天然の水風呂と四季を楽しむ。LAMP「アウトドアサウナ」体験のすすめ
サウナといったら、狭い部屋の中で息苦しさを我慢するもの……そのようなイメージはおそらくもう古いでしょう。
長野県上水内郡信濃町の野尻湖のほとりにある「ゲストハウスLAMP」には、フィンランド式サウナの「The Sauna(ザ・サウナ)」が併設されています。小屋の中は、ゆったりと温かさを味わえる適度な温度。熱した石に水をかけて蒸気を楽しみ、体が熱くなったら天然水の水風呂や野尻湖にダイブします。
普通のサウナとは一味違う「アウトドアサウナ」の魅力について、支配人を務める野田クラクションべべーさんにお話をうかがいました。
トップの画像は、ゲストハウスLAMPのフィンランド式サウナ。(写真提供:ゲストハウスLAMP野尻湖)
2つの「天然水風呂」を有し、自然と一体化できるサウナ
- 水と暮らす編集部
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サウナにとって水風呂は欠かせないものですよね。「The Sauna」の水風呂は山の伏流水を使っていると拝見しました。野尻湖を水風呂代わりにもできるそうですね。
- 野田さん
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はい。近くの黒姫山(くろひめやま)から水が来ていて、サウナの裏に小川が流れています。水風呂の水温は季節によって変化しますが、暑い時期でも20℃にいかないほどの心地よい温度です。
お客さまからは「柔らかくて肌あたりがいい」といった声をいただいています。雪解けの時季は水量が増える、雨が少ないと減るなど、日によって水の様子が変わることも特徴です。
- 野田さん
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野尻湖も同じで、季節ごとに水の量が大きく異なります。春から夏にかけてはどんどん減り、冬に降った雪が溶けるとまた増えるんです。もちろん温度も違うので、1年を通して変化するというのが魅力的なのではと思います。
- 水と暮らす編集部
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天然水や湖に入れるだけでも特別ですが、水の変化まで楽しめるんですね。水風呂は冷たさを我慢して入るものという印象がありました。
- 野田さん
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そうですよね。水道水を使った水風呂の場合、夏になるとぬるくなってしまうので冷却装置で冷やすのが基本です。
そうすると少しトゲのある冷たさになってしまう場合もあるのですが、天然の水風呂は冷却装置を使わないので、肌あたりが良くなります。水風呂の気持ち良さは水質で本当に変わりますね。
- 水と暮らす編集部
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水質の違いというと飲み水のイメージが強くありますが、水風呂も大きな差が出るものなんですね。
- 野田さん
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飲み水と似ているかもしれないですね。日本は軟水が多いのですが、地域によっては鉄分が多く、その場合は少しキリッとした感覚があります。野尻湖も鉄分が比較的多いエリアなので、柔らかさとキレのバランスが良いと思います。
サウナについてのレクチャーも。仲間とともに唯一無二の体験ができる
- 水と暮らす編集部
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なぜ野尻湖という場所に、フィンランド式のサウナを作ったのでしょうか?
- 野田さん
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日本のサウナは僕も大好きなんです。でも、もっと多くの人に向けてサウナの良さを伝えるとなったときに、課題はいくつもあると思います。
例えばおじさんが入るものというイメージが強かったり、男女で一緒に入れるところが少なかったり……。あとは写真映えするサウナがあまりないなと。
温泉だと「雪化粧の中で入る露天風呂」のようなものがよくありますが、サウナはまったくなくて。でも、フィンランドに行ったら写真映えするサウナしかありませんでした。なのでそういったものを日本に作れば、サウナがもっと親しみやすいものになると思ったんです。
- 水と暮らす編集部
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サウナに写真映えとは、考えたことがありませんでした!
- 野田さん
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もうひとつの理由は、フィンランドに行ったときに水がそこまできれいじゃなかったんですよね。少し泥っぽく、バルト海も流れが少ない海なのでゴミなどがたまりやすいようで……。
周囲の景色や、年齢・性別を問わず誰もが入れる文化はすばらしかったのですが、水を見て「日本の方がきれいじゃん! 日本の水を生かせばサウナをもっと推していける!」と思いました。
そして日本に戻って野尻湖を見たときに、その風景がフィンランドととても似ていることに気づきました。そのうえ水がとてもきれいで敷地内には小川も流れていたので、これ以上の条件はないと、サウナを作ることにしたんです。
- 水と暮らす編集部
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フィンランドのサウナはすばらしかったけれど、水は日本の方が良かったんですね。
- 野田さん
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そうです。サウナのオープンは水がきっかけといえますね。
あとは雪も大きいです。冬季は閉鎖してしまうキャンプ場もありますが、サウナがあることで冬でも営業できる環境を作れるんじゃないかと。サウナは雪との相性も良くて、雪を魅力的なコンテンツにしてくれるんです。
- 水と暮らす編集部
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街中のサウナにはない魅力が詰まっていますね。
- 野田さん
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はい。僕たちが提供しているのは「アウトドアサウナ」という、自然の中で楽しむサウナです。
6人まで入れるのですが、そこにスタッフが1人付いて、入り方や季節による違いなどをお話しします。そうして2時間でサウナを好きになっていただくというのをとても大事にしています。
貸し切りのサウナは増えてきているのですが、貸し切りかつ初心者でも安心して楽しめる点が大きなポイントですね。
- 水と暮らす編集部
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確かに街のサウナにいきなり1人で行くのはハードルが高いですね。入り方やマナーがわからず戸惑いそうです。
- 野田さん
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あとはやっぱり四季を楽しめる点が街のサウナにはない魅力ですね。春だったら雪解け水が冷たく、サウナの温かさが引き立つ。夏になると外気浴が気持ち良くて、サウナに入らなくても水風呂につかれば十分なくらいです。
秋になると気候も水温ももってこい、そして冬は一面真っ白で静かな世界です。こういった違いを楽しめるところがアウトドアサウナの最大の魅力だと思います。
おそらく普通の温浴施設は、常に安定して80〜90点ほどのクオリティがあり、「毎回それなりに満足」のようなことが多いと思います。一方うちのサウナは、悪天候で30点に感じることもあるかもしれません。でも、いろいろな要素が重なると150点や200点になり得るんです。
例えば先日の皆既月食を湖に浮かびながら見られたら最高ですよね。また「ムーンロード」という、月明かりが道のように見える現象もあります。出会えたら奇跡のようなものたちですが、もし見られたのであれば一生に一度の体験になると思います。
- 水と暮らす編集部
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そういうものが見られるのであれば、何度でも行きたくなりますよね。望んだものに出会えなければリベンジしたくなります。運に左右されますが、自然を楽しむってそういうことですよね。
- 野田さん
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本当におっしゃるとおりです。どの季節も良いのですが、強いていえば5月末から6月いっぱいが特におすすめのシーズンです。野尻湖の水温が冷たすぎずぬるすぎず、ずーっと入っていられます。
サウナから出て湖に浮かび、空を見上げるのは極上ですね。夜であれば星も見えるので、ぜひ体験していただきたいです。
- 水と暮らす編集部
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単なるサウナではなく、周りの自然も含めたすべてを楽しめる体験施設なんですね。
自家製ドリンクや料理でも四季を味わう
- 水と暮らす編集部
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サウナ後に楽しめるドリンクも豊富に用意されているようですね。
- 野田さん
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はい。おすすめのドリンクは「ガラポ」です。北海道で有名な「ガラナ」という炭酸飲料と『ポカリスエット』を混ぜたものです。サウナ好きの間では『オロナミンC』と『ポカリスエット』を混ぜた「オロポ」が定番なのですが、それをガラナで作ってみたら非常においしくて。
レモンスカッシュやジンジャーエールは新鮮な素材を使い、オリジナルのものを提供しています。あんずや梅など、季節の果物が入った自家製サワーなども人気です。料理も地元の旬の食材を使っているので、季節によってメニューが変わります。
- 水と暮らす編集部
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すでに魅力たっぷりの施設ですが、この先やっていきたいことはありますか?
- 野田さん
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サウナを通して、自然環境をしっかりと考えていきたいと思っています。50年後に水がなくなるという話も聞きますし、SDGs(エスディージーズ)の活動も盛んなので、最近はかなり意識をもっているんです。水に関しては、川や湖の水を利用しているのですでにエコだとは思いますが、もう少し何かしたいなと。
サウナに関心をもっている人は年間数十万人ほどいるようなので、その人たちにメッセージを伝えようとしています。「サウナに入って気持ちいい」から「サウナに入って地球がきれいになる」に変えるなど、そういったこともアウトドアサウナだったら実現できるのかなと思っていますね。
まとめ
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野尻湖のほとりにある「The Sauna」は、入るものではなく体験するもの。心地よい温かさと水風呂の柔らかさ、そして四季の変化は、サウナ施設のイメージを変えてくれることでしょう。自然と水の恩恵を受けたアウトドアサウナで、ぜひ一生に一度の体験と出会ってください。