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水を知る

箱根ラリック美術館が明かす、ルネ・ラリックと水の暮らし

2021.06.11

箱根ラリック美術館は、ジュエリーとガラス工芸を手掛けたフランスのアーティスト、ルネ・ラリックの作品を展示している美術館です。

人生の前半をジュエリー作家、そして50歳を過ぎてからガラス工芸家へと転身をしたというラリックは、水からインスピレーションを受けた作品も多数制作しており、箱根ラリック美術館では現在、水をテーマにした作品を集めた企画展「ルネ・ラリックの水のかたち」が開催されています。

今回は箱根ラリック美術館の学芸員・林田早代(はやしださきよ)さんに企画展について詳しくお話をうかがいました。

水と暮らす編集部

今回の企画展「ルネ・ラリックの水のかたち」について、概要を教えてください。

林田さん

生命の源である水は古来より祈りや信仰の対象であり、ラリックの作品にも水に関わる作品がたくさんあります。なので、今回の展覧会はラリックが制作した水からインスピレーションを受けた作品を集めてご覧いただいています。

水と暮らす編集部

ラリックと水の関係性は何でしょうか?

林田さん

ラリックが生まれたフランスのシャンパーニュ地方のアイという小さな村にはマルヌ川という川が流れていたり、別荘と工房を構えたクレールフォンテーヌという土地にも白鳥が舞い降りる池がありました。パリのエッフェル塔が見える場所にも自邸と工房があって、そこにはセーヌ川が流れていました。

つまり、幼少期からずっと水は身近な存在で、ラリックはずっと水辺で作品を作ってきたといっても過言ではありません。そういった環境にあったので、水というのはラリックにインスピレーションを与える大きな要因になったことが推測できます。

水辺の生き物から水の擬人化、水そのものまでも作品に

水と暮らす編集部

今回展示されている作品について、いくつか教えてください。

林田さん

水といってもさまざまな水の作品があります。一番わかりやすいのは、とんぼなどの生き物ですね。とんぼは水の中で育って、そこから陸に出てくる生き物で、ラリックの作品にはとんぼをモチーフにしたものがたくさんあります。

カーマスコット「トンボ」1928年
カーマスコット「トンボ」1928年。(写真提供:箱根ラリック美術館)
林田さん

こちらはガラスのカーマスコットです。車のラジエーターのキャップとして、クラシックカーが出始めのころ、車の先端の部分にこのマスコットが付いていました。

それだけでなく、ラリックはかたちがない水をどう表現をしていくか考え、水を擬人化し水の精に姿を変えて表現した作品も数多くあります。

蓋物「二人のシレーヌ」1921年
蓋物「二人のシレーヌ」1921年。(写真提供:箱根ラリック美術館)
林田さん

こちらは「二人のシレーヌ」という作品です。シレーヌというのは、ギリシャ神話に登場する、海を漂い船乗りたちを誘惑して、船を難破させる水の精です。シレーヌの髪の毛も水滴のように表現されています。

このガラス素材はオパルセントガラスという宝石のオパールのようなガラスです。光の角度によって色が変化して見えるので、これを使うことによって深い海の中の表現や、光が射した表現、妖艶さなど、変化する水の不思議さを表現することができます。

ラリックは最終的に1925年のアールデコ博覧会でシンボルとなる高さ15メートルの巨大な噴水塔を製作します。それがこちらの噴水塔です。水の出る角度もデザインされています。

噴水塔「フランスの水源」ライトアップの様子
噴水塔「フランスの水源」ライトアップの様子。(写真提供:箱根ラリック美術館)
林田さん

また興味深いのが、この噴水塔を構成していたのがこのようなガラスの女性像でした。

彫像「泉の精ガラテ」1924年
彫像「泉の精ガラテ」1924年。(写真提供:箱根ラリック美術館)
林田さん

こちらは泉の精ガラテという女性像です。手にホタテのような貝を持っているのが特徴で、髪の毛や体が水を表現しています。高さが50センチほどで、このような女性像を128体使って噴水塔を構成していました。

噴水塔を構成していたのはこのガラテだけではなく、泉の精の女性像が16種類ありました。それぞれ異なる持ち物を持っていたり、いろいろな顔をした女性像があります。この噴水塔はラリックのガラス工芸家としての集大成の一つであり、今回はこの噴水塔を15分の1の大きさで再現した模型も展示しております。

なので最初はトンボや白鳥など水にまつわる生物の作品から、かたちをもたない水の精の表現、そして最終的には噴水塔のように水までもデザインに取り込んだ作品へと行き着いたというところを今回はご覧いただくことができます。

水と暮らす編集部

この噴水塔が今回の展示で一番の見どころになりそうですね。

林田さん

そうですね。今まで噴水塔を取り上げたことはありませんでしたが、今回はラリックが規模の大きな噴水塔を手掛けたところまでを紹介することができたので、すごくおもしろい展示だと思います。噴水塔の模型は特によくご覧いただいている印象があります。

また、今回は企画展示室の他に1階にある「サロン・ド・サラ 」という部屋にも作品を展示しており、窓の外に広がる池をうつし、外の光に照らされて輝くガラス作品もご覧いただくことができます。

サロン・ド・サラ
サロン・ド・サラの様子。(写真提供:箱根ラリック美術館)

箱根の天然水で作られた限定スイーツも

水と暮らす編集部

限定スイーツの水まんじゅうはどのような特徴がありますか?

林田さん

水そのものをつるんとしたゼリーのようにまるく形作った、和テイストのスイーツです。タイトルは「水のかたち 足柄茶をそえて」。毎回企画展では、併設しているレストランで限定スイーツを出しておりますが、今回はすごく悩んで何回も試行錯誤して作りました。

水のかたち 足柄茶をそえて
水のかたち 足柄茶をそえて(写真提供:箱根ラリック美術館)
林田さん

あんこ、きなこ、そして黒蜜をお好みでかけていただき、足柄茶とともにお楽しみいただいております。また、当館看板娘の風の妖精・シルフィードの形をした人形焼もセットで付いてきます。水は箱根の山の天然水を使っております。

水と暮らす編集部

水まんじゅうに使われている箱根の山の天然水の特徴を教えてください。

林田さん

箱根にもたらされた雨や雪が、駒ケ岳の森林や岩石、土にろ過されて地中深くで磨き上げられた天然水です。炭酸水素イオンや天然温泉の成分を含んでおり、すっきりとした味わいがします。

まとめ

水が身近な存在だったラリックが水からインスピレーションを受けるのは自然な流れだと思いますが、水を擬人化したり、水そのものまでも作品の一部としてしまうのはすごいですね。
今回はていねいにご説明いただき、ぜひ現地でラリックの作品を見てみたくなりました。
箱根ラリック美術館の林田さん、貴重なお話をありがとうございました。

箱根ラリック美術館
〒250-0631 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原186番1

ルネ・ラリックの水のかたち
〜2021年11月28日(日)
9:00〜17:00(美術館最終入館は16:30まで)
※変更の可能性あり。詳しくは公式HPをご確認ください。
http://www.lalique-museum.com/museum/event/detail.html?id=49