枯れることのない万年の泉で仕込む「亀泉」 高知の自然が育む味わいを
高知県土佐市に蔵を構える亀泉酒造では、1897年の創業以来「おいしい、楽しい、面白い」をモットーとした酒造りを行っています。使用する水は、良好な水質が保たれていることから「奇跡の清流」と評される仁淀川(によどがわ)水系の軟水。米と酵母も高知県産にこだわり、この地でしかできない酒造りを極めて、国内はもちろん海外にも根強い人気を誇っています。
今回は亀泉酒造株式会社の会長兼杜氏である西原一民(さいばらかずひと)さんに、酒造りへの想いや街道一おいしい水が湧き出るという「万年の泉」についてお話をうかがいました。
トップ画像は仁淀川。(写真提供:亀泉酒造株式会社)
おいしい日本酒には、天然の水が欠かせない
- 水と暮らす編集部
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酒造りには、天然水である湧き水や井戸水が良いと聞きます。亀泉酒造さんではどのような仕込水を使用されているのかを教えてください。
- 西原さん
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亀泉酒造は、1897年に日本酒好きの有志らによって始まりました。名前の由来は、「鶴は千年、亀は万年」ともいわれる、どんな干ばつがあっても枯れることのない「万年の泉」を用いて酒造りをしたことから来ています。ちなみに江戸時代の参勤交代の頃から「万年の泉」と呼ばれており、現在もこの泉が枯れることなく湧き続けていることによって、当社の酒造りが続けられています。
- 水と暮らす編集部
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「万年の泉」の湧き水を仕込水として利用されているんですね。では、その水の特徴について教えてください。
- 西原さん
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酒造りで使用している湧き水は、波介山(はげやま)からその麓である「出間」へ流れています。なお水質は、清流・仁淀川水系の軟水で、甘く感じるふんわりした口当たり、そして優しいのどごしが特徴です。
- 西原さん
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ちなみに、高知県全域が軟水といわれていますが、展示会や試飲会などに参加する際、小売店さんに「亀泉酒造さんの水が一番おいしいです」と褒められることがよくあります。お酒はもちろんのこと、仕込水を褒めていただけるのはうれしいですね。
高知県産の米と酵母が織りなす「亀泉」の味わいとは
- 水と暮らす編集部
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おいしい仕込水以外に、お酒造りでこだわっていることを教えてください。
- 西原さん
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おいしいお酒を造るためには、お水以外にも高品質な「米」と「酵母」が欠かせません。米によってお酒の味、そして酵母によって香りが変わってきます。亀泉酒造で使用しているお米は、「土佐錦」や「吟の夢」、「土佐麗」など高知県産の酒造好適米をはじめ、酒造好適米の最高峰とされる「兵庫県産山田錦」などです。
- 西原さん
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またお酒の味わいを左右する酵母も、主に「高知県産酵母」を使用しています。高知県産酵母とは、高知県独自で行われてきた研究によって造られた酵母のことで、当社ではお酒の味に合わせて複数の高知県産酵母を使用しています。
- 西原さん
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なかでもよく使っているのは、高知酵母「CEL-19」や「AA-41」など。「CEL-19」は、吟醸香であるカプロン酸エチルが多く酢酸イソアミルがやや少ないため、りんごの香りでさわやかな酸味が特徴です。また、「AA-41」はメロンやバナナのような香りが広がります。
そのほかにも、清酒酵母とワイン酵母をかけあわせた「KW-77」や、甘酸っぱく香りの高い「CEL-24」などの酵母もあります。当社が販売しているお酒は、酵母もラベルに記載しているのでぜひチェックしてくださいね。
- 水と暮らす編集部
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伝統の味を守るために、大切にしていることはありますか。
- 西原さん
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当社では30年ほど前から、自社の社員のみで酒造りを行っています。経験豊富なベテラン社員が多いことが、品質保持にもつながっていると思います。当社の酒造りは、「おいしい、楽しい、面白い」をモットーにしており、そのため、伝統の味を守ることはもちろん、毎年違う味わいを楽しんだり、新しい酒造りにチャレンジしたりしています。
- 西原さん
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最近は、米も自社で生産しようということになり、田んぼを借りて栽培するようになりました。数年後には、自社の米を使用したお酒ができあがっているかもしれません。
日本酒愛好家が好む辛口酒から、初心者向けに白ワインのような飲みやすいお酒まで
- 水と暮らす編集部
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亀泉酒造さんでは、バラエティーに富んださまざまなタイプのお酒を造っているとうかがいました。中でも、西原さんおすすめのお酒をぜひ教えてください。
- 西原さん
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おすすめは、希少な酒米・風鳴子を使用した生酒「純米吟醸原酒 高育63号」です。生酒は加熱しないため、素材本来の味を楽しめるのが魅力ですね。しかも高知酵母「AA-41」を使用しているので、メロンやバナナの甘い香りが口の中でいっぱいに広がります。
また定番商品「純米大吟醸 兵庫山田錦」も根強い人気を誇っています。酒造好適米の山田錦を使用したお酒です。すっきりとした飲み口なので、日本酒好きの人にぜひおすすめしたいですね。
- 西原さん
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そのほか、国内だけではなく海外でも人気の高い商品が「純米吟醸原酒 CEL-24」です。高知県のお酒は辛口が多いのですが、これは珍しく甘口。現在、中国や香港、北米でも人気で生産が追いついていないほど。リンゴ酸が多く甘酸っぱい口当たりなので、白ワインと勘違いされる方も多いんですよ。日本酒をこれまであまり飲んでこなかった方には、ぜひ「純米吟醸原酒 CEL-24」を飲んでいただきたいです。
- 水と暮らす編集部
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亀泉酒造さんのお酒は、日本酒デビューにもよさそうですね! ありがとうございました!