安全な飲み水と男女別トイレを普及させていきたいー特定非営利活動法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン
子どもの貧困を救うべく、日本国内・海外で自立支援活動を行う認定NPO法人「特定非営利活動法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン」。その活動のひとつが、フィリピンやインド、ケニアなどの開発途上国で実施している水支援です。
同団体では、井戸や手動式ポンプの設置、感染症予防の教育など、さまざまな支援に取り組んでいます。世界の水・衛生事情や現在の活動について同団体の代表中島早苗さんにお話を伺いました。
ケニアやエクアドルで水支援に取り組んでいる
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ーーまず、水支援をはじめた経緯を教えてください。
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当団体が水支援をはじめたのは20年ほど前です。現在、ケニアやエクアドル、ハイチといった開発途上国にて支援活動を行っています。これらの国や地域は、水道や電気などのインフラが整っていないことがほとんどです。
そのため、現地では川や池から汲んだ水を生活用水として使用しています。清潔な水を確保する手段が身近にないため、飲用に適さない水源に頼るしかないんです。こうした状況を改善したいと思い、水支援をはじめました。
危険だと知らず、汚染された水を飲んでしまう人もいる
ーー具体的にはどういった支援活動を行っているんですか?
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衛生設備に関する教育や男女別トイレ・手洗い場の設置、水道の整備など多岐にわたります。2017年には、ケニアのエシノニ村に井戸・ポンプを設置しました。
農村地域のケニアエシノニ村では、多くの家庭が農業で生計を立てています。生活を維持するため、村人は15kmも離れた河川まで歩いて水を確保しなければなりません。
苦労してようやく得た水は、動物のふん尿や雑菌などで汚染されています。村人のなかには、危険だと知らず煮沸消毒せずにそのまま飲んでしまう人もいる。汚れた水によってコレラや腸チフス、A型肝炎など感染症を引き起こし、多くの幼い子どもが命を落としています。
インフラ整備だけでなく、衛生管理や病気予防の知識を普及させていくことも解決すべき重要な課題です。当団体では、人々が安全できれいな水を確保できるよう、灌漑用水路の設置にも取り組んでいます。
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ーー水支援を始める前と後で、どういった変化がありましたか?
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安全な水にアクセスできるようになったことで、子どもの水汲み労働時間が大幅に削減されました。マサイ民族の方が、「水汲みの時間が減った」「前よりも体調が良くなった」と笑顔で話してくれたのが今でも印象に残っています。
それから、子どもの学校出席率・学力も向上しました。水汲みは子どもや女性が行うことが多いんです。1日数時間かけていた水汲み労働が減ることで、"学校へ通う"という普通の生活を送れるようになります。そして何より、学力が向上することで生活の基盤を築きやすくなりますよね。
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ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。
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今後は、井戸・ポンプやトイレの設置はもちろん、メンテナンス研修や水や保健衛生に関する啓発活動の実施にもより一層力を入れていきたいです。
地盤や水質調査、掘削作業などコストも時間もかかりますが、井戸やトイレが近くにあればいつでも安全な水を確保し、健康的な生活を営めるようになります。
そして、井戸のパイプ交換や部品の付け替えなどのメンテナンスを現地の人々自身ができるよう研修を行うことにも井戸の設置時に並行して行っていきたいです。
そうすることで、私たちNGOがいなくとも持続的に現地の人々でより良い村づくりができます。現地スタッフや政府機関と協力し、これからも支援活動を続けられるよう努めていきたいと思います。
特定非営利活動法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン