美しい海を未来に残したい。ダイビング中にごみを拾うクリーンアップ活動「1 Dive 1 Cleanup プロジェクト」
ダイビング中に見つけたごみを拾い、海中ごみを減らす「1 Dive 1 Cleanup プロジェクト」。ダイビング総合誌月刊『マリンダイビング』の出版やイベント、マリンフォトライブラリー、コンサルタントなどを行う株式会社水中造形センターが2020年4月から取り組んでいるプロジェクトです。
海で起きている問題と活動内容について、株式会社水中造形センターの担当者 鴫谷隆さんにお話を伺いました。
目次
ダイバーだからできる「1 Dive 1 Cleanup プロジェクト」
ーー「1 Dive 1 Cleanup プロジェクト」をはじめたきっかけを教えてください。
現在、全世界で年間800万トン以上のプラスチックごみが海に流れ込んでいるといわれています。生き物が餌と間違えて食べてしまったり、体に巻きついて傷ついてしまうケースも多く、最近ではそれらのプラスチックごみが小さく砕けたマイクロプラスチックも問題となっています。
ダイバーとして海に潜っていると、海の美しさだけでなく、海中を漂うごみを目にすることも増え、海の環境変化を実感するようになりました。そして、未来の子どもたちにきれいな海を残すために「ダイバーとしてできることは何だろう?」と考えるようになりました。
一般の方には見えない水面下で、漂っていたり沈んでいたりするごみを拾うこと。そしてその状況を広く伝えることこそが、ダイバーとしての使命なのではないかと。それが「1 Dive 1 Cleanup プロジェクト」です。ダイバーひとりひとりがごみを拾える量はとてもわずかかもしれませんが、日本中のダイバーがダイビング中に見かけたごみを拾うことが当たり前になり、それが周囲に発信されるようになれば、海の環境を守る大きなムーブメントになると信じています。
現在、日本国内・海外(グアム、タイ、インドネシア)を含め250店舗以上が「1 Dive 1 Cleanup プロジェクト」の協力ショップに登録。2020年4月の活動開始からこれまでに、1,000名以上のダイバーがプロジェクトに参加しています。
ダイビングを楽しみながら海のごみを削減
ーー「1 Dive 1 Cleanup プロジェクト」では、具体的にどのように清掃活動を行っていますか?
ダイバーは、ダイビングを楽しみながら海底に沈むごみを回収しています。ダイバーには、「可能な範囲でゴミを集めましょう」と呼びかけています。
とはいえ、むやみやたらにごみを拾えばいいというわけではなく、ごみが生物のすみかの一部となっていたり、ごみを取り除こうとすることでかえって生物を傷つけてしまう場合もあります。生物の生息環境に配慮しながらごみ拾い活動をすることも、「1 Dive 1 Cleanup プロジェクト」のポイントです。
そして実際に活動した場所や拾ったごみの種類などを投稿していただき、海の中にどんなごみが沈んでいるのかを多くの人に知っていただけるよう、発信をしています。
ーー水中や海底にはどういったごみが多いのでしょうか。
多いのは、ビニール袋やお菓子の袋といった容器包装プラスチック。あとは、タバコの吸い殻や釣り糸なども目立ちますね。海底には、空き瓶や缶をはじめ、靴やサンダルなどがいったさまざまなごみが堆積しています。
海から引き上げたごみは泥や砂などが付着しているので、場合によっては産業廃棄物として有料で処理しなければなりません。各自治体でスムーズに回収してもらえるようにすることも、今後解決すべき課題のひとつです。最終的には、集めたごみを再利用したアップサイクルにも取り組んでいければと思っています。
ーーこれまでの活動で印象に残っていることはありますか?
ダイビング中、釣り糸が体に巻き付いた状態のまま泳いでいる魚を見かけたことがあります。泳いでいる魚を捕まえるわけにもいかず、ただ見ていることしかできませんでした。魚が成長すると釣り糸が深く食い込んでしまうので、ヒレが裂けたり体を締め付けられたりして最悪の場合は死に至る危険もある。何気なく海に捨てたごみによって尊い命が奪われるのかと思うと、胸が痛くなりました。
「1 Dive 1 Cleanup プロジェクト」が海の環境問題を考えるきっかけになれば
ーーそれでは、最後に展望を教えてください。
2020年に「1 Dive 1 Cleanup プロジェクト」をスタートしてから1年経ちましたが、まだまだごみが沈んでいるところはたくさんあります。一旦はきれいになっても、潮の流れや風によって新たなごみが運ばれてくることも。
それでも私たちダイバーにできることを少しずつやっていき、ひとりでも多くのダイバーに「1 Dive 1 Cleanup プロジェクト」に参加していただき、海の中の状況をたくさんの方に知ってもらいたいと思っています。活動の様子はSNSで投稿しているので、海の現状について知るきっかけになればうれしいです。
そして、ダイビング中にごみを見かけたら必ず拾うことが、ダイバーにとって当たり前の習慣になることを願っています。
株式会社水中造形センター