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時代を先読みして創業!立山の天然水を全国に届ける株式会社 宝水

2021.06.02

株式会社宝水は、富山県中新川郡立山町で北アルプス立山連峰の天然水を製造・販売している会社です。
創業は今から約30年前。まだ「水なんて売れない」と思われていたような時代でした。そんなときにもともと京都で商売をしていた創業者(現社長の父)は、飲料水事業を始めようと思い立ち、単身、北アルプス立山連峰のふもとで水の製造工場を立ち上げ、販売を開始しました。

立山の天然水は世界にもまれに見る地理的環境のおかげで水質が良く、水量も豊富。高品質な天然水を、まだ水への関心が低い世の中で、先を見越して製造・販売を始めた株式会社宝水の現社長にお話をうかがいました。

トップ写真は株式会社宝水の商品「水の王国」(写真提供:株式会社宝水)

立山連峰の景色
立山連峰の景色。
水と暮らす編集部

日本にはいろんな天然水がありますが、立山の水はどんな特徴があるのでしょうか?

長尾さん

立山は雪が豊富で、何千年と溶けずに残る万年雪も存在します。その雪は、50年から100年ぐらいかかって自然にろ過されて、やっと立山のふもとへと天然水として流れてくるといわれてるんですね。

立山連峰は3,000m級の山が連なっていて、そこから富山湾までの高低差は約4,000mもあるんです。それもかなりの急流で、常に勢いよく流れています。

なので水がすごく新鮮で、生き生きとしている感じです。急流で約4,000mもの高低差があるような地形は、世界的に見てもめずらしいんです。そして海底からもその水が湧き出ていて、それが海水と混じり合うことで富山湾の海産物にも良い影響を与えているそうです。

立山の天然水は、本当に『自然の恵み』そのものなんです。」

立山連峰の水の循環を表した図
立山連峰の水の循環を表した図(出典:宝水公式サイト)
水と暮らす編集部

立山の天然水は、自然に恵まれたすばらしい天然水なんですね!

長尾さん

そうなんです。立山町にも私たちの製造・販売する天然水が立山生まれだということを認定していただいているんですが、水って商品名に地名がつけられることが多いですよね。

例えば、『南アルプスの天然水』とか『六甲のおいしい水』とか。当社でいったら、立山の天然水。企業自体のブランドも重要かもしれませんが、山の名前がブランドになるっていうのは強みじゃないかなって考えてますね。

水と暮らす編集部

質としては、立山の天然水はどんな水ですか?

長尾さん

実は、町には水を販売している会社が他に2社あるんですが、同じ立山町の天然水でも採水する場所で全然水質硬度が違うんですね。

町をざっくり見ると東の方に立山があって西の方に常願寺川が流れているのですが、当社の場合は、他の飲料水の会社と比べると山に近いところに所在していて、水質硬度が25mg/L。WHO(世界保健機構)飲料水水質ガイドラインでは水質硬度0~60mg/L未満が軟水とされています。

その中でもかなりの軟水なんです。だけど川に近い方で採水しているところは、硬度70~80mg/Lと中軟水になってるんですよ。

WHOによる軟水と硬水の基準値一覧
WHOによる軟水と硬水の基準値一覧。(出典:宝水公式サイト)
飲料水の水質硬度と、水質硬度別用途を表した図
各飲料水の水質硬度と、水質硬度別用途を表した図。(出典:宝水公式サイト)

「水は買うのが当たり前の時代になる」単身富山に乗り込んだ創業者

水と暮らす編集部

同じ町でそれだけの違いがあるのは驚きです! 宝水さんは町の中でも、なぜその場所を選ばれたのですか?

長尾さん

場所は創業者である父が選んだんですけども、もともとは京都で生まれ育ち、京都で商売をしていたんですね。

今から30年近く前、当時父が京都大学の教授と話をしたときに、『近い将来、水と空気は買う日がくる』ということを言われたみたいで。

当時は『水なんかが売れるわけない』っていうような時代なんですけど、『空気はまだでも、水はもうすぐやで』と教授から聞いて、それならすぐに動こうってことで飲料水の事業を始めたそうです。

京都での商売も飲料の製造だったんで、今の業態とあまり大きな違いがないこともあって始めたと思います。

水と暮らす編集部

当時の先進的な事業に乗り出したということですね。

長尾さん

そうですね。先代は直観や行動力がすごかったですからビビっときて即行動したみたいです。

次に場所を考えたとき、水の宝庫というと南アルプスか北アルプスかとなりました。選ぶときに人口や登山客の多い南アルプスより、北アルプスの方が自然環境が良いのではとなり北アルプスへ。

さらに調査をして水が豊富な富山県にしようと決めて、どういう縁だったかは詳しくは知りませんが、現在の会社の場所を選び約30年前に創業したんです。水の会社としてはかなり古いと思います。父親ながら知らないところに一人で乗り込んで、すごいなと思いますね。

衛生的な製造のために着実に最善を尽くす

備蓄用商品の「5年保存水」
備蓄用商品の「5年保存水」。(写真提供:株式会社宝水)
水と暮らす編集部

水だからこそ、製造で特に気をつけていることはありますか?

長尾さん

注意している点は、何といっても異物や菌の混入がないようにすることですね。基本的に無味無臭というのが水なので、何か混ざった瞬間はっきりとわかります。異物等が混入しないように、製造ラインは常に清潔に保つ努力をしています。

また当社では高温度で水を充填(じゅうてん)して、ボトル内部やキャップ内部も殺菌する『ホットパック充填』を採用しているので、菌が発生するリスクが低いんです。ペットボトルも耐熱性の高いものを使っています。

常温で充填をするやり方もあって、それだとペコペコで安価なペットボトルも使えるんですが、その分リスクも高くなると考えているので、当社ではホットパック充填を選んでいます。

さらに、ホットパック充填を利用して『5年保存水』を作り出したんです。

水と暮らす編集部

『5年保存水』とは何ですか?

長尾さん

災害に備えて、5年間品質を保持して備蓄できる飲料水なんですよ。通常の賞味期限は、当社の場合は製造日から2年ですけど、薄いペットボトルになればなるほど賞味期限が短いので、一般的には1年から1年半というのが多いんじゃないですかね。

5年ももつのは、加熱殺菌にてしっかり天然水を殺菌し、頑丈で肉厚なPETボトルを採用しているからなんです。

『5年保存水』の場合、『使われないことが幸せな水』なんですが、5年後のボトル入れ替えの時期になったときに、お客さまから『宝水さんのは、ボトルがへこんだりもせずしっかりしてていいね』って言ってもらえます。

水と暮らす編集部

5年たっても問題なく飲めるんですね!

長尾さん

たまたまなんですけど『5年保存水』は東日本大震災が起こる直前の年末から企画していて、2011年4月に発売予定だったんですよ。

日本は災害が多いので、備蓄水は必要だなということと、大手企業がやらない部分であり、我々のような小さな会社がやっていける部分でもあるので、そこに目をつけたんですが、発売しようとしていた矢先に東日本大震災が起こったんです。

ですので、ちょうど製造準備をしていた『5年保存水』を救援物資で送ったりして、被災者の方々へ少しでもという思いで役立てていただきました。

水と暮らす編集部

自然そのものの水を商品に扱う会社として、エコロジーへの取り組みなどもされているんでしょうか?

長尾さん

資本力がある大手企業みたいに大きな事はできませんが、社屋や工場の照明をLEDに変えて省エネをしたり、重油ボイラーからガスボイラーにしてCO2排出量の削減を実施したりして、コツコツと地道にできることをこれからも行っていこうと考えています。

水の力とは?

北アルプスの宝水
瓶詰め商品の「北アルプスの宝水」。(写真提供:宝水)
水と暮らす編集部

社長自身、水の良さを実感されることはありますか?

長尾さん

水っていうのは、人間の体の60~65%を占めているといわれるぐらいなので、水は人類すべての基本中の基本だなと思っていて。私自身アトピーが昔ひどかったんですけども、いろんなことをやってきたなかで意識して水を飲むようになりました。

もともと私は水って飲みにくいと感じていて、全然水が飲めなかったんです。意識して飲むことでどんどん水が飲めるようになってきて、今ではもう水以外はあんまりほしくなくなるほどになりました。

ジュースや甘い飲料などは、砂糖がけっこう入っているので、飲み物を水に置き換える、“水の生活”はオススメです。水であれば水道水でもかまわないです。それだけでもやっぱり変わってくるんで。

ただ塩素が入っている水道水よりは、費用はかかるけれど天然水の方がいいですよ、とは言いますけどね。」

水と暮らす編集部

なるほど、“水の生活”ですね。今日からでも実践できますね!

長尾さん

寝る前と起きたときに、コップ一杯の水を飲む習慣もいいかなと思うんですね。寝ている間に汗をかいて、起きたときもノドが渇いているじゃないですか。

だから水を飲んで水分をとるのが大事。寝起きの口の中は雑菌が繁殖しているんで、歯磨きやうがいをしてから飲むのがいいです。

お米を炊くときには、最初に乾燥している状態のお米を、ミネラルウォーターにしばらくつけるようにしています。そうしてから、ふだんどおりに洗って炊くとおいしいなと思っています。洗うときは水道水でいいかと思いますが、炊くときはまたミネラルウォーターがいいですよ。

料理だとメインは野菜や肉や米ですが、水はその味を引き立たせる役目をしてくれるので、水は名脇役だと思ってます。

会社として力を入れていることは?

水と暮らす編集部

会社として、力を入れていることはありますか?

長尾さん

企業やイベントなどのオリジナルラベルで、飲料水を製造するOEMは積極的にやっていますね。

最近では、オリジナルラベルの天然水は企業やイベントのブランディングの一つとして考えている方が多いです。例えば会社のミーティングのときなどに、自社ロゴが入ったペットボトルの水を飲み物として使うなど。

お客さんに飲み物を出すとき、コーヒー、紅茶など何を出すのかとか、砂糖の量とかで迷ったりしないんで水はいいんですよね。

極小ロットからOEMを受けているんですが、この手のいわゆる『小規模で手間がかかる仕事』を積極的にやっていますね。大手企業との価格競争には勝てないので、大手企業ができない部分で、小さな会社ならではのウリを見つけてやっています。

私としては水という商品を、責任をもって高い品質で、安定してお届けするっていうことを大切にしていて、できることをコツコツやっていますね。

まとめ

北アルプス立山連峰の大自然が作り出す天然水はもともとが高品質ですが、製造過程でも耐久性の高いボトルを採用したホットパック充填や、エコへの取り組みなどを実施して消費者や環境を考えた商品を生産している様子がわかりました。

今でこそ水を選んだり、購入したりするのが当たり前になってきていますが、創業当時は世間の水への関心がうすく、「水なんて売れない」と言われていたような時代。宝水は時代を先読みして、天然水販売に早くから着手した企業でした。

宝水公式サイト