豊かな自然を取り戻したい。河川ごみゼロを目指す荒川クリーンエイド・フォーラムの挑戦
世界で深刻な社会問題となっている「海洋ごみ問題」。世界中の海には約1億5千万トンを超えるプラスチックごみが存在するといわれ、その多くが街なかから、河川を伝って海へと流れ出るという。
こうした状況を食い止めようと河川ごみゼロを目指し、清掃活動に取り組んでいる団体がある。「荒川クリーンエイド・フォーラム」だ。
今回は、荒川クリーンエイド・フォーラム オフィスマネージャの今村和志さんに、清掃活動をはじめったきっかけについて話を伺った。
荒川の清掃活動「クリーンエイド」をはじめたきっかけ
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ーーまず、荒川の清掃活動「クリーンエイド」をはじめたきっかけを教えてください。
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荒川放水路が通水70周年を迎えた1994年に、国や自治体、市民団体で荒川を清掃しようとはじめたのがきっかけです。その後、1997年に荒川クリーンエイド・フォーラムが発足。
現在は、荒川を中心に埼玉県秩父の上流や葛西海浜公園など年間130箇所以上で清掃活動を実施しています。
ちなみに、「クリーンエイド」というのはクリーン(清掃)とエイド(助ける)を組み合わせた造語です。クリーンエイドの活動を通じて、ひとりでも多くの人に環境問題に関心を持ってもらえたら嬉しいですね。
楽しみながら環境美化に貢献できる「調べるごみ拾い」
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荒川クリーンエイド・フォーラムでは、『ごみと向き合い 自然とともに生きる社会』というミッションを掲げています。ただ単にごみ拾いするのではなく、少しでも環境問題に関心を持ってもらえるよう「調べるごみ拾い」を実施しているんです。
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ーー「調べるごみ拾い」は、一般的なごみ拾いとは違うんですか?
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はい。調べるごみ拾いというのは、International Coastal CleanupといってアメリカのNGO団体の呼びかけにより世界中で行われている清掃活動の一環です(国内では(一社)JEANがナショナルコーディネータを務める)。各清掃会場に落ちているごみの種類や数をICCデータカードに記入しながら、ごみ拾いを行うというもの。
参加者は6人程度のグループに別れ、制限時間内に集めたごみの量をチームで競い合ってもらいます。イベント要素を取り入れることで、子どもから大人まで楽しみながらごみ拾いができる。そして何より、ごみ拾いをしながら川の水質や生態系(生物多様性)といった問題を意識するきっかけになるんです。
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ーー荒川にはどういったごみが多いのでしょうか。
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多いのは、プラスチックの容器包装類。各国と比較して日本は、1人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量が世界で2番目に多い国なんです(国連環境計画Single-use Plastics: A roadmap for Sustainability)。荒川河川敷で清掃活動をしていると、20年以上前のプラスチックごみが出てくることもありますから。
あと、1990年代までは車や大量の古タイヤが捨てられていたこともあったようです。荒川河川敷が進入禁止になったことで、車や古タイヤの不法投棄はほとんどなくなりましたね。
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ーー「調べるごみ拾い」には、どんな方々が参加しているんですか?
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小学生からお年寄りまで、年齢問わず幅広い世代の方が参加くださっています。最近は、早稲田や東洋の大学生を集めた「大学対校!ゴミ拾い甲子園」を開催していることもあり、10〜20代の参加者も増えていますね。
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ーーこれまでの活動で印象に残っていることはありますか?
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荒川河口域は、環境省準絶滅危惧種のトビハゼが生息するエリア。トビハゼが巣作りをする泥干潟に大量のレジ袋が覆いかぶさっていることもよくあります。川に蓄積された大量のごみにより、トビハゼの生息/繁殖場が奪われてしまうかもしれない。豊かな自然と生態系を守るためにも、一人ひとりが環境問題にもっと目を向けるべきだと改めて感じました。「トビハゼの泥干潟復活プロジェクト」を立ち上げ、トビハゼの生息地である泥干潟の保全にも取り組んでいます。
散歩感覚で気軽に参加してほしい
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「ボランティア活動=意識の高い」というイメージを持たれる方が多いと思います。決してそんなことはないので安心してください。気分転換くらいの感覚で、気軽に参加してもらえたら嬉しいですね。
2020年7月からスタートしたレジ袋有料化により、マイボトルを持ち歩いたり、社内でペットボトル使用を禁止したり、環境問題を意識する人が以前よりも増えたように感じます。プラスチックの恩恵を知り、ワイズユース(賢明な利用)を考えることも大切です。また、過度な使い捨て文化から1日も早く脱却できるよう、プラスチックごみ削減に向けてより一層、力を入れていきたいですね。
荒川クリーンエイド・フォーラム