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水を味わう

大切なのは人の手と五感、遊び心。湧き水のようにピュアな、城陽酒造の酒造り

2021.07.15

江戸時代後期・文政のころより、京都の南部に位置し、良質な水に恵まれた土地で酒蔵を構える城陽酒造。「美しく感性に訴えるところがあり、遊びがあって独創性を持っているもの」という意味である『美感遊創』をコンセプトにしたお酒には、伝統を守りながら豊かな心と感性を磨き続ける職人たちの想いが詰まっています。

4代目社長・島本稔大(しまもと としひろ)さんのお話からは、人の手によって造られるお酒のうまさへの追求心と、自然の恵みのひとつである“水”に対する感謝の想いも伝わってきました。

トップの画像は、文政のころから同じ場所に位置する城陽酒造。毎晩飲んでも飲み飽きることのないお酒として、地元の人々からはもちろん、全国の愛飲家に愛されている。(写真提供:城陽酒造)

木津川(きづがわ)の伏流水を地下100mからくみ上げ、すべての工程に使用
木津川(きづがわ)の伏流水を地下100mからくみ上げ、すべての工程に使用。(写真提供:城陽酒造)
水と暮らす編集部

城陽酒造さんでお使いのお水はどういった特徴があるのでしょうか?

島本さん

超軟水です。京都市内のお水は軟水だといわれていますが、この京都の山城地域はさらに深いところに岩盤があるんです。砂と小石の層が連なっているところを染み込みながらろ過されていき、ミネラル分は少ないものの、とてもキレイな水になるんですね。

ミネラルが多いと酵母の働きが良くなり、発酵を促します。でも、日本酒に限っては麹によってでんぷん質を糖化させ、それを酵母が食べてアルコールに変えるため、発酵ばかりが進んでも辛口なお酒になってしまいます。つまり、軟水すぎても良くありませんし、バランスが重要なんです。お水はお米と違って遠方からもってくるわけにもいかないので、その土地に良質な水が豊富にあるという意味ではとても恵まれていると思います。

水と暮らす編集部

お水はどのように採取されているんですか?

島本さん

地下100mからポンプでくみ上げています。初めのころは10mくらいでも出たそうなんですけど、酒造りをするようになって45mまで掘ったそうです。昭和40年代になって、コンクリートに使われる山砂利が混入したことでお水が濁ってしまったため、そこからまた50mくらい掘ったんです。やはり自然界のものですから、何かあるとお水も変わってしまいます。もっとも怖いのは地震で、水脈が変わってしまうこともあるんです。

水と暮らす編集部

阪神・淡路大震災の影響もなかったそうで、良かったですね。

島本さん

そうですね。おかげで今でも、仕込みや瓶の洗浄も含め、すべて同じお水を使っています。このお水でなければうちのお酒は造れません。日本酒はほとんどがお水由来のものなので、どんな技術を使ってもお水が良くなければおいしいお酒は造れませんから。

京都の水で造ったお酒は、やはり京料理との相性が抜群

仕込みの様子
酒米の王として知られる兵庫県産「山田錦」、京都を代表する酒造好適米の京都府産「祝(いわい)」、酒造好適米として評価の高い「五百万石(ごひゃくまんごく)」。城陽酒造では、すべての醸造で酒造好適米といわれる酒造り専用のお米を使用。(写真提供:城陽酒造)
水と暮らす編集部

木津川(きづがわ)の伏流水の良さは、城陽酒造のお酒のどんなところに生きていると思われますか?

島本さん

甘辛度は数値化されるんですけれども、いわゆる日本酒度で、プラスになればなるほど辛口、マイナスだと甘口になります。うちの場合は+10くらいでも他の酒と比べてそこまでピリッとした辛口ではなく、しっかりとお米が感じられる、それでいてキレのいい辛口なんです。アルコールの強さからくる辛口ではないところに、水の良さが出ています。

水と暮らす編集部

すっとキレるからこそ、お料理に合うんですね。

島本さん

そうですね。京都の料理も大半に軟水が使われていますので、より一層、京都の料理にはよく合います。同じお水で作られたものはやはり相性がいいんです。同じ関西でも、大阪の料理よりは京都の料理とのほうが、相性はいい気がしますね。

水と暮らす編集部

城陽酒造さんがお酒造りを続けていく上で、これからも守っていきたいことはどんなことでしょうか。

島本さん

当社も極力地元のものを使おうということで、京都産のお米を使っています。その中で、どうしても地元では手に入らない山田錦だけは兵庫県の米を使っていますが、例えば梅酒も地元の青谷梅林の梅であったり、可能な限り同じ水で育てられた材料を使っているんです。同じ水で育ったもの同士なら、合わないわけがありません。今は物流も発達して、どこの地域の産物も手に入れようと思えばなんとかなる時代ですけども、やはり地元のお水で仕込んだ地元の米を使うというのが、お酒を造ることにおいては一番いいバランスを生むのではないかなと思うんです。その姿勢は変わらずもっていたいですね。

遊び心をもってお酒造りをすると、いいものができる

酒蔵の外観
行きすぎた自動化のための機械化はせず、人の手と五感でおいしさを追求する、“変わらない酒造り”を続けている。(写真提供:城陽酒造)
水と暮らす編集部

今はIT化やAIシステムの導入などが進んでいる時代ですが、城陽酒造さんは手作業というところにこだわりをもたれている印象があります。

島本さん

そうですね。一口に機械化といっても、自動化するための機械化と、省力化するための機械化とあると思うんです。お酒は昔からずっと厳しい環境で造られてきていますが、労働環境を改善するために、温度管理から何からセンサーで行う自動化するための機械化は、私にとっては酒造りといえども、それでは工業製品になってしまうと感じます。あくまで人の手と五感を使って酒を仕込むという点では、一部で機械を使って省力化することはやぶさかではないのですが、同じ機械化でもそこの違いによってできあがるものはだいぶ変わってくるのではないかと思うんですよね。

水と暮らす編集部

気候はもちろん、お水もお米もそのときによって微妙に違いがあります。温度制御など、機械化の仕方によっては風合いに変化が出てしまうということでしょうか?

島本さん

まさにそうですね。自分の手で造るものと、機械で量産して売られているものとでは大きく違います。いかに日もちをさせるかとか、そこへの注力の違いが味わいに出てくるのではないかなと思っています。

水と暮らす編集部

城陽酒造さんがお酒造りのコンセプトとされている『美感遊創』も、造り手の想いを大切にした言葉ですよね。

島本さん

はい。 “遊び心をもってお酒造りをすると、いいものができる” という意味で、先代が人からもらった言葉なのですが、気に入ってそのままうちの酒造で使わせていただいています。先ほどの機械化もそうですが、必要以上に機械化を進めてしまうと、大変さを乗り越えたときの楽しさというのも減ってしまうと思うんです。人が手を入れて造っているからこそ、楽しさも出てくる。これからも自分たちの手と五感で造りだした味わいや風合いを、楽しんでお酒を造っていきたいですね。

純米大吟醸40 純米吟醸55・特別純米酒60
代表酒として高い人気を誇る『純米吟醸55』(下段左)、プレゼントにも喜ばれる『純米大吟醸40』(上段)、晩酌用に安定した人気の『特別純米酒60』(下段右)。(写真提供:城陽酒造)

城陽酒造

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