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水を知る

にしのみや観光協会がアピールする「奇跡の宮水」の秘密に迫る

2021.06.07

兵庫県西宮市は日本酒の酒蔵が多いことでも知られており、西宮市に流れる水は「奇跡の宮水」と呼ばれているそうです。

今回は宮水の歴史や水を守る取り組みについて、にしのみや観光協会の大野穣一(おおのじょういち)さんと西宮市都市ブランド発信課の大西翔介(おおにしだいすけ)さんにお話をうかがいました。

トップの画像は宮水が流れる井戸場。(写真提供:にしのみや観光協会)

水と暮らす編集部

まずは西宮市が「奇跡の宮水」をアピールするようになった背景を教えてください。

 
大西さん

西宮は古くから酒造業が盛んで、宮水はその中で非常に大事な要素でした。近年、宮水を保全する条例などが制定されたこともあり、改めて市内の方だけではなく市外の方にもそういった資源があって、今の西宮の日本酒業があるということをPRしていきたいなという考えがありました。

水と暮らす編集部

宮水はいつごろ発見されたのでしょうか?

 
大西さん

一般的に宮水というものが発見されたといわれてるのは1840年です。それ以前も「西宮のお酒はおいしいよね」という話があったそうですが、この年に酒造家の山邑太左衛門(やまむらたざえもん)さんが西宮のお酒のおいしさの秘密はその仕込み水にあるということを発見されたそうです。当時は「西宮の水」と呼ばれていましたが、やがて「宮水」と呼ばれるようになったのが起源といわれてますね。

大野さん

もともと、山邑太左衛門さんは神戸の方にも蔵をもってて、西宮と両方で酒造りをしてたから比較できたそうです。実際はそれ以降、科学技術が発達して成分検査をできるようになったので、それで明らかに他の軟水とは違うという結果は出ています。

水と暮らす編集部

なるほど。科学的に証明されたのはいつごろでしょうか?

 
大野さん

おそらく昭和に入ってからです。宮水はミネラルがけっこう多いのですが、一般的にミネラルが多い水はだいたい鉄分が多くなってしまうんですけど、宮水は鉄分が非常に少ない。

お酒を仕込むときに酵母が糖を分解してアルコールに変えていく過程があるんですけど、その活動を活発にするのがミネラル。ミネラルを多く含む水で醸せば醸すほど酵母が活発に活動するので、糖がアルコールに置き換わりやすい。そうすると、タンク中でアルコール度数がどんどん上がっていって、辛い酒ができる。だから「灘の酒は辛口」と言われている理由は宮水仕込みだからというのもひとつありますね。

灘の生一本」
白鹿の日本酒「灘の生一本」。(写真提供:にしのみや観光協会)
水と暮らす編集部

宮水は酒造以外にも使われることはあるのでしょうか?

 
大野さん

今は本当に酒蔵のための水という位置づけですね。硬度の高い水なので、そのまま飲むことはあまり推奨していません。

「奇跡の宮水」と呼ばれる理由

水と暮らす編集部

宮水の良さをひと言でいうと、ずばり何でしょうか?

 
大野さん

やっぱり灘の酒造りには欠かせないものというところかなと思います。この地域の奇跡的な地やバランスで水ができてるので、そこが特徴なのかなと。

水と暮らす編集部

奇跡的なバランスというのは具体的にどういったことでしょうか?

 
大野さん

一説によると、伏流水がより集まってくる場所が今の宮水地帯と呼ばれているところなのですが、縄文や弥生時代にさかのぼったときに、その辺りで食べた貝殻などを捨てていたそうです。その貝殻から出たカルシウムが積層してるところにちょうど水が湧いているので、人間の過去の行為がつながって、カルシウム層ができあがり、ミネラルが豊富になったといわれています。

人間がここで過ごしていたという証拠が残っているので、そういう意味でも奇跡だよねというような表現をしています。

みやたん絵本「奇跡の宮水」
みやたん絵本「奇跡の宮水」は宮水について描かれています。(写真提供:にしのみや観光協会)
水と暮らす編集部

なるほど。では公式サイトに載っているみやたん絵本「奇跡の宮水」にも出てきた、酒ミュージアムの見どころを教えてください。

 
大野さん

酒ミュージアムがある場所はもともと「白鹿」というブランドの酒を造っている酒蔵がありましたが、もうここは使わなくなったということで、明治時代の蔵をそのまま博物館として公開しています。整備はしてますが、昔使っていたような道具などは全部そのまま置いてます。解説も書いてますので、昔の酒蔵の状態がそのまま体感できる施設ですね。

酒ミュージアム外観
酒ミュージアム外観。(写真提供:にしのみや観光協会)

これからも宮水を守り、伝え続けていく

水と暮らす編集部

宮水を守るための取り組みは具体的にどんなことをされていますか?

 
大西さん

宮水保全条例という地下水の保全に関する条例があります。平成30年4月から施行されており、西宮市内で一定規模以上のマンションなどの開発行為をするときに、あらかじめ酒造会社さんと協議してもらって、宮水に影響が出ないように配慮した工事の仕方をしてもらうという条例です。

水と暮らす編集部

もし環境汚染が広がったら、宮水がなくなってしまう可能性もあるのでしょうか?

 
大野さん

それはありうるかもしれません。ただ、西宮は北に六甲山脈を抱えていて、その六甲がかなりの水分量を蓄えており、基本はそこからの伏流水なんです。だからなかなか水が絶えることはないと思います。

水と暮らす編集部

宮水に関することで今後の取り組みなどありましたら、教えていただきたいです。

 
大野さん

井戸場は各酒蔵さんが所有・管理されておりますが、井戸場として残ってるので観光協会としてはその辺りを活性化していきたいなと思います。例えば、宮水の説明を書いた看板を立てたりとか、わかりやすく伝えられるといいですね。酒蔵を回るミニツアーでは、最初に宮水の話をするなどの啓発活動をしているので、これからも続けていきたいと思います。

まとめ

「奇跡の宮水」が縄文・弥生時代の生活がきっかけで誕生したという説があるのは驚きです。古くからある宮水をぜひ今後も守り続けてほしいと思います。また、日本酒が好きな方はぜひ西宮へ足を運んでみてください。
大野さん、大西さん、貴重なお話をありがとうございました。