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水配り神話が伝わる水に恵まれた島「神津島」の魅力に出会う

2021.06.02

東京から高速ジェット船を使って3時間45分で行ける伊豆諸島のひとつ、「神津島(こうづしま)」。透明度が高く、美しい海と湧き水が豊富なことでも知られる美しい離島です。

神津島観光協会の江藤 翔(えとう しょう)さんに、神津島の水配り神話や豊富できれいな湧き水、神津島の魅力についておうかがいしました。

トップ画像は神津島の風景。(写真提供:神津島観光協会)

神津島の多幸湾三浦港
神津島の多幸湾三浦港。(写真提供:神津島観光協会)
水と暮らす編集部

最初に、神津島についてご紹介いただけますか?

江藤さん

東京の都心部からは南へ約180kmの距離にある伊豆諸島の一つです。人口は1,900人ほど。1周約22km、面積は18.58平方kmの小さな島です。東京・竹芝桟橋から夏に出るジェット船では約3時間45分で着きます。静岡県下田や熱海からも船が出ていますし、飛行機なら、調布飛行場から45分です。

水と暮らす編集部

そんなにすぐ行ける島なのですね!

江藤さん

意外と近いですよね。東京からそんなに近い場所に、手付かずの美しい自然に囲まれた島があることに驚く方も多いです。

一番盛んな産業は漁業で、生粋の漁師町です。温暖な黒潮に恵まれた貴重な漁場として、さまざまな魚種が獲れます。年間を通してキンメダイ、冬にはイセエビもよく獲れます。

漁業に次いで観光業が第二の産業です。2019年には、約4万5,000人が訪れました。

そして、神津島は2020年12月に「星空保護区」に認定されたのをご存じですか? 星空保護区は、夜空を守る優れた取り組みを讃える国際認定制度で、2001年に始まり、世界中でもまだ150ヵ所ほどしか認定されていません。

日本では、2018年に西表石垣国立公園が国内初の星空保護区に認定されたのに続いて、2ヵ所目になります。

星空に映える天上山
星空に映える天上山。(写真提供:神津島観光協会)
水と暮らす編集部

神津島は「東京の星降る島」とも呼ばれているのですね! 美しい星空が楽しめるのでしょうね〜!海もきれいで、夏はマリンスポーツも有名ですよね。

江藤さん

海の水質や透明度は日本一と認定されたこともあります。新島や式根島の近くで海流が変わることもあり、本当にきれいですよ。「東京からこんなに近くにこんなにきれいな海があるなんて」と喜ばれる方も多いですね。夏は白浜が続くビーチで海水浴、ダイビングやシュノーケルが楽しめるので多くの方が訪れます。

赤崎海水浴場
全長約500mの木造「赤崎遊歩道」があり、飛び込みも楽しめる赤崎海水浴場。シュノーケルやダイビングもでき、夜は満天の星を望む星空観察スポットに。(写真提供:神津島観光協会)
水と暮らす編集部

水がきれいなのは海ばかりではなく、伊豆諸島の中でも特に良質で豊かな水に恵まれているそうですが。

江藤さん

水はとても豊かですね。村の水道水も地下水を使っていますが、島のいたるところで水が湧き出ているので湧き水を使う方も多いですよ。

伊豆諸島の神々が集う島で言い伝えられる「水配り伝説」とは

水と暮らす編集部

神津島の水の豊かさを示す「伊豆諸島の水配り伝説」や「水配り神話」と呼ばれる言い伝えがあるときいたのですが詳しく教えていただけますか?

江藤さん

神津島がこれだけ水に恵まれているのはなぜかを示すお話ですね。

三嶋大社にも祀られている事代主命(ことしろぬしのみこと)という神様が、出雲の国から多くの神様を連れてやってきて伊豆の島々を作ったそうです。最初に初島を作り、次に神津島を作り、ここを神様が集まって相談する拠点の島としたとか。神津島は、伊豆諸島の中心に位置することもあり、以前は神集島と書かれていたこともあるようです。

前後の島を作った後に伊豆諸島の神々が集まり、命の源でもある水を皆にどう分配するかの会議が行われたそうです。議論は白熱し、決着がつかなかったため、翌朝来た順番に水を分けていこうということになりました。

神津島で、この神様たちが会議をした会場は天上山(てんじょうさん)という美しい山ですが、ここには「不入が沢(はいらないがさわ)」という窪地があり、以前は水をたたえた池があったそうです。

そして翌朝、最初に来たのは御蔵島(みくらじま)の神様、次に新島(にいじま)、八丈島(はちじょうじま)、三宅島(みやけじま)、大島と続き、最後に寝坊した利島(としま)の神様という順になりました。

もうほとんど水が残っていなかったことに怒った利島の神様が「不入が沢」の池に飛び込み、わずかに残った水を散らしたので、神津島には湧き水がたくさんあるという話です。

前浜海水浴場には、この伝説の様子を表した「水配り像」というモニュメントもありますよ。

神津島港近くにある水配り像のモニュメント
神津島港近くにある水配り像のモニュメント。(写真提供:神津島観光協会)
水と暮らす編集部

おもしろい伝説ですね!この神様の到着順には何か意味があるのでしょうか?

江藤さん

実際に御蔵島や新島は水に恵まれている島ですし、大島や利島は昔から水の確保に苦労してきて、水不足を何度も経験している歴史がありますから、この順番に近しい印象はありますね。

水と暮らす編集部

神津島が伊豆諸島の中でも特に良質で豊かな水に恵まれている理由や、地形の特徴などあればぜひ教えてください。

江藤さん

神津島は比較的温暖な気候で、平均気温は19℃です。雨もよく振り、年間降水量は令和元年で3,000mmほどでした。

神津島の中心にある天上山の岩質は、流紋岩(りゅうもんがん)という火山岩の一種です。伊豆大島の海岸は黒っぽいですが、神津島の砂は白く、式根島や新島、そして静岡県の白浜などをイメージしていただくと、かなり似ています。神津島に降り注ぐ雨がこのきめ細かい岩質の幾層もの地層でろ過されて地下にたまっているようです。こちらがきれいな水を作り出してくれているのではないでしょうか。

水と暮らす編集部

神津島の水道水は皆その地下水を使っているのでしょうか?

江藤さん

神津島に集落は1ヵ所しかなく、ほとんどがそこに住んでいます。そして、この天上山から供給される地下水を、簡易水道を通して生活用水として使っていますね。昔は井戸や貯水槽もあったようですが、今はほとんど使われていません。湧水をくみに行く方も多いですが。

水と暮らす編集部

神津島には「東京名湧水57選」に選ばれている、湧水が2つあるのですよね。特徴について教えてください。

江藤さん

名湧水(めいゆうすい)」とも呼ばれる「多幸湧水(たこうゆうすい)」は多幸湾海岸からほど近い場所にあり、水くみ場もあることから、島の人々の生活用水としても使われています。この水でお米を炊くとおいしいといわれていますね。口あたりがなめらかなお水です。

「多幸湧水」はアクセスが容易ですが、もう一つの名湧水である「つづき湧水」は山奥にあります。天上山のすそ野の山間から湧出る水です。

多幸湧水
きれいに整備され、誰でも水をくんでいくことができる「多幸湧水」。(写真提供:神津島観光協会)

神津島の水を使った焼酎やビールも味わえる

水と暮らす編集部

神津島の水を使った特産物や商品があればぜひ教えてください。

江藤さん

まず推したいのが、麦焼酎の「盛若(もりわか)」ですね。明治23年に創業した、神津島酒造さんが作る名産の焼酎で、口当たりがなめらかでとても飲みやすいお酒です。この島の人はみんな毎日のように飲んでいるほどです。

また、さきほどご紹介したつづき湧水を使って、地ビールも生産しています。2017年に誕生した伊豆諸島でただ一つのブルワリー「Hyuga Brewery」が作っています。特産品の明日葉を使用したビール「Angie(アンジー)」など、神津島の水でおいしいビールをいろいろ提供していますよ。

水と暮らす編集部

それは飲んでみたいですね! 水がおいしいなら食べ物もおいしそうですね。

江藤さん

食べ物は何でもおいしいですね。漁業を営んでいる方は畑でキュウリやトマトなどを育てている方も多いのですが、野菜もおいしいと思います。

水と暮らす編集部

今すぐ神津島に遊びに行きたくなるお話ばかりでした。

江藤さん

天上山ではトレッキングも楽しめますし、山も海も魅力ある島です。ぜひ遊びにきてくださいね。

水と暮らす編集部

ありがとうございました!

この記事のまとめ

  • 神津島は海と星空が美しい東京の離島
  • 透明度の高い海に囲まれ、きれいな湧水が多い、水に恵まれた島
  • 神津島は神々が集う「水配り伝説」の言い伝えが残る島

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