素材のうま味を引き出す水にこだわり大ヒット!「銀座に志かわ」高級食パン
水にこだわる高級食パン「銀座に志かわ」は1店舗目オープンからわずか2年7ヶ月で100店舗を達成。その後も全国各地に店舗をオープンする快進撃を続けています。
銀座に志かわの代表取締役社長の髙橋仁志さんに水にこだわってパン作りをする理由やアルカリイオン水を使う意味、そしておいしいパンを多くの人へ届ける取り組みについておうかがいしました。
写真提供:銀座に志かわ
なぜ水にこだわった食パン作りを始めたのか
- 水と暮らす編集部
-
髙橋さんのご経歴と水にこだわる 高級食パン「銀座に志かわ」を始めるに至るまでの経緯をうかがわせてください。
- 髙橋さん
-
私は三重県の割烹料亭の息子として育ったのですが、最初は飲食業界に行かず、三重銀行に就職して、3年ほど勤めました。しかしやはり食の業界で挑戦しようと、外食産業の経営に携わった後、ベーカリー「麻布十番モンタボー」の社長を務めました。
その後、2008年に株式会社コイサンズを創業。100種類以上のパンを焼きたてで提供する「513BAKERY」11店舗の他、外食店舗を経営しています。
8年前から、浄水器やアルカリイオン整水機の製造を手がけるOSGグループの代表取締役会長・CEOの湯川剛さんとご縁がありまして。
素材のうま味成分を引き出してくれるとして話題のアルカリイオン水の使用や、浄水器について話を聞くうちに興味をもちました。そして食パン製造での使用を勧められました。しかし、このアルカリイオン水でのパン作りは非常に難しいものでした。
水も重要な素材のひとつ。アルカリイオン水にこだわって試行錯誤
- 水と暮らす編集部
-
アルカリイオン水は、食パンの製造には不向きといわれているようですが、そんな水でパン作りをどうやって可能にしたのでしょうか。
- 髙橋さん
-
湯川会長に勧められた際、試しにアルカリイオン水を仕込み水に使ってみたのですが、やはりパン作りにはかなり難しい水でした。パンがまとまらず、すぐに崩れてしまうのです。パン業界では「ケービング」といいますが、きれいな正方形に焼き上がらずにぐしゃっとつぶれてしまう。パンの教科書では「弱酸性の水を使うのがパン作りには適している」とあるのに、その真逆の水を使うわけですから。
しかし、アルカリイオン水は、日本料理において「だし」をとるのには非常に向いています。高級料亭や高級旅館、ホテルで使われているこの水でパンを作れたらおもしろいのでは、と挑戦を続けました。
- 水と暮らす編集部
-
アルカリイオン水を使うことで、食パンにどういうおいしさが生まれたのでしょうか。
- 髙橋さん
-
耳までしっとりとやわらかく、口どけもよく食べられる食パンができました。パンをかむと、ご飯をかんだときのようなほんのりとした甘さが口の中に広がります。きんぴらごぼうやイカの塩辛といった和の惣菜とも合います。
銀座に志かわの食パンは、水以外も、最高級のカナダ産小麦粉、北海道産の生クリーム、バター、はちみつなど、すべて最高級の原材料にこだわっています。アルカリイオン水を使うことでこれらの最高の食材のうま味を存分に引き出せていると思いますね。
まったく同じ分量とレシピでパンを作っても、アルカリイオン水を使ったパンとの違いははっきり出ますから。
名水を使っている食パンは他店でも多く出していますが、あまり根拠がなく、単に「名水」のイメージで販売しているところもあるかと思います。
- 水と暮らす編集部
-
独自のアルカリイオン整水器を使っているのでしょうか。
- 髙橋さん
-
OSGが扱う一般的なアルカリイオン整水器にオリジナルの変更を加えていただいています。通常の天然水よりもpH値を高めたアルカリイオン水です。
- 水と暮らす編集部
-
毎日細かくデータを取って、季節や気温、天候によって材料の比率や温度を変えているとのことですが。
- 髙橋さん
-
パン作りは職人の世界といわれていますが、安定した食パン作りのために、職人の経験を数値化して管理していくことも必要です。
数値で測れる室内の湿気や温度によって、水の量や温度、ミキシングやオーブンの温度や時間を変更しています。オーブンもオリジナルで最高級のオーブンを使っています。
店舗展開を短期間でおこなっている銀座に志かわでは、全国どこでも同じおいしさを提供できることが大事です。
「いつ、誰が、どこで」作っても同じ味の食パンに仕上げるには2年間ほどの試行錯誤期間が必要でした。1種類の食パンだけにこだわったことで、可能にできたのだと思います。
おうち時間も追い風に。手土産や贈答品としても人気!大ブームの秘訣は?
- 水と暮らす編集部
-
それにしても、開業わずか2年7ヶ月で100店舗というスピードでたくさん展開されていることに驚きます。
- 髙橋さん
-
コロナ禍においては「ステイホーム」「おうち時間の充実」を重視するため「食パンはプチぜいたくなもの」と購入していただける方も多くなりましたね。ありがたいことに、多彩な料理に組み合わせてアレンジして食べていただく工夫がSNSで多数シェアされたことでも浸透しました。また、購入においてはWEB予約システムもあり、店舗での滞在時間も短くて済むために安心して利用していただいています。
- 水と暮らす編集部
-
銀座店だけでも1日に900〜1,000本を売り上げるとのことですね。
- 髙橋さん
-
おかげさまで創業以来毎日「完売御礼」で売り切れています。1年間で500媒体以上のメディアにも取材していただいていますし。
- 水と暮らす編集部
-
完売を目指し、売り切るのはサスティナブルでフードロスの観点からも理想的ですね! 今後の目標も教えていただけますか?
- 髙橋さん
-
ベーカリー業界では高級食パンは一過性のブームではと懸念する向きもあったのですが、2013年からずっと続いています。ひとつのジャンルとして定着したと感じています。
今後も、高級食パンのトップブランドとして、全国のみなさんに手作りで焼きたて、水にこだわった銀座に志かわの食パンのおいしさを伝えていきたいです。2021年4月現在で35の都道府県に店舗がありますが、47すべての都道府県で買っていただけるようにしたいですね。
また、銀座の高級料亭のおもたせのように、手土産や贈答品としても喜んでいただけることを目指しています。そのため、紙袋や風呂敷などにもこだわっています。
- 水と暮らす編集部
-
日本の文化との調和がおもしろいですね。
- 髙橋さん
-
2020年5月より全店舗にて枚数限定ですが無料で千社札を配っております。そのような粋な江戸文化を現代に継承し、広めていきたいとも願っていますね。
さらに、2021年4月23日からは「抹茶みつ」の販売も全国の店舗で開始しました。こちらも、和にこだわったのでバターでもないジャムでもない、みつです。絹のようにしっとりして甘みのあるパンにとてもよく合います。
- 水と暮らす編集部
-
今すぐ食べてみたくなってきました…。ありがとうございました!
この記事のまとめ
-
- 日本酒や豆腐、そばのように仕込み水が大事なパン製造の水に注目
- pH値を高めたアルカリイオン水を使い、素材のうま味を存分に引き出す
- 気温や湿度で水の硬度やpH値も変え、全国どこでもおいしいパンを製造
「銀座に志かわ」ホームページ