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佐賀の最高峰、脊振山の伏流水で酒造り。大和酒造が醸す名酒の姿とは

2021.06.14

鎌倉時代に「肥前酒」が幕府に献上されていた記録が残るなど、古くから酒造りが盛んな佐賀県。本格的に酒造りが始まったのは、佐賀藩主・鍋島直正が余剰米を活用し酒造りを行うよう奨励した江戸時代末期といわれています。

そんな佐賀県を代表する蔵元・大和酒造は、「大吟醸 慶長肥前杜氏」や「純米大吟醸 和(なごみ)」といった全国新酒鑑評会で評される清酒をはじめ、日本初となる水草「菱(ひし)」を使った焼酎を製造する酒造メーカーです。今回は大和酒造の中島修治(なかじましゅうじ)さんに、伝統技を極めつつ最新技術を生かす酒造りや水へのこだわりについてお話をうかがいしました。

トップの画像。(写真提供:大和酒造株式会社)

佐賀と福岡の県境にある最高峰の脊振山
佐賀と福岡の県境にある最高峰の脊振山。(写真提供:大和酒造株式会社)
水と暮らす編集部

おいしいお酒造りには水は欠かせないと聞きます。大和酒造さんではどんな水を使用されているのですか?

中島さん

大和酒造では、佐賀と福岡の県境にある最高峰、脊振山(せふりさん)の清冽(せいれつ)な伏流水を地下200mからくみ上げて使用しています。ちなみに創業時から使用していた水源は枯れてしまい、今から40年ほど前に現在の井戸を掘り起こしました。

大和酒造がある場所は昭和50年まで佐賀県の酒造試験場にされていたほどで、仕込み水としての水質は佐賀県内でも非常に評価が高いです。

大吟醸の香りを醸し出す大和酒造の仕込み水
大吟醸の香りを醸し出す大和酒造の仕込み水は、酒造りには最適。また飲料水にも適している。(写真提供:大和酒造株式会社)
中島さん

また大和酒造でくめる水の硬度は120から130mg。中硬水に分類されますね。佐賀県は地域柄、軟水が多いですが、この近辺の水はミネラル分が多く含まれています。そのため、ガツンとした辛口に仕上がるのです。

脊振山の伏流水
脊振山の伏流水は、透明度が高くミネラルたっぷりの中硬水。(写真提供:大和酒造株式会社)
水と暮らす編集部

なぜミネラル分が多いと、辛口に仕上がるのですか?

中島さん

ミネラル分は発酵を助ける働きをもっているため、酸の強い辛口に仕上がります。またミネラル分が多いと、お米本来の旨みをしっかり残せるので、芳醇な後味を楽しめるのも特徴ですね。

日本酒の製造過程では発酵の進み具合を調節することで、さまざまな味わいのお酒が造れます。大和酒造でも発酵を調整して味わいを変えつつも、どのお酒も味をしっかりと残し、旨みを濃縮させた造りになるよう仕上げています。

米どころ・佐賀県産の酒造好適米にこだわる大和酒造の日本酒とは

洗米の様子
洗米の様子。佐賀県産を中心に、さまざまな酒造好適米を使用して、たっぷりの水でていねいに仕上げる。(写真提供:大和酒造株式会社)
水と暮らす編集部

佐賀県は日本有数の米どころとしても有名ですよね。酒造りにはどんなお米を使用されていますか?

中島さん

佐賀県産「山田錦」や「さがの華」「麗峰」など、ほとんどのお米は佐賀県で生産されたものを使用しています。もともと佐賀は穏やかな気候と肥沃な大地によっておいしいお米の生産地としても有名です。その中から酒造好適米を選び抜き、使用しています。それらのお米をていねいに磨くことで、高品質なお酒ができあがります。

大和酒造の水は中硬水のため、スッキリとした味わいに仕上がるので米をそこまで研ぐ必要がありません。そのため精米歩合が低く、お米本来の味を楽しめるのも特徴です。

蓄積したデータ活用により、伝統の味を安定的に供給

酒造の中の様子
徹底したデータ管理のもと、伝統の技術を守り抜く。(写真提供:大和酒造株式会社)
水と暮らす編集部

伝統の技術を守り抜くためのこだわりを教えてください。

中島さん

10年ほど前までは蔵人さんに来ていただき製造を行っていましたが、出稼ぎによる杜氏制度が衰退し、今は自社の社員のみで製造を行っています。そのため、外部の技術者や杜氏を交えた勉強会や研修などを行い、技術を高めています。

伝統を守るための勉強会の様子
伝統を守るために日々、勉強会や研修を行い、若い杜氏の育成にも余念がない。(写真提供:大和酒造株式会社)
中島さん

また、最近では蔵人の五感に頼るだけではなく、最新機器などを活用したデジタルな酒造りにも注力しています。同じ品種のお米やお水でも気候によって毎年少しずつ味が変わってくるため、できるだけ毎年同じ品質のものを提供できるよう醪や原料白米のデータを取り、大和酒造が供給したい品質とズレている場合には近づけるための作業を行います。

水と暮らす編集部

大和酒造さんのお酒を飲みたくなってきました。中島さんおすすめのお酒を教えてください。

中島さん

大和酒造の「和」から取った「純米大吟醸 和(なごみ)」をおすすめしています。お米は「山田錦」や「さがの華」「麗峰」を使用し、芳香で淡麗な呑み口が特徴です。お米を50%ほど削っているので、さっぱりとした口当たりですがお米の味はしっかりと残っています。和食にはもちろん、中華といった味の濃い料理やくせがあるチーズにも合いますよ。

もともと九州では醤油の味が甘いため、甘口のお酒が好まれます。そのため淡麗でも旨みの残る呑み口の「純米大吟醸 和(なごみ)」は、濃い味付けのお料理でもしっかりとマッチするんです。

試飲や蔵見学で、お酒の魅力を堪能しよう

ぎゃらりー大和
試飲や蔵見学ができる「ぎゃらりー大和」。長崎自動車道「佐賀大和IC」から車で約5分とアクセスも抜群。(写真提供:大和酒造株式会社)
水と暮らす編集部

敷地内にある観光酒蔵「ぎゃらりー大和」では試飲や蔵見学も行っているんですよね。

中島さん

はい。ぎゃらりー大和では、大和酒造が誇るお酒や焼酎の試飲はもちろん、店頭販売限定のお酒やヴィンテージの大吟醸の販売も行っています。なお、蔵見学は夏場のみ。要予約なので事前にお申し込みください。

「ぎゃらりー大和」の試飲コーナー
「ぎゃらりー大和」の試飲コーナーは観光客だけではなく、地元の方にも大人気。(写真提供:大和酒造株式会社)
中島さん

また、敷地内にある井戸のお水は無料でご提供しております。ボトルをお持ちいただければ自由にくんでいただけるので、ぜひお気軽にご利用ください。その水でコーヒーを飲んだりお米を研いだりと、いろんな活用方法があるので常連さんにはお酒以上に人気ですね(笑)。

水と暮らす編集部

大和酒造に行けば、お酒だけではなくお水も楽しめるんですね。ありがとうございました!

団体のスペック、オンラインショップ等の告知など

大和酒造
佐賀県佐賀市大和町尼寺2620
公式ホームページ