• トップ
  • >
  • 水を味わう
  • >
  • 玉簾の瀧や湧き水、水に恵まれた箱根湯本温泉「天成園」庭園の魅力とは

玉簾の瀧や湧き水、水に恵まれた箱根湯本温泉「天成園」庭園の魅力とは

2022.07.27

パワースポットとしても知られ、与謝野晶子や荻原井泉水ら文人や多くの旅人に愛された「玉簾(たまだれ)の瀧」や「飛烟(ひえん)の瀧」がある箱根湯本温泉「天成園(てんせいえん)」。

古くから「延命水」としても尊ばれてきたという湧き水もあり、美肌の湯としても名高い温泉にも恵まれる温泉宿です。毎月、水の恩恵に感謝する「名水祭」も行っているとか。

それぞれの魅力や歴史、言い伝えなど、箱根湯本温泉「天成園」の高野 祐司(たかの ゆうじ)さんに詳しくお話をうかがいました。

水と暮らす編集部

天成園ができるまでの歴史を教えてください。

高野さん

もともとは、江戸時代の「老中(ろうじゅう)」職であった、小田原藩主稲葉家の別邸があった場所です。稲葉家は、徳川3代将軍家光の乳母(うば)で有名な「春日局(かすがのつぼね)」の嫡男である稲葉正勝が小田原城主になって以来、天成園のこの地は稲葉家代々によって守られていたようです。

水と暮らす編集部

そうだったのですね! 別邸がどのようにして温泉になったのでしょうか。

高野さん

明治20年代半ばに、当時読売新聞社主であった子安 峻(こやす たかし)さんによって「滝の前遊園」として整備され、あわせて湯本温泉から須雲川に沿って結ぶ「滝通り」も開かれました。浴客の憩いの場として人気を博していたようですね。やがて大正時代になるとこの滝通り周辺には政財界人の別荘が軒を連ね、よりにぎやかになったようです。

水と暮らす編集部

いつ天成園ができたのですか?

花房さん

昭和20年の8月に旅館として建てられました。「天の成したる園(にわ)」と、俳人荻原井泉水さんによって命名され、天成園となりました。

荻原井泉水の句碑
荻原井泉水の句碑。(写真提供:箱根湯本温泉天成園)

「玉簾の瀧」「玉簾の湧き水」「飛烟の瀧」のある豊かな庭園

水と暮らす編集部

天成園は温泉や宿も魅力的ですが、庭園に神社と滝、湧き水がある観光スポットとしても知られているのですよね?

高野さん

庭園に神社と滝があり、日中は庭園を一般に開放しておりますので、この滝だけを見ることも可能です。観光がてら見に訪れる方もいらっしゃいます。

水と暮らす編集部

それぞれの滝について詳しく教えてください。

高野さん

玉簾の瀧は高さ8メートル、幅約11 メートルの滝です。流れ落ちる流水が「たますだれ」のように細かく美しいことから、この名で呼ばれるようになったそうです。水音の美しさでも知られており、しめ縄が飾られているのも特徴です。

湯本は箱根山の麓にありますが、この箱根山は過去大きな爆発が3回ありました。富士山の百倍ほどの大きな火山爆発だといわれておりますが、この爆発のときの火山噴出物が、玉簾の瀧の表面に見える岩肌です。爆発による溶岩が山を下り、流れ出てきて冷えて固まったものといわれております。

この岩肌に触れる落水のしぶきが大きくて、近くにいると涼しく感じられる清涼スポットとしても好まれています

水と暮らす編集部

歌人、与謝野晶子にも愛され、昭和天皇も訪れたこともあり、パワースポットとしても愛されているようですね。

与謝野晶子の歌
与謝野晶子の歌。(写真提供:箱根湯本温泉天成園)
玉簾の瀧
。(写真提供:箱根湯本温泉天成園)
高野さん

もうひとつの滝は、飛烟(ひえん)の瀧といい、高さ約20メートル、幅約10メートルの規模があります。名の烟は「けむり」の意味で、その名のとおり、水しぶきが煙のように立ちこめています。玉簾の瀧と比べて力強さが感じられますね。

飛烟の瀧
飛烟の瀧。(写真提供:箱根湯本温泉天成園)
水と暮らす編集部

こちらには湧き水もあるそうですね。

高野さん

玉簾の湧き水は、古くから延命水として尊ばれ、小田原から箱根峠を越えて三島へ続く箱根路を行く旅人の喉を潤し、生気をよみがえらせたとも伝えられています。

水と暮らす編集部

持ち帰ることもできるそうですが、水にはどんな特徴があるのでしょうか。

高野さん

散策の折に水筒やペットボトルに入れて持ち帰って飲む方もいらっしゃいますね。

溶岩の層にこされてじっくりと育てられた水のおいしさがあり、口に含むとやわらかくまあるい感じがするお水です。体にやさしい弱アルカリ性を保ち、バランス良くミネラル成分を含んでいます。

玉簾の湧き水
玉簾の湧き水。(写真提供:箱根湯本温泉天成園)
水と暮らす編集部

庭園の奥、2つの滝の間を登ったところには神社もあるそうですね。

高野さん

江戸時代に創建された、箱根神社・九頭龍神社の唯一の分宮である「玉簾神社」ですね。

玉簾神社は、主祭神(しゅさいじん)に箱根大神(はこねのおおかみ)を、あわせて九頭龍大神(くずりゅうのおおかみ)・水波能売神(みずはのめのかみ)・稲荷大神(いなりのおおかみ)・恵比寿神(えびすのかみ)の神々をおまつりしており、家内安全、商売繁盛、開運出世の社として信仰を集めています。

当神社は、江戸時代の小田原藩主・稲葉氏の邸内社として創建されたものと伝えられています。特に、第二代小田原藩主である稲葉美濃守正則は、江戸幕府四代将軍・家綱の信任が厚く、幕政の最高中枢である老中筆頭に昇進し、寛文期には箱根神社の造営や箱根用水の開発を手掛けた人物として知られています。

水の守り神とも、縁結びの神社としても知られていますが、お参りし、ハート形の絵馬に記入していただくこともできます。御朱印の販売もしております。

水と暮らす編集部

名水祭」というお祭りがあるそうですが。

高野さん

例祭は毎年8月21日に斎行されますが、名水祭は毎月21日に行われます。箱根神社の神官が執り行い、水への感謝と共に「延命水」と呼ばれる滝の水を飲むことで、健康長寿や開運、商売繁盛を祈願しているものです。宿泊客の方や訪れた方が見ていただくことも可能ですよ。

名水祭
名水祭。(写真提供:箱根湯本温泉天成園)

庭園散策や温泉で癒やしのひとときを

水と暮らす編集部

滝や神社を散策するのはとても楽しそうですね。ほかに、庭園散策の楽しみ方を教えてください。

名水祭
たまだれ庵。(写真提供:箱根湯本温泉天成園)
高野さん

庭園内にある「たまだれ庵」(現在は土・日・祝日のみ営業)で休憩もできます。湧き水を使用した玉簾コーヒーがおすすめです。また、無料で利用できる足湯「天の足湯」に入ってまったりしていただくのも良いですよ。

泊まり客の方はチェックインをして温泉に入った後、浴衣を着て夕涼みとして庭園で過ごされてもいいですし、気候の良いときは朝の散策もおすすめです。

ちなみに、天成園は水辺にいるアヒルも有名です。餌も販売していますので、ふれあいを楽しんでいただけます。

玉簾コーヒー
湧き水を使用した「玉簾コーヒー」(400円)。ホットとアイスから選べる。(写真提供:箱根湯本温泉天成園)
愛らしいアヒルたちに会える
愛らしいアヒルたちに会える。(写真提供:箱根湯本温泉天成園)
水と暮らす編集部

温泉も良さそうですよね!

高野さん

温泉が朝10時から翌朝9時まで、23時間いつでも利用可能となっております。宿泊だけではなく日帰りの立ち寄り湯としてもご好評をいただいています。

まろやかな弱アルカリ性の温泉で、やわらかな、肌を優しく包み込んでくれるように感じるお湯です。肌がすべすべになる「美肌うるおいの湯」としても親しんでいただいていますよ。

天空大露天風呂
天空大露天風呂。(写真提供:箱根湯本温泉天成園)
水と暮らす編集部

どのような宿泊客が多いですか?

高野さん

カップルからご家族、ご年配の方まで、すべての年齢層の方に来ていただいておりますね。リピーターの方も多く、古くからご愛用いただいている方もいらっしゃいますね。

水と暮らす編集部

おすすめのお部屋はありますか?

高野さん

宿泊では露天風呂付きの客室もご用意しております。今回ご紹介させていただいた庭園を望めるお部屋もありますし、箱根の自然豊かな風景を見ながら非日常のすばらしい時を過ごしていただけたら幸いです。

露天風呂付客室
露天風呂付客室。(写真提供:箱根湯本温泉天成園)
水と暮らす編集部

すばらしいですね! 高野さん、ありがとうございました!

天成園公式サイト

※行政機関の指導による営業時間短縮などの最新情報は、天成園公式HPをご確認ください。