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完全予約制のお菓子「みずのいろ」とは? つちやが語る水とお菓子の関係性

2021.07.12

つちやは1755年創業の老舗菓子店です。代表的な商品は「柿羊羹(ようかん)」で、シンプルな製法で自然の味を最大限引き出した味づくりが特徴となっています。そんなつちやから新たに誕生したお菓子が「みずのいろ」です。伝統的な和菓子「干錦玉(ほしきんぎょく)」を薄くしたお菓子で、色鮮やかな見た目が話題となっています。

今回は「みずのいろ」の開発秘話や、水が与えるお菓子への影響について、株式会社槌谷広報担当の清水陽子(しみずようこ)さんにお尋ねしました。

みずのいろ
「みずのいろ」。(出典:つちや公式Facebook)
清水さん

美濃国大垣(岐阜県)は「水の都」と呼ばれています。豊富な地下水を有する町で育ち、水とともにお菓子づくりを続けてきた中で、さまざまな色に変わる水をお菓子に映してみたいと考えるようになりました。そんな思いを干錦玉(ほしきんぎょく)で表現したのが「みずのいろ」です。

水と暮らす編集部

干錦玉……? 恥ずかしながら初耳なんですが、どのようなお菓子なのでしょうか。

清水さん

干錦玉とは、砂糖と寒天を煮詰めて冷やし固めた伝統的な干菓子のことです。「みずのいろ」は、寒天とお砂糖を煮詰めたものを極力薄く、乾燥させて水滴のように仕上げました。外側はパリッと、中は透明感のある柔らかなゼリーのような寒天です。

水と暮らす編集部

「みずのいろ」の「さまざまな色に変わる水」は、どのような意味があるのでしょうか。

清水さん

水は無色透明なんですが、季節によって水面は様々な色に見えますよね。「みずのいろ」は季節とともに移ろいでいく水の色を表現しています。

水と暮らす編集部

ということは、それぞれの色には意味があるということなんですね。

清水さん

そのとおりです。例えば、赤は「湖面に映った紅葉」。オレンジは「山装う木々の色」をイメージしています。

水と暮らす編集部

なるほど。水面は季節の情景を映し出してくれますからね。それをお菓子で表現というのはおもしろいアイディアです。

清水さん

それぞれにハイビスカス&ローズヒップ、オレンジピール、カモミール、スペアミント、バタフライピーといったハーブを使用しており、目にも口にも楽しいお菓子なんですよ。

「みずのいろ」にハーブを採用した理由

バタフライピー
バタフライピー。
水と暮らす編集部

なぜ「みずのいろ」にはハーブを採用することになったのでしょうか。

清水さん

今回ハーブを使用したのはバタフライピーと出会ったからなんです。「みずのいろ」を作るにあたり一番悩んだのが、どのように「みずのいろ(青色)」を出すかということでした。研究しているうちに、自然のもの(天然)で、青い色がバタフライピーで出せるということを知ったんです。

※バタフライピー:日本ではチョウマメと呼ばれる、マメ科の植物。青色を発色する色素が含まれており、タイではお菓子の色素などによく使われる。

水と暮らす編集部

それで他の色に対しても、食用色素ではなく自然のハーブを使ったわけですね。鮮やかですけど、自然な色合いになっていることにも納得です。ちなみに「みずのいろ」は予約でしか購入できないとのことですが、これはどういった事情があるのでしょうか。

清水さん

「みずのいろ」は職人が丹精込めて一枚ずつ手作りしていて、とても手間のかかるお菓子なので、完全予約制という形式をとっております。また、とても繊細で壊れやすいため、店頭受け取りのみとなっております。

水と暮らす編集部

配送もないんですね。まさに現地でしか食べられない、貴重なお菓子……!

清水さん

岐阜県にお越しいただくことがありましたら、ぜひ「みずのいろ」を予約していただき、旅の楽しみにしていただければと思います。

まろやかな軟水がお菓子づくりに与える影響

水まんじゅう
水まんじゅう。(写真提供:つちや公式Facebookより)
水と暮らす編集部

つちやさんで使用されている西美濃の水は、どのような水でしょうか。

清水さん

口当たりがまろやかで、おいしい軟水ですね。

水と暮らす編集部

水がお菓子づくりに与える影響は大きいと思いますか。

清水さん

水は素材のもつ良さを最大限に引き出してくれるものだと考えています。水がお菓子づくりに与える影響は大きいでしょうね。

水と暮らす編集部

特に水の影響が大きいと感じるのは、どういったものでしょうか。

清水さん

たとえば、軟水で炊き上げるあんこは、小豆本来のもつ香りやうま味がより感じられます。他にも、もち米・うるち米などのお米も、軟水を使うとお米本来のうま味がより強くなりますね。

水と暮らす編集部

つちやさんがお菓子作りに使う水を、地元の水にこだわっているのはどのような要因があるのでしょうか。

清水さん

私どもは岐阜県の会社なので、西美濃の水でつくったお菓子こそが、お客さまにとって、より良いものができるという考えをもっています。

水と暮らす編集部

なるほど、自然と同じですね。

清水さん

そうです。農作物も、その風土や環境に適したものがおいしいでしょう。それと同じだと思っています。

水と暮らす編集部

水以外の食材も、地元のものを使うようにこだわっていることはありますか。

清水さん

そうですね。例えば「柿羊羹」に使用する柿は、自社農園で栽培したものです。その他の食材もできるだけ、地産地消にこだわっていますよ。

自社農園で栽培している柿
自社農園で栽培している柿(写真提供:つちや公式Facebookより)
水と暮らす編集部

柿羊羹の柿のために自社農園をもっているとは……。驚きました!

清水さん

お客さまにより良いものをお届けしたいと思っているからこそ、こだわっています。これからも、地場の良いものを発信していければと思います。

水と暮らす編集部

ぜひとも、これからも歴史をつないでいってくださいね。この度は貴重なお話をありがとうございました。

御菓子つちや(株式会社 槌谷)
岐阜県大垣市俵町39番地

つちや

<公式HPはこちら>