

水と暮らす編集部

さくら食品さんで使われているお水は、浄水場から水道管を通って送られているお水なんですよね。キレイなお水が水道の蛇口から出るというのは、じつに恵まれていますね。

和泉さん

一般家庭のお水もそうですから、この地域に住む方々はかなり恵まれていますね。炭酸ガスと酸素が絶妙なバランスで含まれていて、ミネラルもある。その昔は、奥沢水源(奥沢ダム)の水をペットボトルで販売していたほどだそうです。

残念ながら、近代水道百選に選ばれた奥沢ダムは2011年に老朽化のため廃止になってしまったんです。ただ、それに代わる浄水場から、今でも同じ水が供給されています。

アイスの成分、じつは60%を水が占めている

石造倉庫の内部にあるアイス工場
石造倉庫の内部にあるアイス工場。(写真提供:さくら食品株式会社)
水と暮らす編集部

さくら食品さんの公式HPで「アイスの成分の60%はお水である」と記載がありましたが、アイスの材料はほとんどが牛乳だと思っていたので驚きました。

和泉さん

アイスの作り方にもよりますが、少なくとも40%の水は必要です。うちでは60%くらいですね。

水と暮らす編集部

さくら食品さんがアイスを作る際に使っている水はもちろん、その他の材料である牛乳、砂糖、卵などすべて北海道産だそうですね。

和泉さん

はい。弊社の場合、道内よりも本州のお客さまの方が多いんですね。弊社は小売よりも卸業がメインなので、商品はほぼ本州に出荷しています。そこで買い手に商品の良さを訴求するためには、すべて北海道産のもので作ったアイスである必要もあって……。弊社は小さい規模の会社ですので、大手のメーカーさんとの違いを出すためには個性が必要ですし、道産にこだわり続けています。

水と暮らす編集部

では北海道産の材料を使ったアイスにとって、地元のお水の良さが生かされているのはどんなところなんでしょうか。

和泉さん

これは食べた人が具体的にわかることかどうかは不明なんですが、弊社のHPに書かれているように社長の体験談によると、他社に委託生産したものと弊社で作ったものを販売していたとき、「全然味が違う」とお客さまからクレームがきたそうなんです。

水と暮らす編集部

味や舌ざわりなど、わずかな違いがわかる人にはわかるんですね。

和泉さん

香りの違いもあるのかもしれません。使った材料から作り方からすべてチェックしましたが、唯一違っていたのは「水」だったそうです。

主要原料の水、牛乳、砂糖、卵の北海道産が実現!胸を張りたい高級アイス

仕上がったアイスを流し込む充填機
仕上がったアイスを流し込む充填機。キレイな水は味の決め手になっている。(写真提供:さくら食品株式会社)
水と暮らす編集部

今や同じバニラアイスにもたくさんの種類があり、好まれるタイプの傾向も年々変わっていっています。それでも製造過程や素材を変えずにアイスを作り続けてきた中で、もっとも苦労されたことや、うれしかったことはどんなことですか?

和泉さん

弊社で一番高級なアイスクリームにまつわる話なんですが、アイスクリームといっても “アイスミルク”や“ラクトアイス”など種類がある中で、アイスクリームはコクを出すために乳脂肪分を多くするうえに、上質な卵黄が必須なんですね。北海道産を銘打っていこうと思って作り始めた矢先、どうしても道内で卵が手に入らず、表記も「日本産」になってしまったんです。それが、キユーピータマゴさんから北海道産の卵が手に入ることになり、2010年から晴れて「主要原料はすべて北海道産」と言えるようになったんです。これは、ちょっと胸を張っていいかなと思える出来事でした(笑)。

水と暮らす編集部

すべての材料をそろえるのはなかなか難しいことですよね。むしろ胸を張るべきことだと思います!さくら食品さんは2021年で創業61年となりますが、会社のモットーとしていることはどんなことなんでしょうか。

和泉さん

社長は「真面目にやれよー」くらいしか言わないんですが(笑)。他社さんに「さくら食品はいい原料を使えててうらやましいな」と言われることが多いんです。大手になればなるほど、コストとの兼ね合いで原料を選ばなきゃいけないですから。その中で弊社の場合は社長の方針もあって、いい原料を使っておいしいアイスを作れています。これからも良質な材料を使い、おいしいものを正しく作って、みなさまに喜んでいただきたいですね。

主要原料すべて北海道産を実現した高級バニラアイス「プラチナバニラ1L」(左)、本州で人気のある「とうきびアイスモナカ」。さくら食品のアイスは、全国百貨店デパートなどで開催される北海道物産展で入手できる可能性が高い。(写真提供:さくら食品株式会社)

さくら食品

さくら食品外観

公式HPはこちら