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水が日本酒の味わいを決める。江戸時代から続く「金鵄盃酒造」の豊かな井戸水を使った酒造り

2021.07.08

霊峰白山をはじめとする山々や川に囲まれた新潟県五泉市村松。水に恵まれたこの土地に、江戸時代から蔵を構える酒造があります。その名は『金鵄盃酒造(きんしはいしゅぞう)』。

「日本酒の8割は水。だから使用する水によって、日本酒の味わいは大きく変化します。おいしい日本酒を作るためには質のいい水が欠かせません」と代表取締役社長の茂野さんは言います。

今回は、茂野さんに日本酒造りにおける水の重要性や、丹精込めて造られた金鵄盃酒造の日本酒について伺いました。

(画像提供:金鵄盃酒造)

ーー金鵄盃酒造のはじまりは、江戸時代なんですよね。

はい。金鵄盃酒造の歴史は、江戸時代に創業者である茂野が、村松藩の城下町で酒蔵を開いたことから始まりました。そして、現在まで代々受け継いできた技術を使いながら試行錯誤を重ね、おいしいお酒を作り続けています。今年で創業197年を迎え、わたしで今、6代目になります。

ーーかなりの歴史がありますね。もともと日本酒造りに適した土地だったのでしょうか?

冬の様子
(画像提供:金鵄盃酒造)

そうですね。酒造のある五泉市村松のうしろに霊峰「白山(はくさん)」という標高1000メートルくらいの山がありまして、そこに積もった雪が地下水となって城下町の下に流れてきます。

わたしたちが住んでいるのは、その地下水を平野部で汲み出す最初のエリア。あちこちに井戸があって水が沸いている「水の街」なんです。冬も夏も枯れることなく、非常に豊富。うちの蔵でも、江戸時代からずっとこの井戸水を使っています。白山には天狗がいたという伝説から「天狗の清水」と呼ばれていますね。

ーーなるほど、水に恵まれた土地だったと。

はい。豊富な水量はもちろんですが、その水質も素晴らしいものでした。通常、酒造りに水を使用する際に「鉄」や「マンガン」を取り除く処理をします。

しかし、ここの井戸水はそういった成分が少ないのでで、そのまま使うことができています。 また、お酒の仕込みには水の温度管理も重要です。そういった点でも、ここの井戸水は温度が安定しており、酒造りには最適な条件が揃っていたと言えるでしょう。

ーー新潟の水にはどんな特徴がありますか?

基本的に新潟の水は、軟水でミネラルやカルシウム、マグネシウム、カリウムといった物質が少ないのが特徴です。九州といったほかの地域の水と比べると、かなり淡麗ですね。

ーー水の違いによって日本酒の味わいも変わるものなのでしょうか。

そうですね。お酒の8割が水ですから、使用するものによって味わいが大きく左右されます。アルコールを作る酵母は、ミネラルが多いと元気に発酵します。だからミネラルが多い水のほうが、アルコールが出てしっかりとした濃い味のお酒になるんです。

一方で、ミネラルの少ない水で育つ酵母は発酵が穏やかに進むので、味わいがさっぱりとした綺麗なお酒になります。先ほど言ったように、わたしたちが使う井戸水はこちらのタイプなので、うちのお酒は俗に「淡麗辛口」と言われます。新潟にはこの分類のお酒が多いですね。 金鵄盃酒造の職人は、新潟のミネラルの少ない軟水を美味しいお酒に仕上げる技術を代々受け継いできています。

だから、ほかの材料はそのままでも水が変わっただけで同じお酒は作れなくなります。 水は酒造りのあらゆる工程で使います。お米を洗うとき、お米に吸わせるとき、それからタンクに入れて仕込むとき。さらに、発酵が終わったお酒のアルコール度数を調整するためにも水を使います。それだけに水は、お酒の味や品質に大きな影響を与えるんです。

ーー道具の洗浄にも井戸水を使われているそうですね。

はい。うちの蔵ではお酒を仕込むほかに、生活用水としても井戸水を100%使っています。非常に贅沢な使い方をさせてもらってますね。

わたしたちはたまたま運よく、歴史的にこういった財産に恵まれたので、これからはこの井戸水が枯れないように、自然環境を守る取り組みもしていけたらなと思っています。

ーー技術同様に、自然を守っていくことも重要になるんですね。酒造りに関して何か今後の展望があれば教えてください。

田んぼの様子
(画像提供:金鵄盃酒造)

今は、新しい杜氏の指揮のもと、米にこだわったり、特徴のある酵母を使ったりして、今までにない新しいお酒造りにチャレンジしています。ゆくゆくは、お水だけでなく、酵母やお米も、全て地元のものを使って日本酒造りをしていきたいですね。

【淡麗ですっきり】金鵄盃酒造のおすすめの日本酒

「飲む人が疲れない、ストレスを感じさせないお酒」「すいすいと飲める、食事やおしゃべりをしながら片手間に飲めるお酒」を目指しているという金鵄盃酒造さん。

最後に、豊富な井戸水・天狗の清水で造られたおすすめの日本酒をご紹介いただきました。

『越後杜氏』

まずはこちらの『越後杜氏』。わたしたちの酒造では、今このブランドが一番よく出ています。

地酒ブームの少し前の昭和56年から、人気を集めるようになりました。もともとメイン商品だった『金鵄盃』よりも出荷量が増えましたね。

2018年にはお燗酒コンテストで、「お燗にしても味が崩れにくく、非常に丸みがあって調和のとれたお酒」と審査員の方に認めていただき、最高金賞を受賞しました。

私はお酒の良し悪しを「後味がいかに綺麗に消えていくか」だと考えています。そういった点では、この『越後杜氏』が今一番の看板商品だといえるでしょう。

越後杜氏 辛口 (720ml)
越後社氏 価格 920円(税込)
種類(特定名称) 本醸造酒
味わい キリリ、越後杜氏の伝統の技から
生まれる辛口の酒。
淡麗辛口ながら旨味も併せ持ち、
色々な料理と相性がよい。
精米歩合 65%
アルコール分 15度

『雪影』

次に、特別純米酒の「雪影」です。

雪影は越後杜氏よりもさらに柔らかくてすっきりした酸味が特徴です。香りも強すぎない、穏やかで優しいお酒で、飲んだときに果物の梨のジューシーさを感じていただけると思います。

とても飲みやすく、アメリカでも高く評価していただいています。新潟の地酒として、10年以上輸出を続けているロングセラー商品です。日本酒特有の麹の味に馴染みがない海外の方たちにも飲みやすいようにワインのような酸味を出しているのが特徴です。

淡い水色のボトルや名前が女性に人気で、地元でも女性同士の飲み会や家飲みの時に選んでいただくことが増えてますね。

雪影 特別純米酒 (720ml)
雪影 価格 1090円(税込)
種類(特定名称) 特別純米酒
味わい ほどよく酸味があり軽快で飲みやすい淡麗な純米酒。
精米歩合 -
アルコール分 14度

『じゅんぎん』

最後にご紹介するのは、『じゅんぎん』。一番新しい、純米吟醸のお酒です。

先ほどの『雪影』よりもワンランク上の吟醸酒で、甘い華やかな花の香りを持つのが特徴です。うちの商品は淡麗で香りが穏やかな商品が多いので、新しいタイプのお酒ですね。香り高いのでワイングラスで飲むのもおすすめです。

こちらは首都圏の飲食店に出している他、3年ほど前からシンガポールにも輸出してます。海外で評判がよいので、そのおかげで地元でも売れるようになりました。

中の見出し
じゅんぎん 価格 1642円(税込)
種類(特定名称) 純米吟醸酒
味わい 香り華やぎ、
ソフトでなめらかな口当たりの純米吟醸。
精米歩合 55%
アルコール分 15度

これらの商品は、金鵄盃酒造公式HPのオンラインショップから購入可能です。 他のお酒と飲み比べながら、水の違いをぜひ感じてみてください。

金鵄盃酒造株式会社


金鵄盃酒造株式会社公式HP

<公式HPはこちら>

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