京都・伏見の名水を使った酒造りから料理まで 「黄桜」の伏水とは

2021.06.10

「き~ざくら~どん!」の声とカッパが印象的なTVCMで知られる、有名酒造メーカー「黄桜」。酒造りに欠かせない仕込み水は、京都伏見の名水「伏水」を使用しています。
展開するレストランでは、この伏水を飲み水の他、料理にも使っているそう。

黄桜株式会社 営業統括部 西田友希(にしだ ゆき)さんに、この名水の魅力について詳しくお話をうかがいました。

トップの画像。(画像提供: 黄桜)

「名水あるところに名酒あり」というように、水の良いところではさまざまな良いお酒が造られます。京都の伏見も例外ではなく、山々に囲まれ、澄んだ水が流れ込む「京都盆地」の南部に位置することから、兵庫の灘、広島の西条と並ぶ「日本三大酒処」のひとつとして一般的に知られています。

伏見は、かつては「伏水(ふしみ)」と記されていたこともあるほど、昔から良質な地下水に恵まれている土地です。天下統一を果たした豊臣秀吉が、伏見城内の井戸水で茶会を催したという逸話もあるとか。

水に恵まれ、酒造りに適した伏見の地には、20以上の酒蔵がありますが、その中でも黄桜はトップクラスの知名度を誇る酒造メーカーのひとつです。今回はその黄桜株式会社の水のこだわりや商品についてうかがいました。

菊桜の使う地下水
京都の名水「伏水」として知られている、菊桜の使う地下水。(画像提供:黄桜)
水と暮らす編集部

古来より酒造りには天然水が適するといわれますが、創業に際して、伏見の地下水「伏水」を使うに至った経緯や決め手は何だったのでしょうか。

西田さん

おもな要素は2つあります。ひとつは、伏見が地下水の貯まりやすい独特な地形「京都水盆」により、水が豊富だったことでしょうか。

次に、この地下水が、低温でも充分発酵する力をもつ適度なミネラルを含む中硬水で、酒造りに最適であったことも決め手だと伝えられています。

水と暮らす編集部

伏見区の東側一帯に広がる「桃山丘陵地帯」から西南へ流れる良質な地下水とのことですが、水をおいしくしている地理的な特徴があればぜひ教えてください。

西田さん

山や丘陵ですり鉢状となった京都盆地の地盤に雨水が染み込んで、市の地下に巨大な水がめが形成される地形であることが特徴です。

水と暮らす編集部

適度なミネラルを含む中硬水とのことですが、伏見の地下水の特徴を具体的に教えていただけますか?

西田さん

硬度89~124.6mg/Lの中硬水で、鉄分は少なめです。カリウム、カルシウムを適度に含んでいるのが特徴ですね。

水と暮らす編集部

酒造業界では、鉄分の少ない水が日本酒の仕込み水には欠かせない条件だそうですね。伏水を飲んでみたときの印象はどのような感じなのでしょうか。

西田さん

クセがなく飲み口が柔らかいです。

水と暮らす編集部

なるほど! 日本酒の仕込み水に使われている他に、ミネラルウォーターとしても発売されていますよね。仕込み水がミネラルウォーターとしても販売される点は非常にめずらしいのではないかと思います。緑茶や紅茶、コーヒーをいれるときの水、また製氷にもおすすめとのことで、水の力を強く感じました。

伏水ミネラルウォーター
黄桜「伏水ミネラルウォーター」530ml(130円)※税抜参考小売価格。100mlあたりの栄養成分はナトリウム2.5mg、カルシウム1.6mg、マグネシウム0.55mg、カリウム0.38g。「おいしいと評判の伏水を多くの方に知っていただきたい」と、2000年から販売。(出典:黄桜公式サイト)

飲み物や料理もすべて名水「伏水」を使用! 水にこだわる「伏水蔵レストラン」

2016年に「黄桜 伏水蔵(ふしみぐら)」をオープン。「伏水蔵」の名前は、豊富な伏流水に恵まれた京都伏見の名水「伏水」にちなんで名付けられたそうです。

大吟醸専用の酒蔵「吟醸蔵」をはじめ、京都麦酒の製造が見られる「地ビール工房」や展示室、ショップやレストランを備える大きな施設です。日本酒造りと地ビール造りの工場見学が可能の他、展示室では、黄桜の歴史やメインキャラクターのカッパの紹介などを見ることができます。

伏水蔵レストラン
厳選された素材でこだわりの料理を楽しめる「伏水蔵レストラン」。(出典:黄桜公式サイト)

今回は「伏水蔵レストラン」で使用されている水へのこだわりと名水「伏水」と料理の関係についてもお話をうかがいました。

水と暮らす編集部

伏水蔵レストランは、飲み物から料理に至るまで、使用する水は名水「伏水」のみだそうですね。すべて伏水を使用しているのはなぜでしょうか?

西田さん

水道水のようなカルキ臭がないため、素材の味を邪魔しないことから、使用させていただいております。

水と暮らす編集部

中硬度の伏水を料理に使うことで、どんな良い影響があるのでしょうか?

西田さん

水に含まれているミネラルは舌ざわりやのど越しを決める成分です。このミネラルがバランス良く含まれた天然水が飲用水としておいしい水といわれます。

伏水の中硬水はミネラルバランスがよいため、料理においても素材の持ち味をうまく引き出してくれるのだと思います。特にだしのきいた煮物や京料理には、大変に適していると考えられますね。

水と暮らす編集部

ありがとうございます! 実際にレストランで食事をされた人からの、水についての感想があれば教えてください。

西田さん

クセがなく飲みやすい水ですね」と喜んでいただけているようですね。また、お米やお茶などに水のおいしさが活きているようで、素朴な味のものほど「おいしいですね」と言われます。

水と暮らす編集部

お酒を飲む合間に飲む「和らぎ水(やわらぎみず)」にも伏水を提供されていますよね。

西田さん

伏水に含まれるミネラル成分がうまい具合にアルコールを緩和し、酔いが回るのを防いでくれる効果が期待できると思いますよ。

水と暮らす編集部

京都で初めての地ビールレストランであり、黄桜の京都麦酒の出来立てを飲める「キザクラカッパカントリー 黄桜酒場」でも飲み物や料理に伏水を使われているそうですね。どちらもとても魅力的で、足を運びたくなりました〜!

黄桜 涼の樽酒 純米吟醸
米のうま味とコク、吉野杉由来の爽やかな香りが特長のお酒「黄桜 涼の樽酒 純米吟醸」を2021年4月から季節限定発売。うなぎの蒲焼きやアジのたたき、天ぷらなど、素材にしっかりとうま味のある料理と良く合うそう。黄桜 涼の樽酒 純米吟醸 720ml 【伏水蔵】982円(税込)。(出典:黄桜公式サイト)

消毒アルコールなど社会情勢に合わせた商品も開発

日本中が消毒用アルコール不足に悩んだ2020年春には、京都市の検討依頼を受けて消毒用アルコールの代替品を開発し、近隣の医療機関等へ寄贈。また、2020年5月には、一般向けにも販売開始するなど、環境や社会環境にも配慮した活動を行なっています。

黄桜 除菌アルコール65
酒造会社ならではの除菌アルコールも2020年5月から販売。名水「伏水」を使用し、直接食品に噴霧可能なアルコール度数65%で、除菌や食品保存に使用できる。他にもまな板やふきん、調理器具や台所用品にも。「黄桜 除菌アルコール65」 650ml×3本セット3,980円 (税込)。(出典:黄桜公式サイト)

この記事のまとめ

酒造メーカー・黄桜の使う名水「伏水」を味わおう
京都・伏見の有名酒造メーカー、黄桜さんが日本酒製造に使用している京都の名水「伏水」についてうかがいました。

低温でも十分発酵する力をもつ適度なミネラルを含む中硬水で、日本酒の仕込み水に使うのに理想的な水。クセがなくて飲み口が柔らかいので飲んでもおいしく、製氷からお茶やコーヒーをいれるときにもおすすめということでペットボトルでも販売されています。

名水・伏水を飲み物から料理まで使った「伏水蔵レストラン」も展開。他にも、伏水を使って消毒アルコールを製造・販売するなど昨今の社会情勢に合わせた商品も開発しています。

各種日本酒からミネラルウォーター、消毒アルコールまで、いずれも黄桜オンラインショップでも購入可能です。「伏見蔵」での工場見学やレストランにもぜひ足を運んでみてくださいね。

黄桜 伏見蔵
612-8242 京都府京都市伏見区横大路下三栖梶原町53

黄桜 公式Webサイト
https://kizakura.co.jp
黄桜公式オンラインショップ
http://www.kizakura-shop.com/